2023年2月,北面からアラクラと若丸山に登った際に,P1059岩峰の手前から覗き込んだアラクラ谷ゴルジュ。岩壁は荘厳な雪襞に飾られ,ゴルジュも大滝も凍り付き,その底知れぬ井戸のような静寂の空間に強く惹きつけられた。あの冬の日に見た谷の奥へ,いざ。
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2023年2月,北面からアラクラと若丸山に登った際に,P1059岩峰の手前から覗き込んだアラクラ谷ゴルジュ。岩壁は荘厳な雪襞に飾られ,ゴルジュも大滝も凍り付き,その底知れぬ井戸のような静寂の空間に強く惹きつけられた。あの冬の日に見た谷の奥へ,いざ。
熊河川沿いの林道は部分的にかなり荒れており,貧弱4WDのフィットではヒヤヒヤものだったが,何とか入渓地点の橋まで入れた。橋のたもとに3〜4台分くらいのスペースがある。
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熊河川沿いの林道は部分的にかなり荒れており,貧弱4WDのフィットではヒヤヒヤものだったが,何とか入渓地点の橋まで入れた。橋のたもとに3〜4台分くらいのスペースがある。
熊河川本流は伐採が入っており,ブル道まで通っていると増永迪男さんの著作に書いてあったので期待していなかったのだが,意外に気持ちのいい清流。ブル道はヤブに還りかけている区間が多く歩きにくかったので,大半は川の中を歩いた。
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熊河川本流は伐採が入っており,ブル道まで通っていると増永迪男さんの著作に書いてあったので期待していなかったのだが,意外に気持ちのいい清流。ブル道はヤブに還りかけている区間が多く歩きにくかったので,大半は川の中を歩いた。
両岸の緑も,時を経て復活し始めているようだ。ブナやサワグルミがうれしい。
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両岸の緑も,時を経て復活し始めているようだ。ブナやサワグルミがうれしい。
壊れかけた古い堰堤を越えると,すぐ左岸側に今回入渓するアラクラ谷の出合。出合はゴルジュ風で,ちょっと気が引き締まる。
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壊れかけた古い堰堤を越えると,すぐ左岸側に今回入渓するアラクラ谷の出合。出合はゴルジュ風で,ちょっと気が引き締まる。
しかしゴルジュ風に見えたのは入り口だけで,中に入ってしまえば穏やかな谷が続く。ポツポツ出てくる小滝を越えていく。
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しかしゴルジュ風に見えたのは入り口だけで,中に入ってしまえば穏やかな谷が続く。ポツポツ出てくる小滝を越えていく。
2条4m。この上にも同じくらいの高さの滝が連なっており,右岸から巻き越える。
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2条4m。この上にも同じくらいの高さの滝が連なっており,右岸から巻き越える。
谷が南へと屈曲する地点に近づくと,突然,前方に物凄い岩峰がそそり立っているのが目に入る。あれは間違いなく,1059mの岩峰だ! 冬に急登と痩せ尾根が続くあの岩峰を越えた記憶がよみがえる。こいつが見えるということは,核心部も間近だ。
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谷が南へと屈曲する地点に近づくと,突然,前方に物凄い岩峰がそそり立っているのが目に入る。あれは間違いなく,1059mの岩峰だ! 冬に急登と痩せ尾根が続くあの岩峰を越えた記憶がよみがえる。こいつが見えるということは,核心部も間近だ。
と,ついにアラクラ谷ゴルジュ入り口の3m滝が現れた。ここでハーネスなど登攀用具を装着し,準備を整える。この滝自体は右岸を小さく巻き越える。
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と,ついにアラクラ谷ゴルジュ入り口の3m滝が現れた。ここでハーネスなど登攀用具を装着し,準備を整える。この滝自体は右岸を小さく巻き越える。
ゴルジュ内に侵入。行く手には高い岩壁が打ち重なっているのが眺められ,これまでとは全く異なる険悪な渓相に,緊張が高まる。
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ゴルジュ内に侵入。行く手には高い岩壁が打ち重なっているのが眺められ,これまでとは全く異なる険悪な渓相に,緊張が高まる。
まず4m斜滝。滝身を直登するが,取りつきがツルツルで意外に苦労。
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まず4m斜滝。滝身を直登するが,取りつきがツルツルで意外に苦労。
次に樋状に狭まった中に掛かる3m滝。これは直登が難しそうに見えた。
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次に樋状に狭まった中に掛かる3m滝。これは直登が難しそうに見えた。
なので,左岸側に降りてきている岩のリッジから取り付いて小さく巻く。かなり急な泥壁でいやらしいが,灌木にぶら下がるように通過。
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なので,左岸側に降りてきている岩のリッジから取り付いて小さく巻く。かなり急な泥壁でいやらしいが,灌木にぶら下がるように通過。
すぐ谷に戻るが,両岸の岩壁はさらに高くそそり立ち,ゴルジュの険しさも佳境となる。この山に「アラクラ」という山名が付けられている理由が,ようやく分かったよ。これは確かに荒々しいクラ(岩場)を剥き出しにした山と谷だ。
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すぐ谷に戻るが,両岸の岩壁はさらに高くそそり立ち,ゴルジュの険しさも佳境となる。この山に「アラクラ」という山名が付けられている理由が,ようやく分かったよ。これは確かに荒々しいクラ(岩場)を剥き出しにした山と谷だ。
そして5m滝。ここは高い岩壁に囲まれて容易に巻ける地形ではなく,直登あるのみ。左手の壁が登れそうだが,結構立っておりホールドもやや細かい。
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そして5m滝。ここは高い岩壁に囲まれて容易に巻ける地形ではなく,直登あるのみ。左手の壁が登れそうだが,結構立っておりホールドもやや細かい。
なので,ザックを下ろして空身で登り,あとからロープで荷上げ。5m滝クリア。
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なので,ザックを下ろして空身で登り,あとからロープで荷上げ。5m滝クリア。
休む間もなく2段10m滝。1段目の滝身のすぐ左手の壁を登ろうとするが,下部のホールドが乏しく,フリーだとちょっと離陸が厳しい。
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休む間もなく2段10m滝。1段目の滝身のすぐ左手の壁を登ろうとするが,下部のホールドが乏しく,フリーだとちょっと離陸が厳しい。
そこでハーケンを1枚打ち,即席のスリングアブミで中間まで上がる。そこからは良いホールドがあり,苦しい体勢ながらハーケン回収もうまく行って,1段目を登り切ることができた。(なお,この滝は左岸側に灌木帯が降りてきており,直登が無理でも巻くことは可能そう)
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そこでハーケンを1枚打ち,即席のスリングアブミで中間まで上がる。そこからは良いホールドがあり,苦しい体勢ながらハーケン回収もうまく行って,1段目を登り切ることができた。(なお,この滝は左岸側に灌木帯が降りてきており,直登が無理でも巻くことは可能そう)
そして目の前には2段目…。うーん,これはツルツルで無理やね。
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そして目の前には2段目…。うーん,これはツルツルで無理やね。
右手の草付きを登るしかないが,ここがちょっと悪い。ブチブチ千切れる草を気休めに掴みながら泥壁を這い上がり,丈夫な灌木を掴むまで気が気でなかった。
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右手の草付きを登るしかないが,ここがちょっと悪い。ブチブチ千切れる草を気休めに掴みながら泥壁を這い上がり,丈夫な灌木を掴むまで気が気でなかった。
次の4m滝は直登が難しく,右岸側を巻き越える。
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次の4m滝は直登が難しく,右岸側を巻き越える。
とにかく物凄い岩壁が続く。この大きな風景は,この山域では冠山と双璧だろう。
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とにかく物凄い岩壁が続く。この大きな風景は,この山域では冠山と双璧だろう。
左岸側の1059峰直下の岩壁を見上げる。冬にこの岩峰を通過したときはアラクラ谷側が切れ落ちて雪庇が連続しており,なかなか険しいとこやね〜と思っていたが,なるほど雪庇の下はこうなってたのね…。踏み抜かなくてよかった。
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左岸側の1059峰直下の岩壁を見上げる。冬にこの岩峰を通過したときはアラクラ谷側が切れ落ちて雪庇が連続しており,なかなか険しいとこやね〜と思っていたが,なるほど雪庇の下はこうなってたのね…。踏み抜かなくてよかった。
大岩壁に挟まれた狭い谷間がしばらく続くが…
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大岩壁に挟まれた狭い谷間がしばらく続くが…
4m滝。このあたりから,次第に両岸の壁が降りてきて,谷が次第に開け始める。これは右岸を小さく巻く。
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4m滝。このあたりから,次第に両岸の壁が降りてきて,谷が次第に開け始める。これは右岸を小さく巻く。
これも右手から簡単に巻ける。
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これも右手から簡単に巻ける。
しばらく小滝を越えていくと,この美しいナメ滝が現れて…
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しばらく小滝を越えていくと,この美しいナメ滝が現れて…
谷が本格的に開ける。ゴルジュを抜けたのだ。
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谷が本格的に開ける。ゴルジュを抜けたのだ。
先ほどまでの厳しいゴルジュから一転,もう源流と言っていいような草付きの谷を進んでいくと…
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先ほどまでの厳しいゴルジュから一転,もう源流と言っていいような草付きの谷を進んでいくと…
前方で谷が急角度で左に屈曲し,そこに大きな滝が! そうそう,もちろん忘れてませんよ,この谷の主役,アラクラ大滝の登場だ。
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前方で谷が急角度で左に屈曲し,そこに大きな滝が! そうそう,もちろん忘れてませんよ,この谷の主役,アラクラ大滝の登場だ。
アラクラ大滝,2段40m。この界隈で一番と言われることもある大滝だ。末広がりの美しい姿は,確かに貫禄十分。
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アラクラ大滝,2段40m。この界隈で一番と言われることもある大滝だ。末広がりの美しい姿は,確かに貫禄十分。
アラクラ北面の険しさに惹かれ,ある冬の日に岩峰の上から雪に埋もれたアラクラ谷ゴルジュを覗き込んでからというもの,いつか会いに行きたいと思っていた滝だったので,満足です。
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アラクラ北面の険しさに惹かれ,ある冬の日に岩峰の上から雪に埋もれたアラクラ谷ゴルジュを覗き込んでからというもの,いつか会いに行きたいと思っていた滝だったので,満足です。
さすがに単独・確保なしの身なので,この高さの滝の直登は自重し,滝の右岸側の草付きから高巻く。滝のすぐ脇からカモシカの足跡がうっすら続いており,それを追うように登っていく。
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さすがに単独・確保なしの身なので,この高さの滝の直登は自重し,滝の右岸側の草付きから高巻く。滝のすぐ脇からカモシカの足跡がうっすら続いており,それを追うように登っていく。
この草付きも一度スリップしたら死亡を含めた大きなダメージを受けることが確実な高度と斜度があるため,それなりに慎重に登っていく。
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この草付きも一度スリップしたら死亡を含めた大きなダメージを受けることが確実な高度と斜度があるため,それなりに慎重に登っていく。
巻きながら眺めた左岸側の1059m岩峰。頂上付近のあの枯木,めっちゃ見覚えある〜
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巻きながら眺めた左岸側の1059m岩峰。頂上付近のあの枯木,めっちゃ見覚えある〜
草付きを登り切って小尾根に出ると,明瞭な獣道があり,そこから谷に降りる。
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草付きを登り切って小尾根に出ると,明瞭な獣道があり,そこから谷に降りる。
アラクラ大滝の落ち口。
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アラクラ大滝の落ち口。
アラクラ大滝の上は,地元では「天の川」と呼ばれる穏やかな源流が続く。この山域特有の藪っぽさもなく,山上の庭園のような流れだ。
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アラクラ大滝の上は,地元では「天の川」と呼ばれる穏やかな源流が続く。この山域特有の藪っぽさもなく,山上の庭園のような流れだ。
アラクラのピークを直接目指すため,左俣を取る。小滝がちょくちょく出てくるが,容易に直登していける。
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アラクラのピークを直接目指すため,左俣を取る。小滝がちょくちょく出てくるが,容易に直登していける。
やがてヤブに突入。シャクナゲ主体の堅固な藪だが,思ったよりは短くて済んだ。
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やがてヤブに突入。シャクナゲ主体の堅固な藪だが,思ったよりは短くて済んだ。
アラクラ(P1229m)に登頂。冬の日のすっきりした山頂から想像していた通り,藪は膝丈程度で,360°開けた山頂だった。
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アラクラ(P1229m)に登頂。冬の日のすっきりした山頂から想像していた通り,藪は膝丈程度で,360°開けた山頂だった。
しかし,今日の北陸地方は梅雨末期の空模様で,周囲の山々はガスに包まれている。もし晴れていたら若丸山や能郷白山など越美の山々が隈なく眺められたはずで,残念。
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しかし,今日の北陸地方は梅雨末期の空模様で,周囲の山々はガスに包まれている。もし晴れていたら若丸山や能郷白山など越美の山々が隈なく眺められたはずで,残念。
わずかに冠ヶ峠のピーク(1262m)と,それに続く稜線がガスの間から眺められた。少なくとも真ん中の小ピークまでは,丈の低い笹が続いていて歩きやすそう?に見える。
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わずかに冠ヶ峠のピーク(1262m)と,それに続く稜線がガスの間から眺められた。少なくとも真ん中の小ピークまでは,丈の低い笹が続いていて歩きやすそう?に見える。
さて,下降路の西日谷に向けて下降。霧に煙るアラクラの山頂を最後に振り返る。
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さて,下降路の西日谷に向けて下降。霧に煙るアラクラの山頂を最後に振り返る。
下降路の西日谷は,ちょこちょこ小滝が出てくるが,たいていクライムダウン可能。
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下降路の西日谷は,ちょこちょこ小滝が出てくるが,たいていクライムダウン可能。
15m滝は右岸から巻き下りる。
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15m滝は右岸から巻き下りる。
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谷が北向きに方角を変える屈曲点まで来ると,両岸の壁がにわかに立って,3m滝が。
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谷が北向きに方角を変える屈曲点まで来ると,両岸の壁がにわかに立って,3m滝が。
高巻きルートの選定にちょっと迷ったが,右岸側の壁に落ちている小さな滝(写真)を登ると獣道が出てきて,それを辿って巻いていく。
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高巻きルートの選定にちょっと迷ったが,右岸側の壁に落ちている小さな滝(写真)を登ると獣道が出てきて,それを辿って巻いていく。
滝の大きさに比べてやや大きめの巻きになるが,安定して巻くことができる。
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滝の大きさに比べてやや大きめの巻きになるが,安定して巻くことができる。
巻き終えてから,3m滝。
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巻き終えてから,3m滝。
その後,ちょっとしたミニゴルジュも出てくるが,水線通しで下っていくことができる。
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その後,ちょっとしたミニゴルジュも出てくるが,水線通しで下っていくことができる。
西日谷ミニゴルジュ。
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西日谷ミニゴルジュ。
やがて穏やかな熊河川本流と合流。明るく開けた谷を,駐車地に向けてぶらぶらと。
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やがて穏やかな熊河川本流と合流。明るく開けた谷を,駐車地に向けてぶらぶらと。
アラクラ北面を愛し恐れている者ですが、まだ外し中…
やっぱり行かれたのですね
う、う、羨ましい〜
勇気が出ませんが、ちょっと変則的なルートを考えています
こんばんは〜。アラクラを取り囲む壁が予想以上の規模でびっくりしました。大滝もなかなか美滝でしたよ〜。
むむ、変則的ルートとは…気になる!
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