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ルートID: r1026 熟達 2泊3日 槍・穂高・乗鞍 令和最初の夏山特集~後編

【令和最初の夏山特集〜後編】槍ヶ岳北鎌尾根
やりがたけ / きたかまおね

濃い緑山行に最も適した時期 薄い緑山行に適した時期
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
日本の登山史上でも数々の栄光と悲劇の舞台となった槍ヶ岳北鎌尾根。
今でもその荒々しく連なる尾根は多くの岳人の心を惹きつけ続けています。しっかりとした経験とそれに裏付けされた技術、そして体力と気力の全てを兼ね備えた登山者におすすめしたいルートです。
※公開日:2019年07月11日
ルート長35.6km
登り標高差1726m
下り標高差1678m
行程概要: 中房温泉登山口(1462m) → 第1ベンチ → 第2ベンチ → 第3ベンチ → 富士見ベンチ → 合戦小屋(2380m) → 合戦山(合戦沢ノ頭)(2489m) → ベンチ(2642m) → 燕山荘(2712m) → 燕山荘(2712m) → 蛙岩(2684m) → 大下りの頭(2660m) → 小林喜作レリーフ(2680m) → 大天井ヒュッテ(2650m) → 貧乏沢下降点(2549m) → 北鎌沢出合 → 北鎌のコル(2470m) → 槍ヶ岳(3180m) → 槍ヶ岳山荘(3080m) → 播隆窟 → 坊主岩屋下 → 槍沢・天狗原分岐 → 槍沢・天狗原分岐 → 槍沢大曲り → 赤沢岩小屋(ババ平)(2001m) → 槍沢ロッヂ(1820m) → 二ノ俣 → 一ノ俣(1705m) → 槍見河原 → 横尾 (横尾山荘)(1620m) → 新村橋(パノラマ分岐) → 徳沢公衆トイレ → 徳本口(徳本峠分岐)(1545m) → 明神館(1530m) → 河童橋(1505m) → 無料トイレ(1510m) → 上高地バスターミナル(1504m)
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【槍・穂高連峰】【令和最初の夏山特集〜後編】槍ヶ岳北鎌尾根の詳細解説

\ おすすめポイント /
  • 日本を代表する岩稜バリエーションルート
  • 終了点が大槍頂上という爽快感
  • 日本百名山
モデルプラン
1日目
歩行時間:8時間
中房温泉〜合戦尾根〜合戦小屋〜燕岳〜大下りノ頭〜喜作レリーフ〜大天井ヒュッテ
2日目
歩行時間:12時間
大天井ヒュッテ〜最低コル〜貧乏沢〜天上沢〜北鎌沢出合〜北鎌のコル〜天狗ノ腰掛〜北鎌独標〜北鎌平〜槍ヶ岳〜槍ヶ岳山荘
3日目
歩行時間:8時間
槍ヶ岳山荘〜殺生分岐〜大曲り〜槍沢ロッジ〜横尾〜徳澤園〜明神〜上高地バスターミナル
計画書提出先 長野県警察本部もしくは安曇野警察署地域課
※登山口に登山計画書提出ポストあり。
宿泊 大天井ヒュッテ : 090-1401-7884
槍ヶ岳山荘 : 090-2641-1911
https://www.yarigatake.co.jp/
交通 JR大糸線穂高駅より南安タクシーバス(中房温泉行き:1,700円)にて中房温泉バス停へ。
※東京・大阪方面から夏山シーズンに合わせて直行バスが運行される。
駐車場 中房温泉登山口下方に無料駐車場あり。
アドバイス 悪天候時・雨天時・単独の登山は慎むこと。
登山を始めて数年の経験で挑めるルートではないので経験を十分に積んだパーティーでのぞみたい。
少しでも不安があれば信頼できる山岳ガイドに依頼することもひとつの方法だ。
登攀具・ロープ・ヘルメットは必携。用具は"万一の際に使用する"といった心構えが必要だ。
テントマットやコップなどをザックの外に付けないこと。岩に引っ掛かりバランスを崩す原因になる。
合戦尾根は技術的に難しい所はないが急登が続くので体調管理に気を付けよう。
喜作レリーフと大天井ヒュッテの間は岩場が続く事故の多い箇所なので慎重に通過しよう。
貧乏沢の下降は転倒と道迷いに注意が必要だ。
7月は貧乏沢・北鎌沢に雪が残ることがあるのでアイゼン・ピッケル必携。
北鎌沢出合で時間・体力・精神的な部分を考えて最終的な判断をすること。
北鎌沢の右俣分岐を間違えないように要注意。
(左俣は登攀不可・過去に数多くの遭難死亡事故が発生している)
北鎌尾根は全域にわたり滑落・転落・落石に細心の注意を払うこと。
北鎌尾根はルートの取り方でコースタイムや疲労度が大きく異なる。
北鎌尾根は基本的に稜線通しで進むのが一番楽で早い。巻き道は思わぬ箇所で行き詰るので注意が必要だ。
大槍への登攀は転落と落石に注意。
サブコース アプローチとして湯俣からのルートと上高地から水俣乗越を経て天上沢を下降するルートがある。
今回は小屋泊まりを前提とした貧乏沢経由のルートを紹介している。
エスケープルート 天上沢より水俣乗越を経て上高地へ下山。
北鎌尾根上から1ヶ所のみ天上沢へエスケープできる。
1
2日目となる北鎌尾根縦走の1日は長い。
出来れば早朝3時半までには大天井ヒュッテを出発したい。そのために必要な準備は前夜のうちに小屋で済ませておくこと。
2
大天井ヒュッテから20分ほどで貧乏沢のコルに到着する。
古びた道標が転がっているので尾根を乗越すように右手のハイマツ帯へと分け入っていく。
3
貧乏沢の上部はヘッドランプを点けた状態での下りとなる。
踏み跡は比較的明瞭だが樹林帯の急な下りが続くので足元に十分注意したい。
4
下降中に何度かガレ場を通過する。
落石を引き起こさないよう留意したい。なお中間部からは主に左岸の沢と樹林帯のコンタクトラインを下ることになる。
5
左岸の樹林帯を下ると一枚岩の下りとなる。
ロープが設置されているが非常に滑りやすく事故も多い箇所なので注意しよう。
6
やがてガレの押し出しを下っていくと天上沢に出合う。
しばらくは右岸の樹林帯と河原を行き来しながら北鎌沢出合を目指す。
7
しばらく歩くとと天上沢は完全な伏流となる。
適当に歩きやすい箇所を見付けて上流へと進もう。
8
北鎌尾根への取付き点となる北鎌沢出合に到着する。
ケルンが積まれていることが多いが増水後は流されていることもある。地図でしっかり現在地点を確認しよう。
なお午前7時までにここに到着できていないと明るいうちに槍ヶ岳まで抜けることは難しいだろう。
9
わずかに登れば北鎌沢左俣と右俣の合流点となる。
北鎌尾根へは右俣をたどり北鎌のコルを目指す。左俣は「死への道」と呼ばれており最上部で行き詰まり遭難する登山者が後を絶たない。
左俣の方が水量が多く大きな沢身なので引きこまれないよう要注意だ。
10
北鎌沢右俣を北鎌のコルへと詰め上げる。
7月-8月上旬頃であれば水量も豊富で補給にも事欠かないだろう。
11
中間部には3級程度の岩登りを含む。
冬用のフィックスロープが残置されているが信用できる物ではないので使用しないこと。
12
北鎌沢右俣は基本的に分岐は全て右をたどれば問題ないが最後の分岐だけは左へ進むこと。
13
沢身を分ける岩尾根が見えてくれば北鎌のコルは近い。
逆にこの尾根が見えなければ正しいルートをたどっていないことになる。
14
北鎌沢を登り詰めると北鎌のコルに到着する。テント2張分のスペースがある鞍部だ。ここには遅くても午前9時半までに到着したい。
それ以降の場合は撤退を含めて行動を見直した方がよい。
15
北鎌のコルからは明瞭な踏み跡に導かれて天狗の腰掛へと進む。
正面にはP10(独標)が威圧的にそびえる。
16
北鎌のコルの次のコルにも北鎌沢から上がることが可能。
どちらに進んでも技術的・時間的に大差はない。
17
天狗の腰掛へは細かなアップダウンを経て千丈沢側のやや脆い岩場を左上する。難しくはないが滑落に注意したい。
固定ロープあり。
18
岩場を左上すると稜線上の急登となる。
岩・根・枝など使えるものは全て使って登っていく。
19
登り詰めると天狗の腰掛に到着する。
ここは2組ほどのビバーグが可能な広さがあり展望にも優れる休憩適地だ。
なお天狗の腰掛はP8ともP9とも言われている。そもそも細かなピークが多く判別が付かないのが実情だ。
20
天狗の腰掛を境に様相は一変する。
ここまでは草付きの多い縦走路。ここから上部は岩稜をたどるようになる。
21
細かなアップダウンを繰り返しながら独標のコルへ下っていく。
この岩場は右手から巻き気味に進めば容易にクライムダウンできる。
22
稜線上を進めば独標を正面に望むコルを通過する。
この場所は広く整地せずにビバークできる。
23
コルから小ピークを越えて独標の基部に向かおう。
24
独標基部のトラバース開始地点が核心部だ。
固定ロープが設置されているが年によって設置されているロープは異なることがある。
どちらにしても死亡事故の多い箇所なので細心の注意を払って行動しよう。少しでも怖いと思ったらスリングの架け替えを行うこと。
25
高度感のあるザレ場のトラバースが続く。
滑落に十分注意のこと。
26
ザレ場からバンド状の岩場をたどると「コの字」と呼ばれる箇所を通過する。
一段下に安定したスタンスがあるので潜らなくても問題なく通過できる。
膝を付いて潜ると荷物が岩に引っ掛かり危険極まりない。
27
更にバンド状の岩場を進む。
千丈沢側は切れ落ちていて高度感満点のところだ。
28
バンド状の岩場はスタンス・ホールド共に豊富だ。
高度感があり緊張するところだが思い切って進もう。
29
バンドを進むと左手に顕著なチムニーがあるのでこれを登る。
逆層気味の岩場でホールドがなかなか決まらない。不安に感じればロープを使用したいところだ。
30
チムニーを登り切ると安定したテラスに到着する。
ここからスラブ状の岩場を直登すれば独標の山頂へと導かれる。
31
踏み跡に導かれてわずかに進むと左手からガリーを合わせるのでこれを登り稜上へと戻る。
踏み跡はさらに続いているがここで稜線へ戻らないと大幅な時間ロスと遠回りを強いられる。
32
ザレ場から脆い岩場を登ると稜線へと飛び出す。
ここは独標とP11の鞍部だ。
33
鞍部からわずかに登り返せばP11に到着する。
正面に大槍と小槍・北鎌尾根の上部を望む休憩適地だ。
34
北鎌尾根は稜線通しで進むのが一番早い。
稜上で行き詰ったら稜線直下の巻道を探して直ぐに稜線へ戻る感覚で歩くと苦労せずに済む。
35
P12に登り詰めると北鎌尾根の中で最もルートファインディング能力が求められるP13からP14までを進むことになる。
36
P14の一段目は非常に脆い岩場をクラック沿いに登る。
ここは右手に伸びるトラバースルートがあるが不安定で難しい。ロープを使ってでも直登した方がいい。
なお巻く場合はP12を下ったところから千丈沢側のルンゼを30mほど下ってP15直下まで進んだ方がよい。
37
上部はザレ場の急な登りだ。
ここも事故の多い箇所なので十分注意して行動したい。
なおP13-P14の呼称については諸説ある。ここでは白ザレのピークをP14とした。
38
P15へは右手に明瞭な巻道があるが不安定で行き詰ることが多い。上手く巻けてもかなりの遠回りだ。
ここは直登するかピーク直下のバンドをたどるようにしたい。
39
大槍が指呼の距離でそびえるP15に到着する。
40
P15には東京稜行会によって設置された「諸君頑張れ」のプレートがある。
設置の経緯は1962年に発生した遭難死亡事故だ。この事故は救助に向かった隊員と協力者も死亡する「三重遭難」を引き起こした。
その慰霊に伴い設置された。
41
P15は残置スリングを使用して千丈沢側へ懸垂下降(15m)するか稜線上をクライムダウンする。
下った先が北鎌平となる。
42
ビバーク適地の北鎌平は上下2段に分かれている。
ここからいよいよ大槍へのアプローチが始まるので気を引き締めて行動しよう。
43
背後に硫黄尾根や鷲羽岳・水晶岳・後立山連峰から遠くは薬師岳を望みながら大槍の基部へ向かう。
44
時間帯によっては表銀座の尾根に北鎌尾根の影が映る。
奥に連なるのは大天井岳から常念岳の稜線だ。
45
大槍の基部までは不安定な岩が積み重なっている。
自然落石や落石を引き起こさないよう細心の注意を払おう。
46
正面にハサミ岩を見るといよいよ大槍への最初のチムニーとなる。
47
ハサミ岩近くにある「Berg Heil 穂先は近い 気を抜かず頑張れ」のプレート。
その言葉の通り集中して大槍の登攀に望みたい。
48
最初のチムニーは容易だ。
これを越えて正面の岩場をやや左手にある上部チムニーを目掛けて登る。
49
下部チムニーと上部チムニーの間も落石に注意したい。
ここは傾斜も緩く技術的にも難しくはない。
50
いよいよ上段のチムニーに取付く。
最初の1歩が難しいが後はスタンス・ホールド共に豊富だ。万一に備えてロープを使用したいところだ。
51
チムニーの抜け口からスラブ状の岩場を登ると大槍の山頂が視界に入ってくる。
52
山頂直下の簡単な岩場を登る。
ここは山頂からの人工落石に注意したい。
53
祠の裏から槍ヶ岳の山頂に到着する。
体力や技術により到着時刻は大きく異なる。大天井ヒュッテから足並みの揃った強いパーティであれば13時前後には到着できるだろう。
通常であれば12時間前後を必要とする。
54
【宿泊】
「大天井ヒュッテ」は北鎌尾根縦走の前日に宿泊する小屋だ。支配人の小池氏(本年度は休職中)は北鎌尾根の生き字引的な存在で様々なアドバイスを得ることができる。
有明温泉登山口から約8時間の距離だ。
55
【宿泊】
「槍ヶ岳山荘」は大槍直下にある山小屋だ。
小屋に到着する時間が16時を過ぎる場合には現在地を含めて必ず連絡を入れるようにしたい。
上高地まで約8時間。
新穂高温泉まで約6時間半。
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【アプローチ方法 
湯俣から水俣川を遡り千天出合を経るアプローチルートは北鎌尾根本来のオリジナルルートとなる。
幾多の渡渉・不安定なへつり・ルートファインディングの難しさなどが北鎌尾根の困難度を高める。湯俣から千天出合までが北鎌尾根よりも難度が高く核心部となる。
57
【アプローチ方法 
P5からP6間は不安定で難しい登攀となる。
ロープが必須となるので技術的に未熟な場合は取付いてはいけない。
58
【アプローチ方法◆
水俣乗越からのアプローチは技術的に最も容易で荷物が重くなる(ババ平または北鎌沢出合での幕営必須)以外のデメリットが少ない。
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【北鎌尾根概念図】
北鎌尾根は稜線通しで進むのが一番早い。
稜上で行き詰ったら稜線直下の巻道を探して直ぐに稜線へ戻る感覚で歩くと苦労せずに済む。
楽そうだから「巻く」という選択は北鎌尾根にはない。
※上記の情報は記事公開日(2019年07月11日)時点の情報です。最新の情報については、出発前に現地の各関係機関にお問い合わせいただく事をおすすめします。

※本記事内にて各山域に生息する動植物の紹介を行う場合がありますが、自然保護区域への立ち入りや希少生物の採取・捕獲・譲渡・販売等は、法令により禁じられています。多くの方が自然を楽しみながら登山ができるよう、動植物の保護にもご協力ください。
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