剱岳 小窓尾根



- GPS
- 33:38
- 距離
- 17.4km
- 登り
- 2,749m
- 下り
- 2,754m
コースタイム
- 山行
- 8:51
- 休憩
- 0:27
- 合計
- 9:18
- 山行
- 6:14
- 休憩
- 3:05
- 合計
- 9:19
- 山行
- 8:36
- 休憩
- 2:54
- 合計
- 11:30
天候 | 3日 晴れ→ガス→晴れ 夜から強風と雨 4日 ガスと風と雪 厳しい1日だった 5日 朝のうち曇と風後 晴れ微風 下山後、曇 |
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過去天気図(気象庁) | 2025年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
今年は残雪も多く、イメージ的には普段の剱岳より楽に行けるだろうという考えもありましたが想像以上に大変でした。失敗すると一発アウトな雪壁の連続、難しいルーファイ、5月とは思えない全てを凍らせる寒さ、これぞアルパインクライミングと思える最高の剱岳でした。広島を2日の16時過ぎに出発、順調に進み早く着いたので流杉PAで2時間ほど仮眠し24時間営業ではなくなったすき家に3時過ぎに入り、牛丼を腹一杯食べエネルギーを蓄え馬場島に向かい、4時過ぎには馬場島を出発した。
5月3日(1日目) 晴れから少しガス、夜から強風と雨
馬場島のキャンプ場から既に残雪が多い。分岐にある石版を見るのは今回で5度目だがいつも緊張し気合いが入る。取水口に向けての林道は除雪してあるが左右には2m以上の雪壁となっている。2年前の4月末には雪はあまりなかった場所だ。やはり今年は多いのだろう。取水口から直接、雪渓に乗れるか、高巻きをして下りにくい斜面を降りて雪渓に出るかで体力も時間も大きく変わるのでドキドキしながら取水口からのルートを偵察するとなんとか行けそうだ。2年前は濁流が流れていて偵察する気も起きなかった。今回は楽に雪渓に乗ることができた。時間も体力も節約できてかなり嬉しかった。雪渓もほぼ割れ目もなく、恐ろしいような水流も殆どなく雷岩まで順調に到着。雷岩も殆ど埋まっていて判別がつきにくかった。ここで休憩をして、雪が繋がって登りやすい感じの場所から小窓尾根を目指す。見た目より急峻でスリップするとかなりの距離を落ちる。初めの登り出しから緊張しながら登って尾根に出た。尾根に出る少し手前に新しめのトラロープがあり、少しだけ踏み跡も見つけたが尾根までほぼ雪を繋いでいった。1,405m付近の尾根に上がると美しい赤谷尾根が木々の合間から見えた。大休憩後、初日のテン場を目指し高度を上げていく時折、軽い藪漕ぎがあるものの最高の天気。左側に赤谷尾根を見ながら黙々と高度をあげた。最初のハイライトは1,600m第1幕営ポイント、青空の下、大絶景ポイントだ。北方稜線と剱岳らしい荒々しい景色に大興奮である。まだまだ時間があるのに、ここで幕営しようかな〜と心が動いてしまうほど。ザックを降ろして写真撮影タイムの始まりである。「やっぱり剱はいいな〜、北方稜線かっこいいなあ〜」とか言いながら、判る尾根や谷の説明会が始まる(笑)。しかし、今日の目的地は2100mか2200mぐらいまで進んでおかなければならない。まだまだノンビリしたかったが歩みを進め、途中、岩とガレたトラバースがあり念の為ロープを出した。そして、2121Pの第2適地まで進み幕営とした。まだ時間もあり、もう少し進んでも良かったが、進むべき進路にある凄い雪壁とテン場適地が見える範囲に確認できなかったというのもあった。目の前には北方稜線と赤谷尾根、ずーっと向こうまで絶景が見える最高のテン場であった。風が強くなる予報だったのでテン場適地の一番奥の大きな岩と松が生えている傍にテントを張った。斜面側は崩れる可能性もありそうで大きなテントを張るのは危なそうで、2テン程度なら問題なさそうなスペースだった。テント設営後はのんびり過ごし食事を済ませる。テント設営後、大阪の山岳会の6人パーティーが同じ幕営地にテントを張った。今回は軽量化をトコトン行ったので、食事はアルファ米にフリーズドライの親子丼を1.5個分入れて食べた。いつものように鍋料理ではないので食事はすぐに終わった。暗くなり始める頃から予報通り風が強くなってくる。テントには雨が叩く音がし始める。2,100mの標高でも雨である。就寝後も剱岳方面から風が吹き荒れる音がしたが幸いテントを張った場所とブロックのおかげであまり酷く感じなかったが深夜に一度だけテントが浮いた感じの突風が吹いた。
5月4日(2日目) 風、ガス、アラレ 低温
風や雨の音が気になり何度も起きたが、広島からのアプローチの疲れもありよく眠った。3:30起床予定だったが寝坊して4:30ぐらいに起きた。まだ少し雨も降っているようだ。ガスも出ていて景色はない。午後からは回復傾向の予報だったので急ぐ必要はないなあーと思いながら食事を済ませパッキング。朝食はmont-bellの高級リゾット、3分でできるやつだ。思ったより量が多く食べ切るのが辛かった。大阪の山岳会テントはまだ動きがない。テントを片付け06:30行動開始、目の前には斜度のきつい雪壁。幸い雨は止んだようで寝坊してちょうど良かったと思いながら雪壁の下まで行くと、思ったより難しくなさそうだが念の為ロープを出して確保してもらう。上部が70度近くて少し緊張するが落ち着いて登る。せっかくロープを出したので次のピッチもロープを出した。雪面を歩いたり、尾根上の踏み跡を行ったり、ガスもありルーファイが難しい。慎重に進んでいたが凄い岩壁に出てしまい、ルートミスしたことに気づいた。来た道を戻り1時間ほどロス。戻った処で6人Pが追いついてきたので道を譲った。小窓経験者もいて足も速いのだがラッペルポイントなどで渋滞となる。ルーファイのプレッシャーは無くなったが待ち時間は風も強いし寒いしアラレは降るし辛かった。2日目はスタートからずっと登ったり降りたりが続き、標高がなかなか上がらないしGPSを見ても殆ど進んでいない。気がつけば15時を過ぎていて、そろそろ幕営地を考えなければならない感じになってきた。三ノ窓や長次郎のコルまで行けたらと計画では考えていたが、全く無理だった。1日中、なかなかの雪壁や岩稜帯やハイマツの藪漕ぎ、そしてずっと風があたり寒さに耐えながら2,600m小窓の頭に6人パーティーと同じ場所で幕営を決めた。もう少し進もうかと思ったが、ガスが濃く先が全く見えないし身体は冷え切り一秒でも早くテントに入りたいという気持ちの方が強かった。緩い斜面を削って急いでテントを張り、トイレ以外は一度もテントを出なかった。軽量化の為、象足もダウンパンツもなかったのでテントの中でも寒くガソリンストーブがずっと恋しかった。夕方、天候が回復し綺麗な夕日が出たらしい感じの歓声が6人Pから聞こえてきたが、寒くて外に出る気がおきず寝袋にずっと入っていた。消灯後は思っていたより風は吹かなかったが、気温は低くテント内の物は翌朝には全て凍っていた。
夕食にアルファ米とフリーズドライカレーとスープを食べた後は、思っていたより2日目の行程が上手くいかなかったので翌日の行動について会議した。
プラン1:予定通り剱本峰を目指し進めるだけ進み、途中ビバークか遅くなっても馬場島に下る
プラン2:長次郎のコルか早月小屋付近で幕営して翌日下山
プラン3:中仙人谷から馬場島に帰る
以上の3つを決め、明日の身体や精神の感じで判断しようということになった。
5月5日(3日目最終日) 曇→晴れ 少風 早月小屋に降りるまでは寒かった
幸い天候も気力も回復。予定通り剱岳を目指す事にするが、昨日のようなペースだと馬場島までは難しいかもしれないけど予備日も予備食もあるし焦らず進もうと気持ちを落ち着かせる。6人Pが少し早く幕営地を離れていく。剱岳には進まず中仙人谷へエスケープして馬場島に戻るようだ。小窓尾根は我々だけとなった。2,630小窓の頭からコルへ向けて下っていくと、いきなりかなりの雪壁。落ちると6人Pが下っている谷まで落ちていくだろう。風があたり雪壁も固く、しっかりとステップを切りながら登り続ける。相変わらず痺れるような登攀とルーファイが続く。雪壁を越え尾根を進むと、いつの間にか小窓の王の基部のラッペルポイントに着いた。初めて池ノ谷から三ノ窓に来た時に下から見上げた発射台に遂に到達。あの時は、あんな場所に行くことができるんだろうか?と眺めていたが、季節は違うがここに来られて嬉しい。ここを下れば来たことがある場所だという気持ちもあった。30mロープを2本繋ぎラッペル。安全地帯まで5mほど足りない。アックスを刺し、足場を作って慎重にロープを外しロアーダウンする。ガレ場の踏み跡を少し下り、よく写真に出ている強斜度トラバースを終えると三ノ窓が見えたが、時間が勿体ないので三ノ窓へは寄らず池ノ谷ガリーへ進む。無雪期は超ガレガレで登りにくいガリーだが今回は完全な雪壁だ。斜度はここに来るまでに比べれば緩いがとにかく長い。休憩ポイントもないので、脹ら脛を守りながらひたすら登らなくてはならない。ようやくコルまであと少しだなあ〜、休憩が楽しみだな〜と思いながら登っていると、古いトレースがコルの少し手前、右側の細い雪壁に続いている。もしかしたら冬ルートはこっちなのか?と思いトレースを追うと、かなりの急斜面で所々アイス化していてメチャ怖かったが行くしかない。休憩もできず稜線に漸く上がると目の前には剱岳と長次郎の頭が見えた。空も青くなり感動的な景色だ。稜線を進み剱岳に少しずつ近づいていく。長次郎の頭から2度ラッペルし長次郎のコルへ降りる。目の前には剱岳に行く、最後の雪壁がそびえ立つ。もう雪壁には飽き飽きしていたが、これを登れば剱岳だ。休憩も少しにして最後の雪壁に取り付く。一歩一歩近づいていく。この頃から山頂に着きこの山行の目標が終わってしまうことが、嬉しいような悲しいような気持ちになっていく。そして青い空の下、遂に剱岳山頂へ到達。誰もいない山頂には屋根だけが見える祠。これ以上高い場所はない。3日間をかけて遂にピークに立った。相棒は号泣している。それを見てもらい泣きをしそうになるが下り道も気になるし、まだ気は抜けない。珍しく長く山頂で過ごし、早月尾根から下山開始。積雪期に下るのは初めてだが、噂通り気を抜けないルートだった。鎖場が終わり、細いリッジで登ってくる3人を交わすために待機していると、なんと関東の大好きな山仲間だった。こんな場所で奇跡の出会いである。大笑いしながら、しばらく談笑。ここからは、そこまで危険な場所はなかったが相変わらず早月小屋までも長かったし、小屋から馬場島までも長かった。黙々と歩き、予定より1時間早く馬場島に到着。2度目の試練と憧れの石板の前に立ち、漸く今回の山行が終わった。予想以上にアルパインルートで生きて帰った感もあり大満足な山行だった。夜は大量のお酒で山談義に沸き、翌朝、広島へ向け出発し無事に夕方には帰広できました。これで今シーズンの冬山は終わり、早くも来年に向け色々な想いも出てきている。来シーズンが楽しみだ。
【備忘録】
ヒヤリハットではないが、3日目の朝、テント内に置いていた登山靴が2人とも凍っていた。溶かさないと履くことができず、溶かすのに無駄なガスを使用した。今後は寝袋に入れる、寝る時に人(シュラフ)と人(シュラフ)の間に置くなどの工夫が必要。軽量化の為に保温ボトルは持って行かなかったが行動水も凍っていて、行動中も溶ける事はなく、水分が取りにくかった。
寒かった時ように持っていたメリノウールの手袋を出すのがめんどくさくて、2日目はかなり手が凍えた。出しやすい場所に置いておけば良かった。
ギアをそれなりに使用する時はBDの簡易ハーネスでは、ギアラックが使いにくい普通のハーネスにするかギアラックを使用するほうが良い
スコップは、2本あっても良いかも。1人で整地は時間もかかるし疲れるし、1人が手持ちぶたさになる
スノーバーは2本あっても良かったかもしれない
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