剱岳/憧れの八ツ峰へ(上半)。これにてバリエーションルート引退@68歳


- GPS
- 28:17
- 距離
- 23.5km
- 登り
- 2,971m
- 下り
- 3,130m
コースタイム
- 山行
- 7:14
- 休憩
- 0:58
- 合計
- 8:12
- 山行
- 13:20
- 休憩
- 3:55
- 合計
- 17:15
天候 | 7月30日(水):晴れ 7月31日(木):快晴 8月01日(金):快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2025年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
安曇野ICから扇沢へのルート: http://www.kurobe-dam.com/access/guide_car.html 扇沢駐車場: 市営無料駐車場:170台/第1+60台/第2 有料駐車場350台: 第1/2駐車場(上段)1000円/12時間毎 第3/4駐車場(下段)1000円/24時間毎 https://tozanguchi-p.com/post-442/ 市営無料第一駐車場は到着時満杯。最後の1台が駐車しているところだった。市営無料第二駐車場は9割程度埋まっていた。第二駐車場は第一駐車場から徒歩5分ほど。扇沢駅まで15分弱 アルペンルート: Web予約で扇沢7時半始発を確保。往復¥12,300 窓口の隣にある発券機でQRコードをかざして受け取る。始発50分前から稼働。 室堂には8:40に到着 https://www.alpen-route.com/webticket/ この時期の室堂からの帰り最終便は16:30。ハイシーズン以外は15:30。 帰りの便は指定できない |
コース状況/ 危険箇所等 |
室堂⇔剱澤小屋は割愛して、要所のみ以下に記載。山行時点での状況のため、剱沢の富山県警山岳警備隊派出所で最新情報を確認の上、出かけて下さい(剱澤テンバの受付の隣り) 剱沢の雪渓: 夏道を進み雪で道が消えるところで雪渓に移る。長次郎谷の出合まではクラックもなく快適 長次郎谷の雪渓: I,II峰間ルンゼの取付きまでは問題なく行けた。取付きのすぐ下にクラックが形成され始めているので今後は要注意。I,II峰間ルンゼを過ぎたあたりで雪面が大きくへこんでいる。この時点では下って登り返すことが可能だったが、今後は完全に割れると思われる。そのすぐ上には完全にパックリと穴が開いているので、源次郎側の岩を歩いて通過する V,VI峰間ルンゼの取付きまでは雪の上を安定して歩けたが、その上はクラック多数とのこと。警備隊の方は池ノ谷乗越から下る際に上部のクラックで10mほど懸垂下降をしたとのこと I,II峰間ルンゼには今にも落ちてきそうな雪のブロックがルート上に残っている。V,VI峰間ルンゼにも雪のブロックが残っているので、こちらは向かって左側(VI峰側)を詰めていく 八ツ峰上半: ロープは40mの長さでギリギリ行ける。私はmisuzu(美鈴)さんにアドバイスを頂き、軽量化のため径7.1ミリのエーデルリッド50mロープを使用。バックアップはリサーチしてアラミドファイバー製のSterling rope / Hollow Block2の19インチ(48.2cm)を使用(7mm以上のメインロープに対応するプルージックコード) 支点構築のための捨て縄を3本持っていったが、上半のすべての支点は過去の比較的しっかりしたロープに今シーズンの新しいロープが加えられ、カラビナが2枚つけてあった(安全環はない)。下りる方向に体重がかかるように支点が構築されており至れり尽くせり VII峰とVIII峰には明瞭な巻道があり、間違ってトラバースルートを進むパーティが少なくない。両方ともコルから巻道を数メートル進んだあたりで取り付く。VIII峰のガリーは巻道からは見えない。ハイマツで上部が見えないところを登っていくとガリーが続いている VIII峰の懸垂は、2回に分けて行うのがよい(警備隊も推奨)。私は1発でコルまで下りたが、長次郎谷側に振られたのとロープ回収に力を要した 八ツ峰の頭からの懸垂は、山頂に設置してある支点を使えば池ノ谷乗越に向かって自然とルート取りされるようになっている。20mほどで2つ目の支点が壁にあり、同じくそれを使えば池ノ谷乗越の数メートル下に下りられる。警備隊員からはこの支点を使うことを強く推奨された。以前の懸垂ルートでは落石させやすかったこと、落石を発生させると北方稜線の池ノ谷ガリーを通過する登山者を直撃する危険があるため 北方稜線: 池ノ谷乗越から急斜面を登る。よく見ると斜面に消えかかった赤ペンキの印がある。すぐ左のガリーは足元が崩れやすい上に手がかり足がかりがあまり良くない。 長次郎の頭を反時計回りに巻く道は途中で雪渓に隠れて行き詰まった。結局、長次郎の頭に登り返して懸垂下降する羽目になった(1ピッチ目はクライムダウン、2ピッチ目は懸垂)。剱本峰に向かって1ピッチ目の懸垂支点からやや左側へ下りていくと、途中でお助けロープがあるが、お助けロープの強度等については不明。なお、お助けロープの支点と2ピッチ目の懸垂支点は、数メートル離れているだけだが、壁を伝っての横移動は危険)。 コルから本峰へのビクトリーロードも迷いやすい。私は少し右寄りの岩壁を登ってしまいちょっと手こずった(私のルーファイ能力がないだけか・・) 別山尾根の下り: カニの横這いの一足目の位置が2年前までと変わったような・・。気のせいか? 別山尾根は浮石が多いので絶対に落石させないこと。また上からの落石に注意 水: 合計3.3L運んで3L弱を消費 |
その他周辺情報 | 山小屋: 昨年から剱澤小屋は「やまたん」でWeb予約するシステムに変わっている。 クレジットカード決済になったので、事前の銀行振り込みが不要になり便利。 https://www.yamatan.net/ 一方、剱山荘も「やまたん」予約になったので、これまでのような急用や天候等による前日キャンセルがやりづらくなった 両小屋ともイーロン・マスクのスターリンクでwifi接続できるようになった https://yamagoya-wi2.com/ 2時間300円、24時間600円(auユーザーは無料。povoやUQ、その他は有料) 両小屋とも山小屋としては珍しくシャワーを利用できるのはありがたい 日帰り温泉:今回は扇沢下山後に薬師の湯を利用。露天風呂の方が熱く、日焼けした肌に痛くて内風呂しか入れなかった(泣) <室堂周辺> みくりが池温泉: 9:00〜16:00。1000円。地獄谷を源泉とする白く濁る硫黄の香りの100%掛け流しの湯。シャンプー、ソープあり http://www.mikuri.com/spa.html 雷鳥荘: 11:00〜20:00。1000円。地獄谷を源泉とする白く濁る硫黄の香りの100%掛け流しの湯(風呂の中の階段を上がった湯舟。下の湯舟は湧き水を沸かした湯)シャンプー、ソープあり http://www.raichoso.com/sisetu.html 室堂山荘: 14:00〜16:00。700円。温泉ではないが、立山連山を眺めながら湯ぶねに浸かれる。シャンプー、ソープあり <大町温泉郷周辺> 湯けむり屋敷 薬師の湯: 7:00〜21:00(最終入館20:30)。750円。TEL.050-3101-9679。長野県大町市平2811-41。扇沢から車で約15分 http://o-yakushinoyu.com/ 葛温泉 高瀬館: 10:00〜20:00。700円。TEL.0261-22-1446。長野県大町市大字平高瀬入2118‐13。扇沢から車で約20分、七倉山荘の手前 https://www.takasekan.com/hot-spring/ コンビニ: 安曇野ICから扇沢までの道中にメジャーなコンビニ複数軒あり |
予約できる山小屋 |
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写真
感想
「案ずるより行うが易し」と言ったらおこがましいだろうか・・
59歳で30年ぶりに北アへの復帰戦として前穂北尾根に登り、翌年の還暦で槍の北鎌尾根に登った。できれば剱の八ツ峰にもと欲を出して、61歳の時に懸垂下降の講習会に参加して技術を習得した
以来、6シーズンにわたりチャンスを窺ってきたが、2年間の現役復帰とその後のコロナの3シーズンもあって、なかなかチャンスに恵まれなかった。北尾根や北鎌尾根と異なるのは、アプローチの雪渓のコンディションに大きく影響を受けること
温暖化のせいで剱澤や長次郎谷の雪渓がシーズン本番前にひどい状態になってしまい、取り付きへのアクセスが大鬼門となって立ちはだかった。どんどん齢を重ね、体力やバランス感覚が落ちてきて2年前にバリエーションルートの卒業を心に決めていたが、どうしても八ツ峰だけは諦めきれなかった
今シーズンこそ本当に最後と決めて諦めるつもりでいたが、雪の状態は近年になくそこそこの状態を保っていたので天気予報とにらめっこ。7月28日の月曜からのスケジュールで予約を入れたものの、微妙に午後の天候が怪しい
技術も経験も乏しい高齢者の自分としては、雨に濡れた岩稜の登攀は避けたい。せめて天候のコンディションだけは完璧を期したかった。スタートを29日にずらして計画し直し、流動する天気予報に30日からの決行を決断した
結果は快晴となり暑いことを除けば最高の天候のコンディションで決行できる運びとなった。ただ、比較的残雪が多い今シーズンでもI,II峰間ルンゼの取付きは自分の手に負える状況ではなく、下半を断念せざるを得なかった
北尾根や北鎌尾根をやった時と比べて格段に体力は衰え、上半のみでも想定以上に手こずったので、下半からスタートできなかったのは山の神様の思し召しだったと思っている
68歳にして初めての実戦での懸垂下降は、実家近くの里山の岩場でさんざん練習したおかげで、スムーズにこなすことができた。ただ、垂直に近い15m強の岩壁で練習を積んできたので、ロープを落とせば地面まで届いたのだが、今回の実戦では山の斜面で引っ掛かり何度もロープさばきが必要になった。これもいい経験だった。もう実践で懸垂下降をすることはないけど・・
最後に、17時半からの夕食時間に2時間も遅れたにもかかわらず、対応していただいた剱澤小屋の方々には、この場をお借りして改めて心からお詫びとお礼を申し上げたい。18時半終了なのに19時到着時に「まずシャワーを浴びてきてください」と配慮していただいた小屋のご主人にはお礼の申し上げようもない
暑さの汗だけでなく、冷や汗など悪い汗も一杯掻いていたので、さっぱりして食事と睡眠をとることができたのはとてもありがたかった。一人で食事をしている際にもお話し相手をしていただき、本当にありがとうございました
今回をもってきっぱりとバリエーションルートを引退して、年相応の登山をポツポツと楽しんでいけたらと思っている。最後のチャンスをくれた山の神様に心から感謝感謝!
最後に私のような年寄りができたからと言ってくれぐれも安易に足を踏み入れないでください。前穂北尾根、北鎌尾根、北穂東陵、明神主稜、奥穂南稜などに比べて格段に難易度が高いです。最初は経験者と出かけることをお薦めします。老婆心ながらの余計なおせっかいかもしれませんが・・
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