飯豊山〜大日岳


- GPS
- 54:47
- 距離
- 34.5km
- 登り
- 2,935m
- 下り
- 2,935m
コースタイム
- 山行
- 8:35
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 9:15
- 山行
- 9:40
- 休憩
- 1:19
- 合計
- 10:59
天候 | 晴れ、晴れのち曇り、雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
良好。 |
その他周辺情報 | 下山後は白川荘の日帰り入浴(450円)を利用。 |
写真
感想
5時頃、大日杉登山口へ到着。土曜日で、天気も翌日まではよさそうなので、駐車場はそこそこ埋まっていた。登山口にはお手洗いも広場もあり、準備するには好適だ。早朝の東北の山ということで、熊鈴も着けて登山開始。
かつては、このあたりに大日堂や不動堂があり、大日堂のすぐ近くに樹齢千年もの杉の巨木があったようだ。この大日杉からの登山道も、元は修験の道らしく、今もところどころに祠や石碑があって、名残りを感じる(稜線でも錆びた寛永通宝を見つけた)。
しばらく行くと、ざんげ坂につきあたる。鎖も設けられているほどの急坂だ。とは言え、こんな登り始め早々に懺悔するとは、名づけた人はよほど罪深いんだろう、なんてことを考えながら、登りきる。
その後もきつい登りは続く。トラバースも多く、崖側は要注意だ。木の根、笹の根も至るところに張り出ていて、階段みたいに有用なのもあるが、多くは、つまづいたり滑ったりしないか、慎重になる。
9月も末と言うのに、歩いていると暑いし、汗の量も半端ない。秋はまだなのかと思ってしまう。オオカメノキの赤い葉っぱとか、アキノキリンソウの花、色や形、大小さまざまなキノコなど、小さい秋を見つけながら歩いていった。
時々、ドラミングのような振動音が、地面や空気を伝わって聞こえてくることがあった。不可思議な音で少々気味わるかったが、キジが鳴らす羽音だと知って安心した。姿は全然見えなかった。
地蔵岳まで来ると、やっと涼しくなってきて、秋の彩りがそこかしこに見られるようになる。何より、本日泊まる切合小屋や翌日登る飯豊山が見えてくると、登る意欲がいよいよ高まる。
飯豊山、ぼくなんかが偉そうに言うのもおこがましいが、非常に風格のある、いい山だなぁと感じてしまう。修験の山として、昔から信仰されたのも頷ける。そして、紅葉もだいぶ進んでそうな雰囲気。登るのがますます楽しみになってきた。
地蔵岳から切合小屋まで、いくつものアップダウンはあるものの、気持ちいい稜線歩きだった。ダケカンバの木々も美しかった。
登り始めてから7時間程で切合小屋に到着。寝床を確保したら、種蒔山まで散歩した。会津盆地が見渡せ、喜多方や若松の街並みも見える。磐梯山も見えた。こうして遠くから見ると、会津富士の名の通り、端正な独立峰の姿をしている。
紅葉の色づきも非常によく、錦秋と言っても差し支えないくらいの鮮やかさである。最近は、秋の訪れが遅くなったとか、紅葉の色づきがよくないとか言われるが、今年は今年の秋を楽しみたい。
雲の多い一日だったが、夕方から快晴となり、夜中も雲一つなく、満天の星だった。何万年も前の星のきらめきを見ていると、自分の存在のちっぽけさを自覚する。そして、自分の悩みとか仕事のストレスとか家庭でのいさかいとか、どうでもよくなる。足下の花崗岩の砂粒くらい、些細なことに思えてしまう。やがて、漠然と感謝の念が浮かぶ。宇宙は、ぼくを謙虚にしてくれる。
翌朝、食事を済ませて6時に出発。早速、急な登りがあって草履塚に至る。きっと、草鞋を履いた登山者が、このあたりで履き替えて、古い草履を捨てたんだろう。
名もなきピークも越えて鞍部に至ると、姥権現だ。女人禁制をおかして登ってきた女性が石化したという言い伝えがある。その先に御秘所という、稜線唯一の岩稜帯があるので、注意して進む。さらに御前坂の急坂を登りきれば、本山小屋に着く。
一息入れて、いよいよ飯豊山登頂。これで、ぼく自身百名山55座目。山頂からは飯豊の山並みが一望できる。東北アルプスとも呼ばれるこの飯豊連峰は、広範な山塊に幾筋もの稜線が見え、どれも歩いてみたくなる。北方に見える半円形の山が朳差岳か。いつかは足を運んでみたい。今回は飯豊連峰最高峰の大日岳へ縦走を続ける。
山頂をあとにしようとした時、岩の隙間からオコジョが飛び出してきた。すぐさま岩の間に姿を隠し、再び出たり入ったり。慌ててカメラを撮り出し、撮影を試みる。まだ小柄な若いオコジョは、岩陰から出たり入ったりするのを繰り返す。写真を撮りたいぼくは、完全にもてあそばれてしまった。これが本当のイタチごっこか。写真はかろうじて撮れた。オコジョを見るのは2回目。撮影できたのは初めてだった。
気分をよくして縦走を続ける。まだ登山の行程は半ばだが、最高の山行になるのが確定的。前日から飯豊山までのきつい登りを忘れるほど、心地よい稜線歩き。草紅葉の黄金色が美しい。ナナカマドやチングルマ、ウラシマツツジの赤、ダケカンバやカエデの黄色、笹やハイマツの緑、空の青も相まって、とても色とりどりだ。春の芽吹きも夏のお花畑もいいが、秋の山が一番色彩に富んでいる。
御西小屋で一息入れ、いよいよ大日岳にアタック。小屋を過ぎると、大日岳の威容が眼前に迫る。どこか神々しささえも感じる。確かに、飯豊連峰を曼荼羅になぞらえたら、この大日岳が中心になりそうな、そんな迫力ある存在感である。
これから進む大日岳の裾の笹原を眺めていたら、登山道が人の横顔を形作っているように見えた。雨飾山にビーナスがいるなら、この大日岳にいてもおかしくない。
大日岳山頂も360度の眺望が素晴らしかった。そして、まだまだ稜線が続いている。もう6時間も歩いているのに、次に立ちはだかる西大日岳まで足を延ばしたくなるような、そんな魅力的な稜線である。名残り惜しいが踵を返した。
いつの間にか青空はなくなって、雲が一面覆ってしまった。天気はわるくなる予報だったから、無理もない。前日から2日間、好天がもってくれただけで幸運である。釣瓶落としの秋は、垂れこめた雲のおかげでいっそう暮れるのが早い。翌日が平日で、しかも天気がわるいから、登山者はわずかだった。追い越しもすれ違いもほとんどない。さすがに、秋のさびしさを感じてしまう。
切合小屋を出発してから11時間余り、暗くなる前に戻ってくることができた。すぐ、夕食のカレーだった。2日続けてのカレーだが、美味い。19時の消灯前には寝てしまった。
夜中から嵐だった。激しい風雨の音に目を覚ました。このまま小屋に停滞か、なんてことまで頭を過った。
朝食の卵かけご飯を食べ終えた頃には、いくぶんか雨も弱まり、下山開始。強い西からの風はあったが、すぐに樹林帯なので、しのげた。
あとは淡々と下っていく。濡れた木々や葉っぱも美しいが、カメラは出さずに、目で見るだけにとどめる。濡れた根っこ道がいやらしく、滑らないように歩いていく。
ざんげ坂まで戻ってきた。ざんげざんげざんげ…なるほど、懺悔を繰り返せば下山に至るということか。妙に納得しながら、鎖場を下り、ほどなくすると登山口に着いた。沢の水で靴の汚れを落とし、ふもとの白川荘(日帰り入浴450円)で汗も流して、帰途に就いた。
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