男体山


- GPS
- 07:13
- 距離
- 9.4km
- 登り
- 1,237m
- 下り
- 1,254m
コースタイム
- 山行
- 5:11
- 休憩
- 1:52
- 合計
- 7:03
天候 | 高曇 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
名古屋6/5→6/6宇都宮駅 深夜バス5時着(30分前着)8500円、独立3座 宇都宮駅→日光駅 JR 770円 日光駅→二荒山神社中宮祠 路線バス 1400円 ゆとりろ日光(泊) 4050円 6/7中禅寺湖郵便局→湯元温泉 バス960円 日光白根山ロープウェイ 片道1250円 ロープウェイ→鎌田 バス997円 鎌田→沼田駅 バス1749円 沼田駅→高崎駅 JR770円 高崎駅6/7→名古屋6/8 深夜バス8300円 |
コース状況/ 危険箇所等 |
雪なし |
その他周辺情報 | 下山後宿泊 ゆとりろ日光 ドミトリー 下山メシ トンカツ浅井 ヒレカツ定食1500円絶品 |
写真
感想
百名山への序章:宇都宮、夜明け前の静寂
深夜バスが宇都宮駅に滑り込む。午前5時。夜明け前のひんやりとした空気が肌を刺す。百名山ハントの旅、栃木編。眠れぬまま揺られたバスから降り立ち、体は宙に浮いているかのように覚束ない。「果たして、この状態で大丈夫なのか」自問自答しながら、重いザックを担いで「なか卯」へと向かう。駅周辺は飲み屋街の喧騒。夜の闇に、まだ酔客が数人。こんな登山ルックの自分が、無用な絡みを避けるよう、足早に歩を進めた。
なか卯の店内にも、酒の匂いをまとう先客が数名。ささっと朝定食をかきこみ、来た道とは異なるルートで駅へと戻る。宇都宮駅から日光駅までは電車。通勤時間前の逆方向。車内はガラガラ。僕はいつしか深い眠りに落ち、気づけば日光駅に到着していた。
男体山への道:いろは坂と試練の石段
日光駅から路線バスに乗り換え、「いろは坂」をグネグネと登っていく。車窓からの景色は次第に山深く、身体が揺れるたびに吐き気がこみ上げる。辛うじて登山口である二荒山神社中宮祠でバスを降りる。平日にもかかわらず、多くの登山客で賑わっている。登山届を提出し、入山料1,000円を支払う。目の前には、見上げるほどの石段が、ただそびえ立っていた。
石段を登り切ると、朝の澄んだ空気に包まれた森林が、僕を迎え入れてくれた。3合目からはしばらく緩やかな車道を歩く。傾斜は緩やかで、束の間の休息。関西から来たというご夫婦と出会い、しばらく山の話で意気投合する。山ではあまり人と話さない僕だが、山という共通の話題が、距離を縮めた。定期的に夫婦で山に登っているという彼らの姿に、僕は深い尊敬の念を抱いた。山の話をしているうち、あっという間に4合目に到着した。
忍耐の先に:絶景と、そして訪れる疲弊
4合目からは車道を離れ、再び本格的な登山道へと入る。草付きの荒れた道は、これまでの緩やかさとは打って変わって、急峻な傾斜が続く。5合目で長めの休憩を取り、宇都宮駅で買っておいたおにぎりで空腹を満たす。ここで関西のご夫婦とはお別れし、先に行ってもらった。
ここからも、永遠とも思える急登が続いた。前夜の睡眠不足と相まって、眠気が襲いかかる。足元がおぼつかない中、転倒しないよう慎重に、ゆっくりと一歩ずつ9合目を目指す。このあたりでようやく傾斜が緩やかになり、「もう終わりか」と期待したのも束の間、森林限界を越えると、前方に赤い斜面が遥か遠くまで続いているのが見えて、思わず落胆した。
しかし、振り返ると中禅寺湖が眼下に広がり、周囲の山々が雄大な姿を見せる。その絶景に、心は一気に高揚し、足取りが軽くなるのが不思議だった。山頂手前で、先ほど別れた関西のご夫婦に追いついた。山頂は多くの登山客で賑わい、記念撮影の順番待ちができていた。週末ともなれば、さらに混雑するのだろう。
山頂からの眺望をしばらく満喫し、短い休憩を取って下山を開始した。登りの苦労が嘘のように、下りは意外なほどあっけなく、無事に登山口へと戻ることができた。
温泉の安堵、そして忍び寄る悪夢
二荒山神社で登頂の証である山バッジを購入し、歩いてすぐの宿へと向かった。このあたりの宿は高価なため、僕は格安のドミトリー(大部屋2段ベッドタイプ)を予約していた。受付を済ませ、まずは温泉で今日の疲れを洗い流す。さっぱりしたところで洗濯を済ませ、その間に中禅寺湖周辺を散策した。明日の朝食を調達し、宿に戻って乾燥機に洗濯物を入れた。
晩飯時、あたりには飲食店が少なく、ようやく見つけた店も混雑していて入れそうにない。仕方なく、有名な華厳の滝を見に行くついでに店を探すことにした。誰もいない夜の華厳の滝は、昼間とは違う、ただ静かで神秘的な雰囲気を醸し出していた。
宿に戻る道すがら、先ほど混雑していた店を覗くと、すんなり座ることができた。注文したヒレカツ定食は、ボリューム満点で肉も絶品。思いがけない当たりだった。店の人とローカルな話で盛り上がり、ホテルに戻って再び温泉に浸かる。ドリンクコーナーでしばらくまったりした後、ベッドに戻った。
しかし、ここから悲劇が始まった。近くのベッドから聞こえてくる爆音のいびきで、僕はまったく寝ることができなかった。耳栓をしても効果はなく、朝方になって、ようやくわずかな眠りを得られただけだった。睡眠不足で、まるで過労死寸前のようだ。
男体山の激登りの疲労と、この夜の悪夢。果たして僕は、この状態で無事に2日目の山行へと向かえるのだろうか。
男体山が深田久弥の「日本百名山」に選ばれた理由は、彼の百名山の選定基準に合致しているためです。深田久弥は、百名山を選ぶ際に以下の3つの基準を重視しました。
* 山の品格(山容の美しさ、存在感):
* 男体山は、成層火山特有の円錐形の美しい山容をしており、中禅寺湖畔から眺めるその姿は非常に雄大で、まさに「絵になる山」として、多くの人々に感嘆されてきました。
* 周囲に高い山が少ない独立峰に近い形でそびえ立っているため、どこから見てもその存在感が際立ち、圧倒的な迫力を持っています。この端正で雄大な姿が、深田久弥が言う「山の品格」を満たしていました。
* 山の歴史(信仰、文化との関わり):
* 男体山は、古くから山岳信仰の対象として崇められてきた歴史が非常に深く、日光二荒山神社の御神体とされています。
* 修験道の聖地としても知られ、現在も「男体山登拝祭」が催されるなど、信仰の山としての重要性が現代に引き継がれています。このように、人間との関わりが深く、歴史の中で崇拝されてきた点は、百名山に選ばれる上で重要な要素でした。
* 個性のある山(特徴的な地形、眺望、固有の文化など):
* 男体山は、山頂から中禅寺湖や日光市街、そして遠くの山々まで見渡せる360度の素晴らしい大パノラマが広がります。これは、登山者にとって大きな魅力であり、他の山にはない個性的な眺望を提供します。
* 登山道は比較的シンプルで直登が中心ですが、各合目ごとに変化があり、特に山頂付近の火山岩帯など、その地形も特徴的です。
深田久弥は、これらの基準に加え、自らが実際に登山し、その山の魅力を肌で感じた上で選定を行っています。男体山は、その雄大な姿、深い歴史と信仰、そして山頂からの絶景という点で、深田久弥の求める「百名山」の条件を十分に満たしていたと言えるでしょう。
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