金木戸川・小倉谷 (笠ヶ岳)


- GPS
- 33:07
- 距離
- 40.6km
- 登り
- 3,446m
- 下り
- 2,948m
コースタイム
- 山行
- 8:40
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 9:20
- 山行
- 10:41
- 休憩
- 0:10
- 合計
- 10:51
- 山行
- 9:12
- 休憩
- 1:17
- 合計
- 10:29
天候 | 3日とも晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
理想は"新穂高に駐車、早朝にタクシーで金木戸川林道へ"、だが、タクシーの予約が取れなかったため、上記の行動となった。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
金木戸川林道は前半部分では陽当たり良く暑い。後半は日陰多めになる。 入山前からも晴れの日が続いていたため、水量は少なめと思われる。 |
その他周辺情報 | 温泉:中崎山荘 夕飯:関SA かごの屋 |
写真
感想
昨年の会の夏合宿の行先としていた小倉谷。昨年は天候優れず、南紀の立合川へ転進となったものの、今年は天候に恵まれた。
メンバーは去年から1人減って3人での山行となった。いくつか練習山行を組んだものの、ことごとく雨で流れてしまい、今シーズン泊り沢が初となってしまったメンバーもいた。
また、泊地にも恵まれず、特に2日目は就寝中に小雨がパラちいて止む無く岩ボコなところに張ったタープへ避難して寝たこともあり、体力的にかなりギリギリの戦いとなってしまった。
ともあれ、ボロボロな状態ではあるものの、無事この夏のビッグ山行を終えることができて充実感に満ちている。
なお、滝の名前などは白山書房の"北アルプスの沢"を参考にした。
1日目
双六ダムの奥、金木戸川林道の入口へ駐車。すでに15台くらい停まっていて、ゲートより少し手前のところへ駐車することになった。小倉谷のほかに打込谷、双六谷もあるとはいえ、こんなにも人が入っていて驚く。釣り人もいたのかもしれない。結果として小倉谷に入っていたのは自分たちの他に2パーティ、うち1パーティは4日間の行程だった。
林道前半は日当たりが良く、暑さにやられながらのつらい林道歩き。時折ある支流でクールダウンしながら歩いていく。第2ゲート前までタクシーで入れれば、かなり負担軽減になるんだろうな。崩壊地を越え、水力発電の設備を見ながら歩き続けると林道終点、そして小倉谷出合へ到着。ここまで14km、4時間弱。なぜだかわからないが、撤退していくパーティがいた。
出合で靴を履き替え、いざ入渓。双六谷本流の流れは強くなく、腰くらいまでの深さで泳ぎは無く渡渉完了。小倉谷へ入る。透き通ったキラキラな流れ、白い岩が転がって明るい沢。グラビア沢と言われるだけのことはあるな、と期待が高まる。
しかしいくらも行かないうちに、Zakkiさんが転倒、膝を打ってしまい、行動停止。撤退の文字が点滅し始めるものの、しばらく様子を見てから、行ける、という判断で山行続行。結果、時間は少しかかってしまったものの、無事山行を終えることができた。
1日目は標高1400mくらいの広河原まで。Zakkiさんの足を気遣い、ゆっくりめで進んでいく。水流によりくりぬかれた丸いトイ状10m滝は左岸を楽に巻き、泳ぎが必要そうな2m溝状は右岸を小さく巻いていく。右から支流が入るところで休憩し、いよいよ初日の核心、ミニゴルジュへ入っていく。
前半はサクサク行ける。後半、4m直瀑では右のクラックへアブミをセットして、ロープ確保で登る。続くゴルジュ状の奥の5m滝は2段目がどうしても上がれず、戻って右岸を巻いた。下りるときは懸垂下降。沢に戻ってすぐに"横からの滝"。踏み跡を辿って左岸を容易に巻くことができた。
巻き終わると谷が開け、広河原に入る。まず左岸側に幕営的地があり、しばらくゴーロ帯が続いたあと、谷が狭まる手前に右岸にもう1か所適地がある。どちらも先客がおり、我々はゴーロ帯の左岸へ支流が入るところを泊地とした。支流の飛沫がちょっとあったり、あんまり平らじゃなかったり、岩が滑ったりとイマイチな泊地ではあったものの、無事予定通りの行程をこなせたことに安堵した。おいしい仙台麩丼をいただいて就寝。
2日目、3時半前に起きると星がきれいだった。朝食にピリ辛うどんをいただき、準備して出発。3人パーティに挨拶し、広河原を後にする。4日間の行程で、この日は両門の滝の手前まで行くそうだ。早速の4mナメ滝は右岸を巻くが、上がりすぎてしまったので懸垂下降することになってしまった。しばらく進むと右から支流が入り、目の前には大岩が転がり大きな倒木も引っかかる。遡行図の"大岩重なる~"のとこだろうか。越えるところを探すも見つからず、右岸を巻く。張り出した岩を回り込んだところから沢へ下りることができた。
両側が狭まり、大ゴルジュ帯へ入ってきたことを知る。とはいっても、高く立っているわけではないため、そこまで威圧感は感じない。程なくしていよいよ15m淵を湛える3mCSを迎える。閣下が空荷で取り付き、後続をロープで引っ張る。3人目を引くためのロープを淵に投げるも、流れがそこまで強くないのと、ロープの色が水色なのとでロープが届かない、わからない。仕方なく、荷揚げ用ロープに3人目もつながり、一緒に引っ張ってもらう。急いでロープを繋ぎなおしたので気が回らず、ザックの間隔が狭く、水に浸ったをザックを同時に2つ引っ張り上げることになってしまった。やはりめちゃ重かったとのこと。。しまった。。
CS滝の先はそのまま進めず、右岸を巻き上がる。懸垂下降したものの、後続のパーティはそのまま下りられるルートを見つけてサクッと下りていた。このあたりから陽が差し始める。泳ぎで濡れた体が温まりほっとする。お助け紐で大岩を越え、左から立派な30m滝をかけて支流が合流するところを過ぎると、いよいよ滝登りの核心、"赤い残置スリングのある滝"が姿を現す。先行パーティの様子を観察し、我々も取り付く。手前に見えるスリングを使い、反対側にある残置ハーケンも使って滝に左側を登る。登った先のトラバースも怖く、そのままロープに繋がれて越える。
徐々にゴルジュらしさは薄れ、大きく見える10m斜瀑を越えていくと陽も上がってきてキラキラした明るい沢へと様子が変わってくる。泊適地もいくつかあり、休憩を挟みながら核心を越えた(と思っていた。実際はこの後の巻きが核心になったが)喜びにひたる、幸せなひと時。さらに谷は開け、ナメエリアへ入っていく。キラキラはさらに増し、最高の癒しポイント。天気がよくて、陽が高いこの時間帯ということでとりわけ綺麗。少し進むと、ナメの先に40m直瀑が迎えてくれる。ここが小倉谷のハイライト。この後のきつーい巻きの連続の前に、このエリアがあってよかった。
40m直瀑は少し戻ったところから右岸の笹藪を巻き登る。最初は明瞭な踏み跡があったものの、笹薮に没して見失う。さらに登り、滝を越えたくらいの高さになったらトラバースを始める。登りも大変だったけれど、笹薮のトラバースがとてもきつい。笹は滑るし、乾いた笹の落ち葉はさらに滑る。笹は引っ張っても抜けないので手掛かりには困らないものの、足元が滑ってばかりで腕力頼りになってしまう。グローブをしているものの、出ている指先が擦り傷切り傷まみれになってしまう。ひーひー言いながら支沢に出る。一旦笹薮から解放されて一息つくものの、再び笹薮へ。木々が茂るところが近づいてくると笹薮は薄れ、そのまま滝の落ち口へ出られた。閣下のルート読みが冴えていた。この巻きに40分かかった。遡行図では15分とあったけれど、今思えば、著者らは途中の支沢から入ったんだろうか。時間のわりにきつく感じる巻きだった。
少し進んだ5m滝も巻くが、ここはスムーズな巻きだった。すぐに二俣。1710m地点の地形図にもある二俣で、右の3条の6m滝へ。開けた白いゴーロ帯になると、両門の滝が現れる。どちらも同規模な沢で、左の滝を越えたところから間の尾根を越えて右の沢へ入る。先行2人パーティは左俣の滝を直登していたが、我々は右岸を巻き登る。落ち口へ出ると、一つ滝を越えたところから尾根を乗り越えにかかる。わずかな踏み跡を辿って登ると尾根に乗り、下流側へ少しトラバースすると沢へ下りることができた。
その先の2段40m滝は遡行図の通り滝を登れるようには思えず、右岸を巻くことにする。ここも最初は踏み跡があったものの、じきに見失う。またも笹薮の中、いいトラバースが見つからず尾根の上まで出ることになってしまった。さすがに尾根は歩きやすい。滝を越えたところで下降にかかるも、笹に阻まれて視界が効かず、突然の急斜面に出くわさないか怖くて灌木で懸垂下降。結構標高差があったので、30mロープを2本つなげる。無事沢へ降り立ったものの、予定外に時間がかかってしまった。
各自疲れが出てきたところ、この日残す滝は2つ。5分ほど進むと先に大きな滝が見えてきた。実はこの前の懸垂下降前にちらちらと見えていたが、かなり大きく見えて見たくない思いが強かった。遡行図の解説にあるとおり、手前のゴーロ帯で急激に標高を上げるために滝が大きく見えており、滝そのものは30m級。先行2人パーティは右岸の崩壊気味なルンゼを上がってすぐのところをトラバースしているのが見えた。後で聞くと、このトラバースはけっこうきつかったそう。我々もルンゼを上がるが、もう少し上をトラバースして、結果的に落ち口横にドンピシャで出ることができた。しかしルンゼの最上部がかなり荒れており、フリーで登るのは怖い。ロープを出してなんとか力づくで登ることになった。
雲が増えてきて夕立を警戒し、落ち口の一枚岩は一瞥するのみで先を急ぐ。このあたりからコケが増えて全体的にぬめるようになってくる。下流部はあんなにキラキラでフリクションが効いたのになぜ?? 穏やかな流れになり、疲労を感じつつ進むと、2段15m滝が現れる。これまでよりは難しそうには見えないが、時間も時間だし疲労困憊なのでここで今日の行程を打ち切る。滝前の河原を泊地とし、その裏の灌木帯にタープを張った。
頭上は雲が忙しく通り抜け、曇ったり晴れたり。この日は夕立の可能性があると聞いていたので、雨が降らないことを願いながら空を見つめる。時折、滝の向こうに稜線が見える。遠いな。。疲れすぎて持ってきたお酒に手が付かない。まさかの閣下すらなかなか進まないという。昨日・今日は行動時間も長く、明日も長いであろうことを思うと不安が募る。河原で床に就くものの、うとうとしたところで小雨がパラついてきた。なんでこんな時に!と悪態をつきながら急いでタープへ駆け込む。タープを張るためにいいところが見つからず、岩ボコなところに張らざるを得なかったのでとても寝づらい。寝返るをうつのも難しく、つらい夜となった。
3日目、深夜から晴れてきて、閣下は途中からタープ下から移動して寝ていた。6時前に出発。早速目の前の滝を越える。支沢を少し登ってトラバースしていく。前日悩まされた笹薮は、標高故かもう見なかった。昨夜の雨ではほとんど増水しなかったようだ。インゼルにより分流した沢を歩き、2人パーティが幕営している奥の二俣へ至る。たしかに泊適地は1か所だけに思えた。奥の二俣すぐの滝は右側の草付きに沿って登る。高度感はあるが、ホールドはしっかりしており難しさはない。ここから思い出したように標高を上げ始める。小滝ラッシュが続く。一つ一つは難しくはなく、姿を現した笠ヶ岳山頂が徐々に近づいていくのが励みになる。開けた直線状に小滝が続く先にある"岩盤張り出す10m滝"ではロープを出した。フリーで越える人も多いようだが我々には無理。。
その先にはもう目立った滝はない。ひたすら小滝を越えて標高を稼いでいく。いくつかある二俣では太い方の流れを選び、山頂側へ至る沢を詰めていく。最後の6m滝だろうか、ここで水を浴びておいてクールダウン。じきに水が絶え、陽に照らされながらのガレ場登りになったので、暑さにやられず比較的快適に登ることができた。先に山頂を踏んだ2人パーティと思われる人影が、上から手を振ってくれた。ガレ場では最初は浮石は少なかったものの、上部へ向かうにつれて浮石が増えてくる。最終的には持つ岩、踏む岩すべてが動くようになり、恐怖。できるだけ真上・真下にいないようにルート取りをしていく。
山頂らしきところは見えているが、前後の稜線も含めて人が見えない。もしや、山頂はまだ先なんだろうかとの思いがよぎりながら、自分は先行して登っていったら稜線に飛び出した。そこは山頂から山荘側に10mほど、ほぼ山頂へ突き上げたことになる。稜線を歩く人が見えなかったのは、登山道が新穂高側に付いていたからのようだ。劇的な幕切れにびっくりするとともに、後続を励ます。無事3人とも稜線に上がり、360°の大展望を堪能して小倉谷遡行完遂を喜んだ。
2度目の笠ヶ岳だけれど、ガスガスで視界のなかった前回と違って槍穂や雲ノ平もよく見える。今まで見なかったアングルなので、展望を楽しみながら沢装備を解除する。小倉谷を見下ろすと、山々の先まで谷が続くのがわかる。具体的にどこから歩いてきたのかは見通せないけれど、3日分30km弱の行程を思うと感無量だ。そういえば記録を書きながら思い出したが、過去に笠新道で来た時も小倉谷方面は見えていて、きれいだなと思いながら写真を撮った覚えがある。まさかここから上がってくることになるとは。
笠ヶ岳山荘で貨幣文化のありがたさを感じ、車回収のため先行して下山にかかる。しかし稜線のアップダウンで息が切れてスピードが上がらず、暑い笠新道も休憩多めに入れながらの下りとなったため、思ったほどタイムは縮まらない下山となった。笠新道を下りながら新穂高への到着時間が読めてきてからタクシー会社へ電話。"笠新道取り付きへ1時間"の看板の少し上だった。2時間ほどで着くだろうと読んでいたら、着替えの時間も含めるとちょうど2時間ほどでタクシーに乗れた。
母方の祖父母が神岡出身なので、タクシー運転手と地元トークを楽しみつつ、40分ほどかけて金木戸川に置いた車へ到着。道中かなり局地的な雨に降られたが、下山中に降られることはなくてよかった。来た道を戻って二人を迎えに行き、山行完了となった。
温泉、夕飯(東海北陸道あるあるな夕飯難民になりかけたが)を済まして、自宅到着は0時をまわっていた。翌日の仕事を恨みつつ、沢装備の片づけを手早く行って床に就いた。。
コメント
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笠ヶ岳の西は山深くどんな感じなのだろうといつも考えてましたが
素晴らしい沢の旅ですね!行きたいところが増えましたありがとうございます
このエリアは地形図に名前が記されているピークが少なくて、空白に感じますよね。
ですが、沢筋にはかつて森林鉄道が通じ、今では水力発電の設備が点在していて、意外に開発されています。神岡鉱山が近いので、電力や木材が必要だったのかもしれません。
他に打込谷や双六谷もあり、北アルプスの奥深さを感じられるエリアかと思います。
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