【越美】厳冬の飯盛山と,アラクラ東尾根


- GPS
- --:--
- 距離
- 23.2km
- 登り
- 1,914m
- 下り
- 1,915m
コースタイム
- 山行
- 13:50
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 13:50
天候 | くもり時々晴れ,ときどき小雪舞う |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・ 雪はかなり締まってきているが,まだ沈み込みがあるためスノーシューを使用(スノーシューを履いてしまえば,ほとんど沈み込まない)。 ・ 扇谷の右岸に続いている扇谷林道(地形図に記載なし)は,断続的に雪崩による片斜面があるため歩行注意。特にカラカン谷出合(狂小屋)の手前に急で雪が硬い斜面ができており,アイゼンを履かされた。 ・ アラクラ東尾根に取りつく際の熊河川の渡渉は,この時期は水量が少なく,靴を履いたまま渡渉可能(雪解け期は増水注意)。ただし両岸が雪壁になっているため要ピッケル。 ・ アラクラ東尾根は,技術的にそれほど難しいわけではないが,急な雪稜が続き左右も傾斜が強い(特に北側は谷底まで切れている箇所があり落ちると助からない)ため,それなりに注意が必要。雪も硬いため,ピッケルとアイゼンは必須。規模は小さいがすっきりした雪稜が楽しめる,越美国境では珍しいルート(ただしアプローチに難がありすぎるので偏屈な好事家向け) |
写真
当初計画では若丸山を越えて扇谷まで戻る予定だったが,時間がなくなってしまったので,坊主尾根(シタ谷左岸尾根)を下ることにした。
感想
越美国境の飯盛山とアラクラという2つのマイナーな山に,さらに輪を掛けてマイナーな(それどころか偏執的でさえある)ルートから登った。不幸にも偶然このページを開いてしまった方の9割5分までは早くもブラウザを閉じかけていることと思うが,まあ良かったら風景だけでも楽しんでいってください。とても良い山ですので。
飯盛山は,若丸山の東,越美国境稜線からやや北に外れたところにある標高1201.9mの三等三角点(点名「戸ノ又」)の山。登る人のほぼいないヤブ山である。越美国境縦走の登山者でさえ,わざわざこのピークに立ち寄ることは稀だろう。しかし,地形図を見ると,この山はなかなか恰幅の良い広がりを持っており,山頂はたおやかなピークを連ねた台地状で,積雪期は素敵な風景が広がりそうな予感がする。また,昨年9月に熊河川から沢登りで訪れた際に,戸ノ又谷側に立派なブナの森が存在していることを確認していた。冠山峠道路が通年開通したことで,この山も厳冬期に近づきやすくなったこともあり,この冬に登ってみようと思った。
ルートは扇谷からとしたが,これは真冬の扇谷を歩いてみたかったのと,冠山トンネル南口ルートの喧騒からできるだけ離れたかったからである(静かな山に登りたくて奥美濃に来ているのに,どうしてわざわざガチガチに踏み固められたトレースを歩いたり,他人と駐車場の奪い合いをしなければいけないのか?)。それに,今回登路とした滝ノ又谷と扇谷本流の中間尾根である「滝尾根」は,その昔,美濃峠越えの古道が通っていた尾根であり,一度無雪期に探索済みではあったものの,積雪期のほうが見つけやすい痕跡(ナタ目など)もあるかもしれない。
実際,滝尾根ではブナの幹に彫り付けられた文字らしきものを見つけることができたし,上部のブナ林は無雪期のヤブの中で見た時の印象よりもずっと美しかった。飯盛山も良い山でした。9月に沢から登ったときの鬱蒼とした印象から,きっと冬も樹林に包まれたシブい山頂なんだろうなぁと思っていたが,けっこう開けている場所も多くて,東に能郷白山をのぞむ,開放的で素敵な白い台地となっていた。ザックを下ろしてお昼にするにはうってつけの場所である(まあ,かなり奥まった位置にあるので,実際はそうゆっくりゴハンを食べてはいられないが)。無雪期と積雪期では印象がこうまで違うという,好例だと思う。
アラクラ(書籍によっては「アラクラ山」とも)は,冠山のすぐ北東にある標高1229mのピーク。南の越美国境稜線側から眺めるぶんには目立たないが,北面から眺めるとなかなか堂々たる印象の山で,つい冠山と取り違えてしまうくらいである。北面〜西面を取り巻く熊河川支流のアラクラ谷は,アラクラ谷ゴルジュやアラクラ大滝をはじめとした峻険たる地形を隠していて,この山の印象をより独特なものにしている。
この山自体,既に十分マニアックなのだが,その東尾根と来た日には,これはもう酔狂の誹りを免れ得ないかもしれない。そもそも,この東尾根,末端が深い谷に囲まれており,普通の意味でのアプローチルートさえ存在しない。取り付くには熊河川を延々と遡行するか(厳冬期にはこれはあまり現実的ではない),近隣の山に一旦登ってから谷底へ下降し,熊河川を渡渉しなければならない。
どうしてわざわざそんな尾根に登りたいのかというと,2年前の2月に初めて雪のアラクラに登った際,山頂から東尾根を見下ろして,その美しい雪稜に魅せられてしまったのである。つまりは単なる個人的な思い入れ以上の何物でもない。が,評判だけで登る有名山岳よりも,個人的な思い入れで取り付くマイナーピークのほうが,100倍楽しい。少なくとも時には,そんなこともあるのではないだろうか。
登った結果,一つ訂正したいことがある。これまで,北面からのアラクラが一番見栄えがすると言ってきた。しかしそれは間違いで,この山が最も印象的な表情を見せるのは,東面だった。それくらい,アラクラ東尾根は純白の雪稜を複雑にうねらせながら,山頂の一点へと美しく突き上げていた。特に北側は鋭く切れ落ちて,アイゼンの歯が立ちにくいくらいに氷化している箇所もあり,程よい緊張の中,雪煙に叩かれながら登っていると,どこかもっと高い山の稜線を辿っているような気分にさえなる。規模は小さいが,越美国境では珍しいすっきりした雪稜ルートなのではないだろうか。たぶん誰も登らないと思うけど。
最後に,上の方で「冠山トンネル南口ルートの喧騒から離れたかった」なんてカッコつけて書いたけど,結局最後は時間切れのため,人気の冠山ルートのトレースにしっかりお世話になりました。いやー,やっぱりトレースがあると安心するなぁ!(さっきと言ってることが全然ちゃうやん…)
<関連記録>
・ 無雪期に滝尾根を登って美濃峠の古道を探索した際の記録(2020年10月)
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2671580.html
・ 無雪期に飯盛山に登った際の記録(2024年9月)
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-7294563.html
・ アラクラに北面から登った際の記録。この頃はまだ冠山峠道路が開通していなくて,真冬にここまで来ること自体が結構大変でした(2023年2月)
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-5148129.html
・ 無雪期にアラクラに登った際の記録。アラクラ大滝もあるよ(2024年7月)
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-7044453.html
コメント
この記録に関連する登山ルート
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妄想を現実にもぎ取った感じ
それも、思いもつかなかったアプローチ
そっちからですか!!
北面ではなく、良いのは東面だなんて
まだ北面も行けてないのに…
1000メートル台のお山とは思えない写真のオンパレードで、本当は海外の高所へ行っていました?
一度思いついてしまったら、それは自分だけの大切なもので、取り憑かれて、行かないという選択はありえない 行かざるを得なくなる
という感じですよね
hillwanderer隊長のお気持ちは、わかるわ〜
指くわえて読み込みました
はい、本当に行ってまいました笑
真冬に行ってみたかったもう一つのお山、飯盛山と組み合わせてみました。というか、もんりさんのご示唆もあって、若丸山北西尾根からのアプローチも考えてたんですが、アラクラ谷〜西日谷遡下降時に観察してたら尾根末端が結構険しそうだったので、今回のルートと相成りました。
勢いでかなり東面推しの書き方をしてしまいすみません💦 北面も美しいのは間違いないですよ〜 むしろ北面のほうが一個の独立峰としての貫禄が溢れてる!ような気がします。
「一度思いついてしまったら、それは自分だけの大切なもので、行かざるを得なくなる」…本当におっしゃるとおりです。沢も同じですね。思いついちゃったけど、本当に行けるか分からない、でもとりあえず行けるところまで行ってみる、という状態が一番楽しいような気がします。
余裕があれば、アラクラpeakから東尾根を時間の許す限り下って、東尾根を行った気になろうと企んでいました
結果は、ラッセルで時間を使い、大滝上の渡渉で時間切れ… アラクラ東尾根どころか、アラクラpeakもアラクラ北西尾根も行けませんでした
が、北面からのアラクラの雄姿を堪能でき、大満足!
南側からだと、hillwandererさんのおっしゃるとおり、アラクラはただのポコですが、北側からだと、なんて雄大なんでしょう! 素晴らしかったです
また来シーズン、おじゃましてきますね
魔力的な写真をありがとうございました
おおっ 行かれたのですね
新雪は山を美しくしてくれますが、ラッセルが厳しくなるのが二律背反で悩ましいですね〜 きれいな写真をありがとうございます!
出た〜、一旦下って登り返す作戦! 私もその誘惑に何度も駆られました😅 一見不合理な行為が実は一番合理的という…。雪が硬いところがあるので下降時はご注意ください!
またグッドタイミングがつかめるといいですね〜。
というか、先々週くらいまで「今後は高温傾向」と聞いてたのに、一転して今季一番の寒気とはなんぞや…
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