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Yamareco

記録ID: 8838523
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沢登り
北陸

【奥越】姥ヶ岳の「うばが岩」探索 (犬振谷左俣&右俣 遡下降)

2025年10月18日(土) [日帰り]
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GPS
--:--
距離
8.6km
登り
897m
下り
896m

コースタイム

日帰り
山行
10:00
休憩
0:00
合計
10:00
7:20
20
駐車地
7:40
50
犬振谷に入渓
8:30
280
二俣
13:10
170
16:00
60
二俣
17:00
20
林道に出る
17:20
駐車地
犬振谷の左俣で「うばが岩」の探索をしていたため、時間がかかっています。
天候 曇りのち雨
過去天気図(気象庁) 2025年10月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
犬振谷へのアクセス路となる細ヶ谷林道は、途中からダートになるが、意外に路面はきれいで、普通の乗用車でもかなり奥まで入れる。ただ、ところどころ荒れている箇所があり、落石も多いので運転には慎重を要する。私自身、犬振谷直前に不安を感じる箇所があったため、犬振谷の800mほど手前の路肩に駐車した(走破性の高い車なら余裕で犬振谷まで入れると思う)。
コース状況/
危険箇所等
 奥越の名山の一つである姥ヶ岳は、山姥の住む「うばが岩」と呼ばれる洞穴が山名の由来と言われている。山頂付近にあるらしいが実際に訪問したという話を聞いたことのないこの謎の洞穴を、犬振谷の奥に探った記録。

・ 犬振谷の二俣までは基本的に穏やかだが、ところどころ現れるナメの美観が印象的。二俣以降については、左俣はほとんど目立った滝がなく概ね平凡である一方、右俣はナメや滝がそこそこ出てきて楽しめる。本来なら今回の回り方とは逆に、右俣を遡行し左俣を下降するのがまっとうかと思う(今回は左俣の岩場を探索するのが目的だったので、仕方ないけど)。なお、右俣も左俣もやや藪っぽさがつきまとう。
・ 滝場はどれも容易に直登or巻けるので、遡行はそれほど難しくない。今回ロープも使わなかったが、それなりに険しい箇所もあるので、一応携行したほうが良い。
・ ヌメリがやや強い印象だったので、フェルトソールがおすすめ。
姥ヶ岳の山名の由来になったといわれる、山姥が棲んでいた「うばが岩」は、山頂付近にあるとの伝説だけど、そんなのすぐ見つかるわけ…って地形図に岩記号あるやん! さっそく行ってみましょう。(クリックで拡大できます)
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姥ヶ岳の山名の由来になったといわれる、山姥が棲んでいた「うばが岩」は、山頂付近にあるとの伝説だけど、そんなのすぐ見つかるわけ…って地形図に岩記号あるやん! さっそく行ってみましょう。(クリックで拡大できます)
細ヶ谷林道はこんな奥地にある林道の割には路面がきれいで、貧弱4WDのフィットでもかなり奥まで入ることができた。(ただ、勾配が急な箇所は必ずと言っていいほどやや荒れ気味で、運転に慎重を要する)
細ヶ谷林道はこんな奥地にある林道の割には路面がきれいで、貧弱4WDのフィットでもかなり奥まで入ることができた。(ただ、勾配が急な箇所は必ずと言っていいほどやや荒れ気味で、運転に慎重を要する)
犬振谷は穏やかな平流が基調だが…
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犬振谷は穏やかな平流が基調だが…
ところどころ現れるナメが美しい。
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ところどころ現れるナメが美しい。
記録があまりないので何もない谷かと思っていたので、ナメが現れるたびに嬉しくなる。
記録があまりないので何もない谷かと思っていたので、ナメが現れるたびに嬉しくなる。
ナメを構成する岩石も、標高を上げるにしたがって、礫岩→チャート→京都北山のような黒光りする頁岩と、岩質が変化していって面白い。
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ナメを構成する岩石も、標高を上げるにしたがって、礫岩→チャート→京都北山のような黒光りする頁岩と、岩質が変化していって面白い。
いいねぇ
二俣。滝になって落ち合う右俣に興味をひかれるが、今日は左俣の岩記号(うばが岩?)を探ることが主目的なので、左俣に入ります。
二俣。滝になって落ち合う右俣に興味をひかれるが、今日は左俣の岩記号(うばが岩?)を探ることが主目的なので、左俣に入ります。
果たして左俣はほぼ何もない凡流。
果たして左俣はほぼ何もない凡流。
右岸側に植林が結構長く続く。昔から結構人が入っていた谷であるようだ。山姥伝説が生まれる素地があるかもしれない。
右岸側に植林が結構長く続く。昔から結構人が入っていた谷であるようだ。山姥伝説が生まれる素地があるかもしれない。
平々凡々とした谷が続き、だんだん藪っぽくさえなってきた。本当に岩場なんて出てくるのだろうか? と訝しみながら登っていくと…
平々凡々とした谷が続き、だんだん藪っぽくさえなってきた。本当に岩場なんて出てくるのだろうか? と訝しみながら登っていくと…
源頭が近づくにつれ、次第に両岸が迫り始め…
源頭が近づくにつれ、次第に両岸が迫り始め…
行く手に大きな岩場がちらつきはじめた。本当に出てきたな…。
行く手に大きな岩場がちらつきはじめた。本当に出てきたな…。
まだ地形図の岩記号の箇所には達していないが、既に谷の両岸に岩場が点在する状況。
まだ地形図の岩記号の箇所には達していないが、既に谷の両岸に岩場が点在する状況。
手近に現れた岩場の基部はひとめぐりして、チェックしながら登っていくが、山姥さんが住んでいそうな、岩穴らしきものはみつからない。
手近に現れた岩場の基部はひとめぐりして、チェックしながら登っていくが、山姥さんが住んでいそうな、岩穴らしきものはみつからない。
一つ気づいたのは、犬振谷左俣の源頭部は、谷自体の平凡さからは信じられないが、けっこう岩場だらけだということだ。一応、遠くの岩場もなるべく遠望してチェックしていくものの、さすがに全ての岩場を詳細に調べるのは手に余る。今日は地形図の岩記号の岩場に的を絞ろう。
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一つ気づいたのは、犬振谷左俣の源頭部は、谷自体の平凡さからは信じられないが、けっこう岩場だらけだということだ。一応、遠くの岩場もなるべく遠望してチェックしていくものの、さすがに全ての岩場を詳細に調べるのは手に余る。今日は地形図の岩記号の岩場に的を絞ろう。
入念に読図しつつ、ここかな、という小さなガレ谷を登っていくと…
入念に読図しつつ、ここかな、という小さなガレ谷を登っていくと…
ついに現れた、ひときわ巨大な岩峰。あれが地形図の岩記号の岩場だろう。
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ついに現れた、ひときわ巨大な岩峰。あれが地形図の岩記号の岩場だろう。
滑りやすい草付きに注意しながら、接近していく。(次第にガスりはじめており、写真が見にくくてすみません)
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滑りやすい草付きに注意しながら、接近していく。(次第にガスりはじめており、写真が見にくくてすみません)
ついに目的の岩場の基部に立った。岩記号の岩場は、本当に存在していたわけだ。そしてこれが本当に、伝説の山姥が住んでいたと言われる「うばが岩」なのだろうか?
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ついに目的の岩場の基部に立った。岩記号の岩場は、本当に存在していたわけだ。そしてこれが本当に、伝説の山姥が住んでいたと言われる「うばが岩」なのだろうか?
岩場の基部には細いバンドが走っており、滑落に注意しながら、そろそろと岩場の左右をめぐって調べていく。
岩場の基部には細いバンドが走っており、滑落に注意しながら、そろそろと岩場の左右をめぐって調べていく。
岩場はけっこうな規模だが、山姥が住んでいたと言われる洞窟らしきものはなかなか見つからない。
岩場はけっこうな規模だが、山姥が住んでいたと言われる洞窟らしきものはなかなか見つからない。
うーん、やっぱりここじゃないのかなぁ…。岩場に小さなルンゼが食い込んでおり、念のためルンゼを登ってみると…
うーん、やっぱりここじゃないのかなぁ…。岩場に小さなルンゼが食い込んでおり、念のためルンゼを登ってみると…
あれは、まさか…
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あれは、まさか…
ドキドキしながら、急なルンゼを登り詰め、洞窟らしきものに近づいていく。リアルにクマが居ついているとヤバいので、念のためコールを繰り返しながら、おそるおそる接近。(一瞬、穴が2つある!? と思ったが、写真の右側の穴はごく浅く、単なる割れ目のようなものだった)
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ドキドキしながら、急なルンゼを登り詰め、洞窟らしきものに近づいていく。リアルにクマが居ついているとヤバいので、念のためコールを繰り返しながら、おそるおそる接近。(一瞬、穴が2つある!? と思ったが、写真の右側の穴はごく浅く、単なる割れ目のようなものだった)
ルンゼをよじ登り、洞窟らしき開口部の真横に到達。まさかここが、山姥さんの棲み家か…? 高鳴る胸の鼓動を押さえながら、正面に回り込むと…(おじゃましま〜す…)
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ルンゼをよじ登り、洞窟らしき開口部の真横に到達。まさかここが、山姥さんの棲み家か…? 高鳴る胸の鼓動を押さえながら、正面に回り込むと…(おじゃましま〜す…)
うーーーん、微妙! 確かに洞穴ではあるが、穴はそれほど深くなく、奥行き5m程度。「入り口は小さいが、中は広い」という口承からすると、ちょっと奥行き不足な気がする…。
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うーーーん、微妙! 確かに洞穴ではあるが、穴はそれほど深くなく、奥行き5m程度。「入り口は小さいが、中は広い」という口承からすると、ちょっと奥行き不足な気がする…。
洞穴の外側上部を見上げたところ。「三間も四間もある大きな岩がガシンと組み合っている所」という口承にはぴったりの外見なのだが…。実際のところ、どうなんでしょう?
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洞穴の外側上部を見上げたところ。「三間も四間もある大きな岩がガシンと組み合っている所」という口承にはぴったりの外見なのだが…。実際のところ、どうなんでしょう?
その後も、現れる岩場をできるだけ調べつつ行くが、さきほどの洞穴以上のものは見つからなかった。
その後も、現れる岩場をできるだけ調べつつ行くが、さきほどの洞穴以上のものは見つからなかった。
対岸に気になる空間のある大岩を見つけたけど…でもあれはどっちかというと、ただの岩陰が岩屋のように見えているだけだろう。
対岸に気になる空間のある大岩を見つけたけど…でもあれはどっちかというと、ただの岩陰が岩屋のように見えているだけだろう。
そのまま左俣を詰めていく。小さな斜滝がいくつか連なっている箇所もあったが、その程度。
そのまま左俣を詰めていく。小さな斜滝がいくつか連なっている箇所もあったが、その程度。
水が切れると藪漕ぎ。姥ヶ岳の少し南の稜線に出たけど期待に反して踏み跡の類は全くなく、相変わらず藪漕ぎ。笹と灌木が絡み合ったタフな藪漕ぎを継続。
水が切れると藪漕ぎ。姥ヶ岳の少し南の稜線に出たけど期待に反して踏み跡の類は全くなく、相変わらず藪漕ぎ。笹と灌木が絡み合ったタフな藪漕ぎを継続。
ようやっと踏み跡に飛び出す。
ようやっと踏み跡に飛び出す。
姥ヶ岳山頂に到着。姥ヶ岳って「サンカヨウの故郷」だったの? 知らなかった…。
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姥ヶ岳山頂に到着。姥ヶ岳って「サンカヨウの故郷」だったの? 知らなかった…。
山頂は残念ながらガス。山頂から「うばが岩」の候補地になりうる岩場の観察をしたいと思っていたんだけど、これじゃ何も見えませんな。こういう探索は晴れた日にすべきだったな…。
山頂は残念ながらガス。山頂から「うばが岩」の候補地になりうる岩場の観察をしたいと思っていたんだけど、これじゃ何も見えませんな。こういう探索は晴れた日にすべきだったな…。
山頂でおにぎりを食べて休憩したのち、再び藪に突入し、今度は犬振谷の右俣を下降。すぐにナメが連続し始める。
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山頂でおにぎりを食べて休憩したのち、再び藪に突入し、今度は犬振谷の右俣を下降。すぐにナメが連続し始める。
平凡だった左俣と異なり、右俣はどうやら滝の多い谷である様子。ちょっと藪っぽいけど。
平凡だった左俣と異なり、右俣はどうやら滝の多い谷である様子。ちょっと藪っぽいけど。
二条5m。
三条5m。
7m。どんどん滝が出てくる。本来はこっちを登路にすべきだったな…。どの滝も簡単に巻けるけど。
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7m。どんどん滝が出てくる。本来はこっちを登路にすべきだったな…。どの滝も簡単に巻けるけど。
そしてこの谷最大の15m直瀑+3m段瀑。手前の倒木が邪魔ですみません。
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そしてこの谷最大の15m直瀑+3m段瀑。手前の倒木が邪魔ですみません。
15m直瀑のアップ。
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15m直瀑のアップ。
美しいナメも多い。
美しいナメも多い。
よきかな
しかし意外なのは、滝の多さに比べて両岸が全く穏やかなこと。滝がないのに両岸が岩場だらけだった左俣と真逆である。少なくともこの右俣には「うばが岩」はなさそうだ。
しかし意外なのは、滝の多さに比べて両岸が全く穏やかなこと。滝がないのに両岸が岩場だらけだった左俣と真逆である。少なくともこの右俣には「うばが岩」はなさそうだ。
ひときわ大きなナメが現れた、と思ったら、
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ひときわ大きなナメが現れた、と思ったら、
この3m滝で左俣に合流。二俣まで帰ってきました。
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この3m滝で左俣に合流。二俣まで帰ってきました。
本流の美しいけど滑りやすいナメを慎重に辿って、下山。
本流の美しいけど滑りやすいナメを慎重に辿って、下山。

感想

 姥ヶ岳は、北西に広がる平家平のブナや大トチ、そして春のオウレンやミズバショウの群生で知られる福井の名山である。
 姥ヶ岳という山名は、この山に伝わる山姥伝説に由来すると言われている。以下、「越前若狭の伝説」(杉原丈夫編、昭和45年刊)から関連する民話を抜粋。

〇 山うば(一)  (小沢)
 小沢のうばが岳の頂上近くにうばが岩という美しい岩のほら穴がある。入口は小さいが中は広い。ここに山うばが住んでいて、はたを織っていた。(以下略)

〇 山うば(二)  (小沢)
 西谷の小沢のうばが岳には、三間も四間もある大きな岩がガシンと組み合っている所がある。そこにうばが住んでいた。そのうばはときどき小沢の村へ出て来てオ(注・苧、からむしのこと)をうんだ。(以下略)

 以上の民話によると、どうやら姥ヶ岳の山頂のあたりに「うばが岩」と呼ばれていた洞穴があり、そこに山姥が住んでいたということらしい。それでこの山自体も「姥ヶ岳」と呼ばれていたようだ。
 この「うばが岩」のことが気になり、もしかして姥ヶ岳の人気スポットになってたりして?と思ってネットでいろいろと検索してみたが、全く情報は出てこなかった。どうやら、少なくとも近年は、この「うばが岩」を実際に見た人はいないらしい。もちろん、この伝説自体が里人たちの想像力が生み出した全くのフィクションで、「うばが岩」なるものも実際には存在しない可能性もある。しかし、上記の口承の中で、「入り口は小さいが中は広い」とか、「三間も四間もある大きな岩がガシンと組み合った所がある」とか、描写が妙に具体的なのが実に気になる。実際に山姥が住んでいたかどうかは別にして、そのような伝説を生み出す素地になる場所、つまり「うばが岩」と呼ばれる岩場(洞穴)自体は実在している可能性が高いのではないか、そう考えた。
 それでは、この「うばが岩」は一体どこにあるのだろう?
 ヒントはいくつかある。まず、上記で引用した民話において、姥ヶ岳はすべて「小沢のうばが岳」として語られている。ここで言う小沢は、姥ヶ岳の北東側、笹生川支流の小沢川沿いにあった小沢集落(笹生ダムによる水没で廃村)のことであり、往時の人々にとっては、まず姥ヶ岳は「小沢の山」という認識があったらしい。物語の中に登場する山姥も、(上記の引用では長いので省略してしまったが)ときどき小沢の村に出て来ては牛を盗んだり、はたまた村人の機織りやあずき研ぎを手伝ったりと、もっぱら小沢を活動範囲としている。つまり、山姥の棲み家である「うばが岩」は、山姥が小沢に降りてきやすい(と、民話の語り部である小沢の村人たちが想像しやすい)小沢側の斜面(姥ヶ岳の東側の斜面)に存在していると考えるのが自然なように感じる。
 さらに、上記の民話では、(これも引用では省略してしまった部分だが)「うばが岩」が常にクマと絡めて語られていることも興味深い。クマが「うばが岩」の門番をしていたり、小沢の村人たちがクマ狩りをしているとクマが「うばが岩」の中に隠れ、山姥がそれをたすきで縛って外に出してくれたり、といった具合である。もしかしたら、「うばが岩」は、山姥の棲み家であると同時に、小沢の村人たちのクマ狩りの対象となるクマの巣穴でもあったのかもしれない(このあたり、美濃徳山の「ベロリ穴」の伝説ともオーバーラップして興味深い)。このことからも、やはり「うばが岩」の所在地は、小沢のクマ猟師たちの縄張りである姥ヶ岳の小沢側斜面(東側斜面)であると考えられないだろうか。
 さて、「うばが岩」が姥ヶ岳の大体どちら側の斜面にあるのかはなんとなく絞られてきた?気がするが、しかし対象エリアは未だに広大であり、その中から一つの岩場を探し出すのは大変な作業…と思いきや、意外にあっさりと候補地が見つかってしまった。2万5千分の1地形図を見ると、姥ヶ岳の東側の山頂直下に、一つの岩記号がばっちり描かれていたのである。これじゃね!?
 ということで、今回の山行。姥ヶ岳の東側、犬振谷左俣の源頭付近にある岩記号を目指す。行ったことのない犬振谷の沢登りも楽しめて、一石二鳥である。

 犬振谷は遡行記録の少ない谷で、「越の谷」にも掲載されておらず、ネット上ではベルグラ山の会の会員の方の記録があるくらいである(その記録もごくあっさりした内容であるため、どんな谷なのかほんの少ししか分からないところが、また嬉しい)。こんな谷なので、ほとんど何もない凡谷なのかもしれないと思っていた。実際、大半は穏やかな谷なのだが、ところどころで美しいナメが現れ、その予想外の美観が印象的な谷だった。特に右俣は滝とナメがそこそこ出てきて、沢登り的にも普通に楽しいです。藪っぽいのはご愛敬。ちなみに左俣は平凡。
 沢登りの話はこれくらいにして、肝心の「うばが岩」探索はどうだったのか。驚いたのが、犬振谷の左俣の源頭部は、岩記号どころか、岩記号以外の場所も岩だらけだったことである。右俣のほうは両岸が穏やかで岩場が全く見当たらなかったことと比べても、この左俣の岩っぽさは特異的である。これなら山姥の洞穴伝説が生まれてもおかしくはないし、クマ狩りの対象になるクマ穴にも事欠かなかっただろう。伝説の素地としては十分である。
 地形図の岩記号の箇所にも、実際にピンポイントで巨大な岩場が存在していた。そして、その岩場に食い込む小さなルンゼの奥で、ついに洞穴らしきものを発見。実際には奥行き5m程度で、上記の民話で言う「入口は小さいが、中は広い」からするとやや奥行き不足で残念だったが、もう一方の民話の「三間も四間もある大きな岩がガシンと組み合っている」という描写に関してはいい線行っているように見え、雰囲気は十分だった(少なくとも、冬はリアルにクマが冬眠に使っていそう)。
 今回見つけた洞穴が伝説の「うばが岩」なのか、それは分からない。むしろ、これくらいの規模の穴であれば、犬振谷左俣に点在する岩場を探せば他にも2、3は見つかりそうであり、それらの穴を集合的に「うばが岩」と称していたのかもしれない。
 しかしやはり、民話の描写に完璧に合致するような真の「美しい岩のほら穴」が、この山のどこかにまだ眠っていると夢見てみたい気もする。今回の山行で、犬振谷がなかなか独特な雰囲気の面白い谷だということも分かったし、近隣の他の谷にも今後入ってみようと思う。もちろん、「うばが岩」の再探索も兼ねて。

※ 姥ヶ岳の「うばが岩」の所在をご存じの方、大真面目に無駄な探索を行ってしまったhillwandererを小馬鹿にしつつ是非情報をお寄せください! または、今回の記録で引用したもの以外の伝説や口承に関する情報提供もお待ちしております。

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