朝日山(または赤鞍ヶ岳)と棚ノ入山(たんのいりやま)の山名板を再び付けに行く


- GPS
- 09:46
- 距離
- 5.6km
- 登り
- 773m
- 下り
- 788m
コースタイム
- 山行
- 6:37
- 休憩
- 2:53
- 合計
- 9:30
天候 | 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2025年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
帰り 中央道上野原インターチェンジは、全てETC専用入口に変わっていたので、ETC車載器を装備していない我バイクは、国道20号線をひたすら東へと走った。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
林道終点から棚ノ入(サンショ平)までは、上部の鹿柵を終えてから、尾根道の踏み跡が極端に薄くなるので道迷いに注意。所々に案内板とピンク▪黄色のテープを付けてあるので、多少は目安になると思う。 その他の道は一般登山道なので、注意して歩けば道迷いの心配はほぼないと思われる。 ※林道終点から棚ノ入(サンショ平)手前200mぐらいの所に、新しい熊の糞が落ちていたので要注意。 |
写真
装備
個人装備 |
ハイキング装備
ビバーク用装備
虫除け用品
熊除け用品
十分な食糧
飲料2.25L
浄水ボトル
救急医療セット
整備道具
トラロープ
山名板
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感想
バイクのチョークボタンを引っ張ってエンジンを掛けて暫く暖気してから、二段階でチョークボタンを戻して、アイドリングが安定したのを確認してから、ようやくサイドスタンドを足で納め、ギアを一速に落としてアクセルを少し開けつつ、クラッチレバーを少しづつ放し帰路に就こうと動き出した。
歩くぐらいのスピードでゆっくりと荒れた林道を下りはじめてさっそく、上向きで先が尖っている石が走行ライン上に転がっているのを発見した。その石を避けるべく、ハンドル操作と前後のブレーキとかで、なんとか石をかわそうとしたが、上手くいかずバランスを崩して右側に倒れてしまった。
はじめは簡単に起こせると思い、ザックを背負ったまま、ヘルメットも被ったままだったが、しだいに、「そうは問屋が卸さない」という事に気付いて焦り始めた。なんとかバイクを起こそうとして四苦八苦していると顔から汗が噴き出してきた。これはいかんと思い、ヘルメットを脱ぎ、ザックを下ろしてジャケットの前を開けて一休みし、とりあえずは冷静になって現状を把握する事にした。
一息入れて落ち着くと、ガソリンの匂いが鼻を突いた。これはヤバいと燃料コックをオフにして、ハンドルを地面と垂直にして、タンクの給油口からの漏れをとりあえず止めた。タバコを辞めて二十数年になるが、まずは一服なんてやっていたら偉い目に会っていたところだ。ほんと想像するだに恐ろしい。
しかし、今までバイクを起こすのにこんな苦労をした事がなかったので、どうした事かと考えてみた。数年前にバイクを倒した時には、何も考えずにサッと起こしたのだが、やはり加齢に寄る筋力の低下と、下山したばかりで足腰の筋肉が疲労しきっている事が大きな要因なのだろうと思われた。
リアキャリアが付いていないので、タンデムグリップもなく、リアをがっしりホールドして持ち上げる事もできない。少し休んでから、腰を屈めてなんとか手がかりを掴んで、一気に持ち上げようとしたが、ここで本腰を入れると、腰が砕けて動けなくなるなと察したので、チカラワザではなく頭を使って乗り切らなければと悟った。
相変わらず周りは真っ暗闇なのだが、もうそんな事を恐がっている暇もない感じになっている。現在地では携帯電話の電波は届かないので、誰とも通信する事ができない。「コンパスの下山届け」と、家人にいつも出している「無事下山メール」をそろそろ送らなければとの考えが頭をよぎった。
焦ってはだめだと自分に言い聞かせ、ちょっと立ち止まって考えてみた。そうしたら、ふとアイデアが浮かんだ。それは、リアタイヤを踏みつけて揺らし、反動をつけた勢いで起こすというものだったが、実行してみると簡単にできてしまった。マフラーがテコの支点の代わりになったからだろうが、あまりにも呆気なくできたので拍子抜けだった。
損傷箇所がないか、落とし物はないかを確認してから、燃料コックをオンにしてチョークボタンを引っ張ってからセルボタンを押した。心配をよそに一発でエンジンに火が入ったのでホッとした。そして再び荒れた林道を慎重に下った。
走り始めてから少しして、前輪に違和感を覚えた。100mぐらい下った所に橋があったので、ギアをニュートラルに入れて止まった。そして、エンジンを切らずに、ニュートラルに入れたままバイクを降りようとしたら、バイクが前にずれて左側に倒れてしまった。下り坂では、バイクが動かないようにギアを一速に入れたままで、エンジンを切って降りるという基本を守らずに、またやらかしてしまった。しばし呆然としたが、自分のアホさ加減に自分が嫌になった。
今度倒れたのはマフラーとは反対側で、倒れ方がより深い。ちょっと様子を見たが、長期戦になる事が確実だったので、燃料コックを再度オフにし、その辺に転がっていた木をグリップエンドにかましてハンドル位置を高くして、給油口からのガソリン漏れを防いだ。
とりあえず、「コンパスの下山届け」と「無事下山メール」を出してしまえば、遭難騒ぎにはならないので、電波が届く所まで下山して連絡を完了し、再びバイクの所に戻ってゆっくり時間をかけて対処する計画を立てた。
さっそく、作業ライトをバイクの傍に置いたままで、飲食や休憩は後回しにして一時下山を開始した。獣除けのためと、万が一にも車や人がぶつからないようにという配慮で作業ライトを点灯させたまま置いてきた。自分はというと、ヘッドランプを頭に付けて、ハンドライトを左手にスマホを右手に持って、電波状況を見ながらゆっくり下った。盗む輩がいる筈もないとは思っていたが、いちおう貴重品はポケットに入れて持ってきた。
結局電波は、防獣ゲートを越えるまで届かなかった。防獣ゲートを越えて集落に寄って30mぐらいしたら、いきなりメールの着信が始まった。「コンパス」からと家人からとが届いていたので、それぞれにメールをした。家人には、バイクが倒れて起こすのに苦労しているだけで、怪我をして動けないわけではないので心配しないようにというメールを送った。ツェルトやカイロのビバーク装備もあるし、パン・アルファ米・ビスコ・柿の種・氷砂糖・塩・粉末コーヒー・粉末スポドリなどの十分な食料と浄水ボトルもあるので、飢えと渇きの心配もないからとメールに書いた。やはり食べ物の事を心配していたので、大丈夫だという事を伝えた。疲れて動けなくなったら山中で寝て、翌朝ぼちぼちやるので寝ててくれとも書いた。
電波の届かない所に戻る旨のメールを最後に送って、林道を再び戻った。しかし、帰りは、行けども行けどもなかなかバイクの所まで辿り着けなくて閉口した。下る時の倍以上の時間が掛かった気がする。とりあえず、大騒ぎの心配から解放されて気が緩んだのと、晩飯を食っていないのでエネルギーが切れかかっているのと、バイクでは分からなかったが林道の傾斜もけっこうあったりするのと等いろいろあってそう感じたのかもしれない。
バイクの所にやっと戻ってから、何はともあれ晩飯にした。まずは30cmぐらいの細いバゲットをインスタントコーヒーに浸し柔らかくして食べた。それからブドウ糖菓子と柿の種を食べ、スポドリを飲んだ。太腿の筋肉がピクピクしていたので、ツムラの68番薬も飲んだ。食事を終えて地べたに足を放り出し、しばらく休んでいたら鵺(ぬえ)が鳴いている事に気が付いた。今年の1月に鵺の本体(トラツグミ)と遊んでいるので、あの鳴き声が不気味に感じなくなった。ヒィーヒョーと物悲しくはあるが、可愛らしい姿の鳥である。食事の後にすぐ動くと胃もたれを起こすので、もう少しゆっくりしようと思い周りのライトを消してみた。東京では見られない綺麗な星空が見られて、少し心が洗われるような気がした。
さて、いつまでも星空を見上げて現実逃避していたいところだが、バイクを起こさなければならないという課題があるので、重い腰を上げた。バイク引き起こし計画は、直径5cmぐらいの木をたくさん集めてきて片側に積んでいき、徐々に起こすというものだ。気の長い話だが、腰に爆弾を抱えているので無理は出来ない。さっそくヘッドランプを頭に付け、右手にノコギリを持って柴刈りに出かけバイクの周りに十数本を集めて置いた。この時、重要な事にやっと気付いた。バイクを起こす者は坂の上側に立ち、起こされるバイクは、両輪を坂の下側に向けるという事を。
それでさっそくハンドルを少しづつ引っ張って、道に対してバイクを十字の位置に置いた。これで起こすべき角度がかなり浅くなったので、集めてきた中で一番太くて堅い木をフレームのヘッドパイプの下に入れ、肩に載せてゆっくり立ち上がってみた。要は単純なテコの原理なのだが、これがまた拍子抜けするほど簡単に、腰の負担もさほどなく起き上がってしまった。調子に乗って反対側に倒してはアホすぎるので、早めにハンドルの右グリップを掴みブレーキレバーをしっかり握ってサイドスタンドを立てた。
今までの苦労は何だったんだろうと思うほど、あっけなくバイクを起こしてしまったので、一瞬ポカンとしてしまったが、三度バイクを倒さないようにギアを入れたままにしてさっそく損傷箇所の点検をした。結果は、チェンジペダル曲がり・サイドスタンドアシストバー曲がり・グリップエンド曲がりが両方・バックミラー曲がりが両方・左側サイドカバーのひび割れ程度で済んだ。そして、肝心のエンジンが掛かるかが不安だったが、タンクの燃料コックをオンにしてチョークボタンを引っ張ってセルを回したら、一発で掛かったのでホッとした。各パーツの曲がり等は、17番のコンビネーションレンチとプラスドライバーを持っていたので、簡単に直す事ができた。
二度もバイクを倒すという間抜けな案件がやっとこさ解決して、腕時計を見ると0時になろうとしている。このままここでビバークする事も考えたが、家人にメールだけでも送って安心させてからまた考えようと思い、身支度を整えて落とし物がないかよく確認してから、今度は本当に帰路に就いた。
秋山の東西を走る県道35号線は、夜間走行がかなり怖い。道幅が急に細くなってカーブしている箇所に、中央線や道端の白線が引いていないからだ。街路灯も少ないので、夜目の利かない自分は、夜間は走りたくない。真夜中過ぎて、前後にはほとんど車が走っていなかったのが、不幸中の幸いだ。
事故だけは起こさないようにと慎重に走行して、桂川新田地区近隣公園に到着した。家人にメールをしたりトイレを借りたりして休憩しながらも、この後ここでビバークするか考えたが、車の少ない深夜に動いた方がいいと判断して、また走り出した。上野原インターチェンジは、いつの間にか「ETC専用入口」になっていたので、中央道に乗りたくても乗れなかった。上野原から中央道に乗れないなら、途中から乗るのも馬鹿馬鹿しいので、全て下道で帰る事にした。
国道20号線の脇にある気温計は、10度と表示されている。アウタージャケットとオーバーパンツで防寒対策をしているので我慢できなくはないが、少し寒く感じた。大垂水峠を越えて高尾山口駅近くまで来ると、少し暖かくなったような気がする。二度の転倒で燃料の残量が心配だったが、八王子駅近くまでは、開いているガソリンスタンドを見かけなかった。やっと開いているセルフのガソリンスタンドがあったので給油したら、その後はあちこちでガソリンスタンドを見かけた。
どこかでラーメンでも食べようかと思ったが、ファミレスや他の飲食店も開いている店舗をほぼ見かけなかった。そういえば、ラーメン店の倒産が2024年は過去2位だったなんて記事をネットニュースで見た記憶がある。人口減少と高齢化で人手不足が常態化しているところに加えて、食材が高騰しているから、外食産業はかなり厳しいのだろう。コロナ禍以降は、いろんな事が変わってしまったのだろうと、深夜の街をバイクで走りながら考えた。
結局、無生野を出発してから、休憩を1回取り給油を1回しただけで、自宅に到着してしまった。腕時計を見ると深夜3時を過ぎていた。ここ数年は、定期的にいろいろと問題を起こしているが、それでもなんとか生きている。これからもいろいろあるだろうが、挫けずにやっていければいいなと思う。
以上、鈍臭い男の長々とした独白を最後まで読んで頂き、ありがとうございます。何か困った時の参考になれば幸いです。
コメント
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いつも登山道整備有難うございます。
7年半程前にサンショ平まで歩いたときに、朝日山を宿題に残した感があるのですが、公共交通機関利用で私の体力では、中々実行に移せていません。^^;
それにしても、帰路が大変でしたね。私はバイクに乗りませんが、色々と参考になる点がありました。詳細な記録有難うございました。
そして、コメントありがとうございます。
登山道整備は人のためというより、自分の趣味になってます。
結果として、遭難を無くせればいい、何かの助けになればいいなとは思いますが。
自分の好きな山で、事故の報せを見聞きしたくないという、ある意味手前勝手な気持ちもあるので、そんなに立派な事でもないです。
今回付けたトラロープで、登りも下りもかなり楽になったと思うので、どうぞ皆さん歩いてみて下さい。
我が身のように読ませていただきました。無事でよかったと思います。それにヘッドランプ、ハンドライトやビバーク道具まで持ち歩いておられるということに共感しました。
私は和歌山にいた頃、オフロードバイクで林道に出かけて遭難あるいは遭難寸前になったことがあって、山でのバイクの操作が難しいことを肌身で感じました。
私は数日前にバイクを売却しましたが、あきやまさん、バイクは本当に気を付けて乗ってください。
未だに腰痛とあちこちの痛みが残っています。
老いを認めて自重せねばとは思いますが、ムリとバカを未だにやってしまいます。
本当に気をつけねば死にますね(笑)
コメントありがとうございました。
赤鞍ケ岳・棚ノ入山 整備登山&顛末記を読みあきやまさんぽさんの
人物像が浮かび上がって来ます。くれぐれもお身体を大切にしてください。
本コースは未だ未踏なので早速山リストに登録しておきます。
本日、あきやまさんぽさんのテリトリーをお散歩してきました。昨年登る予定が
伸び伸びになってまして、甚之函山山頂標識を確認してきました。
自然が残っており素敵なコースでした。
コメントありがとうございます。
甚之函山の無機質な山名板は色気がないですよね。まあしかし、よく剥がれもせずに保ってるなと思います。
風で飛ばされたら、もっと風情のある山名板を付けようと思います。
三本杉山に付けた山名板は朽ちてボロボロになったので、いつかまた付けたいなと思っています。
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