鳥海山


- GPS
- 09:13
- 距離
- 15.1km
- 登り
- 1,341m
- 下り
- 1,339m
コースタイム
- 山行
- 7:44
- 休憩
- 1:30
- 合計
- 9:14
天候 | ガス |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
2025/6/19(木)〜6/22(日) 名古屋6/19→東京駅JRバス早割2800円4座 東京駅→6/20山形駅6:20着深夜バス5700円 独立3座快適 山形駅→姥沢駐車場 レンタカー使用 駐車場協力金1000円 月山ペアリフト往復1600円 姥沢駐車場→鳥海山象潟口5合目鉾立駐車場→6/21山形駅 レンタカー使用 山形駅→6/22東京駅5:45着深夜バス6100円 3座快適 東京駅→名古屋駅JRバス3700円4座 ※仙台まで直行バスのほうが良かったかも |
コース状況/ 危険箇所等 |
残雪歩きあり。ツボ足もいましたがチェンスパ以上があったほうが良いかと |
写真
感想
前日の月山に引き続き、2座目の鳥海山。
前夜、鉾立登山口の駐車場に移動。エンジンを切ると、辺りはただ潮風と静寂に包まれていた。車中泊の窓越しに見上げた夜空には、雲の切れ間から星がちらりと顔を覗かせ、まるで「明日を楽しみにしていて」と語りかけてくるようだった。
夜明けとともに、鳥海ブルーラインを染める朝日。身体は重いのに、心はどこか軽い。「さあ、2座目。どんな景色が待っているのか」
登山道に足を踏み入れると、頬を打つ風。前日の疲れを帯びた脚を動かしながら進んでいく。だが見上げた先、山頂付近は白いベールで覆われ、視界は絶望的だった。
「これは……引き返すべきかもしれない」
濃いガスと前日の疲れに、心が揺らぐ。それでも風の強さにかすかな希望を感じていた。
「この風なら、きっとガスは流れる」
やがて御浜神社までは登山道には残雪が現れた。濃霧と雪が織りなす白の世界ただの幻想ではなく、どこか不安を伴う静けさが漂っていた。
ルートは良くわからない、心細さを抱きながらも進み、時々出てくる目印に安堵する
御浜神社からはガスが取れ鳥海湖を見ることができた。
まるで誰かがそっと隠していた景色を差し出してくれたように。
湖面に残る残雪のコントラスト。その美しさに、胸の奥がふっと緩んだ。
「見えた」
ただそれだけのことなのに、どうしてこんなにも、心が震えるのだろう。
湖を背に再び登山道をゆく。さきほどまでの白い世界が嘘のように、空の青さが濃くなっていた。足取りが軽くなる……というほど体力が戻るわけじゃないけれど、不思議と心は少し浮いていた。
七五三掛(しめかけ)を越えるころ、山はまた静かになった。稜線の向こうから風が舞い上がり、耳元でゴウッと鳴る。登るごとに景色は荒々しさを増していくのに、どこか静寂だった。
「あと少し——あの頂へ」
息は上がり、太ももは張りつめている。でも、あの鳥海湖が見せてくれた光景を思い出すたび、足が前に出た。
七五三掛では多くの登山者が千蛇谷方面へと向かっていたが、自分は外輪山ルートを選んだ。風の動きから、こちらのほうが山頂を望めるかもしれないと思えたからだ。
外輪山の登りはそんなに急ではなく、2日目の身体にも優しかった。文殊岳付近まで進んだところで、山頂のガスが晴れ、遠くにその姿が現れた。
けれど、それはつかの間の奇跡だった。
行者岳のあたりで、またガスが押し寄せ、視界は白一色へ。
分岐を通り過ぎて七高山に着いても、そこには何も見えなかった。ただ、静かに腰を下ろし、息を整える。
「あの一瞬があっただけでも、よかった」
そう思えた。
ここから新山ピークへ。ザレ場の急な下りを、落石しないよう慎重に進む。
降り切った先には5mほどの登り雪渓があり、チェーンスパイクを装着して登っていく。
「ここを下りで使ってたら、かなり怖かったかもしれない」
外輪山からの周回ルートは正解だった。
残雪を渡りきると、岩場に出る。だが取り付きが分からず立ち止まる。
そんな時、先行者が「こっち!」と声をかけてくれた。そのひと言がありがたかった。
山頂へは、大きな岩をアスレチックのように全身で登り下りし、ときには岩の隙間をすり抜けながら進む。
新山のピークは、やはりガスの中だった。
岩の上には人ひとり立てるかどうかのスペース。偶然いた若者が写真を撮ってくれた。何枚か撮影し、ゆずり合うように次の登山者と交代。
不思議と「山頂に来た!」という実感は、さっきの七高山のほうが強かった気がする。
帰路もアスレチックのように身体を使って下り、鳥海山大物忌神社を目指す。その途中、岩の裂け目に「胎内くぐり」と岩に書かれていた。
鳥海山大物忌神社で少し休憩をとった後、下山へ。
再び雪渓トラバース。が、とりつきが見つからない。ヤマレコを頼りに慎重に探し、ようやく発見。この時期の雪渓は踏み跡が消えるため、ガスガスの中では本当に難しい。
その後の雪渓では、夏道に復帰せず、そのまま雪上を歩いた方が効率的だった。
七五三掛、鳥海湖と、淡々と下っていく。
足元には疲労が溜まっていたけれど、気持ちは穏やかだった。
御浜神社に戻ると、小屋の発電機が回り、窓には明かりが灯っていた。登りでは閉まっていたその小屋に人の気配があり、幸運にも山バッジを手に入れることができた。
鳥ノ海御浜神社をあとにすると、行きには何も見えなかった風景が一気に広がる。
晴れ渡った日本海が、ただそこに在った。
レンタカーの返却時間も迫り、足早に下山道を駆けた。駐車場に着くと、まるで「下界」に戻ったかのような蒸し暑さと、観光客の賑わい。少しだけ、うんざりしながら車に乗り込み山形駅に向かった。
今回の鳥海山、天気との駆け引きも、ルートの選択も、そして出会いも——ぜんぶ含めて良かった。
気まぐれなガスと、束の間の晴れ。
またあの稜線と、湖と、空の間に立ちたくなる。そんな山行だった。
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