小辺路(高野道):逆打ち、熊野本宮⇒野迫川


- GPS
- 16:16
- 距離
- 35.0km
- 登り
- 3,727m
- 下り
- 3,155m
コースタイム
- 山行
- 5:29
- 休憩
- 0:10
- 合計
- 5:39
- 山行
- 4:27
- 休憩
- 0:24
- 合計
- 4:51
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
2日目:十津川温泉バスターミナル→(十津川村営バス)→西中 帰り:大股→(野迫川村営バス)→高野山駅→最寄り駅 |
コース状況/ 危険箇所等 |
● 危険箇所はとくになし ● 伯母子岳分岐(南側)と伯母子峠のあいだで崩落が発生しているため、小辺路本道は通行止めになっています。そのため熊野本宮側より登った場合、伯母子岳分岐(南側)から伯母子岳へ直登するルートしかありません。大変な急登です |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
Tシャツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
日よけ帽子
靴
ザック
昼ご飯
行動食
非常食
飲料
コンパス
計画書
ヘッドランプ
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
常備薬
日焼け止め
保険証
携帯
サングラス
タオル
カメラ
|
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感想
(長文です。ご容赦ください)
熊野古道小辺路を歩いてきました。もっとも、その言い方は正確ではなく、今回は熊野本宮側から高野山方面へ歩いたので、その場合は「高野道」とか「高野街道」というのだそうです。「小辺路」という場合は高野山側から熊野本宮へ向かって歩くときの呼称となります。が、ここでは小辺路の語を使わせてもらいます。
前泊せず、家を朝一に出発して現地入りし、午後から歩き出すというプランを立てたのは、スペック的には六甲全山縦走より大したことないと思われたから。六甲全縦は「44.6キロ・登り3123メートル」を1日で歩くのに比べて、今回の小辺路山行は「41.0キロ・登り3380メートル」(山行計画時)を3日に分けて歩きます。ということからすると、スタートが遅くなる初日さえクリアすれば、とくに問題ないだろうと考えたわけです。
しかし、いざ実際には想定外の状況が待ってました。なんと、予定していた3日が3日とも、猛暑日となってしまったのです。そうなると、とりわけ午後スタートの初日は最高気温のなかで歩き始めることとなり、話が違ってきます。結果からいうと、えらい目に遭ってしまいました。
(1日目)
プランから40分遅れの午後1時頃、道の駅奥熊野ほんぐうを出発。まず、山への取り付き口になる八木尾まで1キロほど平地を行きます。が、八木尾に到達した時点ですでに汗でぐしょ濡れ、滝汗状態です。こんなんでほんとうに果無越えできるのか、と不安が湧いてきます。果無峠まで5.4キロ。けっこうあります。金剛山を登るより長い距離です。そもそも、猛暑のなかを山に登るなど、正気の沙汰ではありません。
登り出すと、案の定、さらに汗が噴き出してきます。もはや滝汗を超えてナイアガラ汗。歩様もまったくはかどりません。山道の傾斜自体はめちゃくちゃ急登というわけではないのに、ひどくヘビーに感じます。スマートウォッチの心拍数も爆上がり。平常時より、おそらく2グレードか3グレードは難易度が上がっていると思われます。
加えて、そのうち、うっすらとではあるものの、だんだん吐き気も感じ始めました。これは・・・熱中症になり始めている!? 非常によくない展開になりつつある感じがしたので、いったん登坂中止。休憩をとりながらタクティクスを練り直します。
とにかく、いつものように登っては熱中症になること必定。下山が夜になってもかまわないので、とにかくゆっくり登ることにする、30分ごとに休憩する、喉の渇きを覚えないうちからアクエリアスを継続的に摂取する、というルールを即席で考えて、それで様子を見ることに。ダメなら無理せず下山しよう、とも。
仕切り直して登り始めると、アクエリアスがどんどん減っていきます。が、仕方ありません。それでも新タクティクスは奏功しているようで、吐き気も収まり、スローペースながら登り続けられるようになりました。それにしても暑い、暑すぎる。
いつも金剛山を登っているときは、だいたい標高800を超えれば涼しくなるのに、この日の果無越えは全然涼しくなりません。異常です。もはや無心で足を動かし続けます。「無心で」といえば聞こえはいいですが、実際には「何も考えられない」というのが偽らざるところ。メトロノームのように一定のリズムでひたすら足を動かし、できるだけ体内での熱産生を抑えて登るのみです。
峠まで何度もまだか、まだかと思うも、なかなか到達しません。すごく遠い。幸い、道そのものは非常に歩きよい、よく整備された道です。傾斜も急登というほどではありません。そのおかげでメトロノームになって登り続けられました。ほんとうに修行している感じでした。
八木尾から3時間半かかってようやく果無峠に到達。もうヘロヘロ。1本目のアクエリアスはとっくに空で、2本目のエビアンも7割ぐらいしか残なし。時刻はすでに17時前。結局、一番暑い時間帯にずっと辛い登りを続けたわけで、俺はいったい何をしているんだ?と、ふと独り苦笑。
峠を過ぎればあとは下りなので、ずいぶん楽になりました。ただ、まだまだ先があるので、こんどは膝痛と足首痛に気をつけて、やはりゆっくり下ります。一応、膝にサポーターを装着しているので飛ばさなければ大丈夫かと思います。
天空の郷として名高い果無集落も、ゆっくり見学する気持ちの余裕がなく、ほとんど素通り(あとからすれば勿体ないことをしてしまった)。
18時半頃、ボロボロになって十津川温泉の平谷荘さんに到着。すぐ温泉に入らせていただき、すぐ就寝→爆睡w。平谷荘、大変いい宿でした。翌朝、「山を歩かれるんでしたら」と塩分補給のアメなどを詰め合わせた袋をくださいました。その心づくしが嬉しいですね。こんどはまともな状態で訪れたいです笑。
(2日目)
2日目も猛暑予想。なるだけ体力を温存したいので、登り口の西中までは十津川村営バスを利用することに。これで約8キロ稼げます。
10時過ぎ、西中から登り始めます。西中から三浦峠まで7.4キロ。昨日の果無越えより2キロ距離が伸びています。やれやれ。それでも今日は朝からなので、気温がまだ上がり切っておらず、昨日と比べるとずいぶん楽です。コンディションというのはえらいものだな、と改めて痛感します。
順調に高度を上げていきますが、やはり猛暑日予想ではあるので無理あるいは頑張りは禁物と考え、昨日同様、ゆっくりと、30分ごとに休憩しながら、体内の熱産生をできるだけ抑えるようにして登っていきます。朝出発というのは大きく、矢倉観音堂、出店跡、古矢倉と、途中のポイントポイントに案外早く到達します。いい感じです。やっぱり朝に出発するとだいぶん違いますね。気持ちのゆとりもありますし。
ここまでの小辺路は総じて登山道が一本調子で、同じくらいの傾斜が延々と続きます。そのため、メトロノーム登行法には向いていますが、同じくらいのしんどさが延々と続くというふうにも言え、そのあたりが修行っぽいのです。
小辺路を歩いている人は中辺路に比べるとずっと少なく、この日もあまり人と出会いません。古矢倉を過ぎてようやく西洋人の2人組とすれ違い。その際、どこから来たのか尋ねたら、「ジャーマニー」というお返事。ドイツの人にはこの暑さは辛いやろなぁ。「暑いでしょ?」と聞くと、信じられない暑さだといってました。そして、「頂上の向こう側に泉が湧いているから冷たい水を補給できるよ」と教えてくれました。ほう。
なんだかんだいってるうちに、三浦峠に意外にスムーズに到達。峠まで登ると、向こう側の谷から風が吹き上がってきます。が、ふつう谷風は涼しいものなのに、この日の三浦峠では熱風が! 三浦峠も標高1000を超えているというのに、ありえない状況です。なお、三浦峠にはトイレもありました。
峠からは、まだまだ遥か遠くに見える三浦口を目指して下り始めます。あれほど遠くに見えたものの、1時間半ほどと案外早く無事下山することができました。三浦口のバス停まで農家民宿「山本」さんに迎えにきていただき、投宿しました。
山本さんでは台湾からの女性2人組と同宿となりました。しばし歓談。彼女らは高野山から本宮大社を目指しているとのこと。すでに中辺路を全路踏破したあとで、現在、引き続き小辺路に挑んでいる最中とのことでした。「中辺路と比べると、小辺路は厳しすぎる」といってました。翌朝、「これどうぞ」と高山茶のティーバッグをおみやげにくれました。こちらからは差し上げるものが何もなく、もらいっぱで申し訳なかったです。
(3日目)
いよいよ、この山行の最終日。山本さんのご厚意で登山口の三田谷まで送っていただき、昨日よりさらに早く7時半から登山開始。というのは、この日はさらに登りの距離が長くなり、伯母子岳山頂まで8.5キロ。予想所要時間4時間25分という長丁場なのです(やはり南側からのほうが距離が長い)。これは金剛山の青崩道の2倍に相当するボリュームで、登り切れるのかちょっと心配でもあり、で。
ただ、より精密に地形図を見ると、途中の水ヶ元茶屋跡までの傾斜が急で、その先は緩やかになっているので、距離は長いけれども、まだ体力のある午前中に水ヶ元茶屋跡まで頑張れば何とかなりそうです。
今日も例のタクティクスを守って登っていきます。さらに早い時間帯(つまり涼しい)ということもあり、わりとふつうに登っていけます。登りのポイントとなる水ヶ元茶屋跡に到達し、一安心して休憩していたら、後続の女性3人組が追いついてきました。またしても外国人です。小辺路を歩く人は少なく、出会っても外国人が多いですね。
どこから来たのか尋ねると、台湾とのこと。おや、台湾からの人多い? 彼女らはしばらく休憩する様子なので先に出発させてもらいました。
上西家跡を過ぎ、だいぶん登ったと思っていたら、伯母子岳分岐のところで通行止めが出てきました。伯母子峠へ向かう小辺路本来の道は崩落しているとのことで、ここから小辺路を離れ、伯母子岳山頂へ直登する迂回路になります。
ところが! この直登迂回路が厳しいのなんのって。出だしからすごい急登で、金剛山3大急登といわれるサネ尾ぐらいの急坂がずっと続くのです。もう、ほとんど心が折れそう。延々と登ってきて疲れた最後にこんな試練が待ち受けていたとは、ホントに修行の道だわ。
しかも、急登を登り続けて、ようやくピークらしきものが見えてきて、「やっと着いたか?」と思っても、それはニセピークでまだ先がある、ということを3度ほども繰り返し、いい加減カンベンしてくれと願っていたら、ついに、ようやく伯母子岳山頂に到達しました。この迂回路はホントにきつかった。
きついだけでなく、この迂回路は別の問題もあると思いました。ピンクテープは頻繁に貼ってくれているのですが、小辺路の迂回路としての道標がほとんどないのです。しかも、もともとあまり人が通らなかったルートらしく、踏み跡が曖昧で、ガスったりしたときは道迷いの可能性があると感じました。とくに下りの場合、気づかぬうちにまったく違う方向の谷へ下りて行ってしまう恐れがあります(事実、一昨年でしたか、アメリカ人の女性がこのあたりで行方不明になっています)。
実際、ピンテがどちらの方向にもあって、私自身戸惑う場面がありました。正しい方向を示す矢印の入った道標が必要と感じました。このエリアはどこの行政が管轄しているのか知りませんが、この迂回路は長期間になりそうなので、早急に道標の充実を図るべきかと(あとで十津川村とわかったので、十津川村にメールを送りました)。
閑話休題。伯母子岳山頂は眺望360度で見事でしたが、いかんせん虫が多すぎで、とてもゆっくりしておられず、早々に下ることに。時間的に山頂でお昼ご飯かなと思ってましたが、とてもムリでした。どうやら一定の効果はありそうなオニヤンマ君も、あれほど虫が多くなると、すべてを撃退するのは無理というもので。
お昼のお弁当を開くことができたのは、結局、桧峠まで下りてから。お弁当もまた、山本さんの奥様の心のこもった、ありがたいものでした。山本さんも素晴らしい宿でした。
桧峠を過ぎれば、ゴールが見えてきた感じです。萱小屋跡を過ぎ、ほどなく大股に無事下山することができました。お疲れさまでした、自分。
帰りのバス待ちで30分ほどしたら、途中で出会った台湾からの女性3人組も下山してきました。互いに健闘を称え合いました。私は帰りのバスを、彼女らは今夜の宿の迎えの車を待っているあいだ歓談。彼女らもまた、すでに中辺路を踏破したあと小辺路を歩いているのだそう。昨晩も台湾からの人と同宿で、やはり中辺路→小辺路を歩いていたよと教えてあげたら嬉しそうでした。台湾では熊野古道ブームが来ているのでしょうか?
彼女らは日本には2週間ほど滞在するようです。「大学生ですか?」と尋ねたら、「違う違う、私は38歳です(自分から言った)」という返事にビックリ! 3人ともすごく若く見え、てっきり学生かと思ってました。
すると、向こうもこちらに「何歳ですか?」と聞いてくるので、「何歳だと思います?」と聞き返したら、「45歳ぐらいかな」といわれました。正解(63歳)を教えたら、「信じられない!」と返されました(これが言いたかったw)。
宿の送迎車がきて彼女らが去り、もうあとはバスを待つだけと思っていたら、最後の最後にまた出会いが。高野山からめちゃ重そうな荷を背負った男性が到着しました。聞くと15キロもあるそうで、テン泊対応装備のようです。本宮大社を目指しているとのこと(那智大社だったか?)。
この方、てっきり今日は大股泊で、やはり宿泊場所へのバス待ちかと思っていたら、なんと、これから伯母子峠まで登るのだといいます。すごいバイタリティです。彼の旅の成就を祈らないではいられませんでした。お気をつけて。
ということで、この山行は良きこと辛いこと織り交ぜて、中身ギッシリの山行になりました。猛暑のなか逆打ちで、とにもかくにも小辺路核心部を踏破できたのは、自分には大きな記念となりました(だいぶんバスを使ったけどね)。スペックだけでは測れないものがあり、私的には六甲全縦よりはるかに重いものがありました(気象の問題が大きかったと思いますが)。
ともあれ、いい旅ができました。小辺路あるいは高野道に合掌です。
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