塩見岳・蝙蝠尾根
山梨県
長野県
静岡県
山キチどん
- GPS
- 06:00
- 距離
- 37.5km
- 登り
- 2,976m
- 下り
- 4,263m
アクセスを調べる
標高グラフを拡大コースタイム
- 山行
- 5:12
- 休憩
- 0:48
- 合計
- 6:00
- 山行
- 9:55
- 休憩
- 2:05
- 合計
- 12:00
| 天候 | 1日目(8/3)：晴れ 2日目(8/4)：曇り後晴れ後曇り |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2008年08月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
電車 バス
下山口：田代入口BSから山交タウンコーチバスでJR身延線身延駅 |
| 予約できる山小屋 |
塩見小屋
|
写真
拍手鳥倉林道車窓より
鳥倉登山口より
蝙蝠尾根P2845より
四郎作ノ頭山頂より"
2食付で予約しなければ椹島までの送迎バスに乗れない
感想
1日目(8/3)：晴れ一時曇り
平成18年から鳥倉林道の奥の奥までバス路線が開設された。それまで塩川まで入っていた路線を変更したもので夏季の1ヶ月限定だが南アルプス主稜線まで最短距離で近づくことができるようになった。鳥倉登山口は標高約1,800mで下界の暑さはない。自家用車の人たちは2�勸幣綣蠢阿砲△襯押璽箸�ら歩いて来る。車の数からすると、昨日の土曜日に多くの人が入ったのだろう。バスの中で登山準備を整えていたので、登山届を出すとすぐに登山道に取り付いた。
樹林帯の中を進み300mほど標高を上げると夫婦連れを追い越した。稜線に達すると登山道は右手に続く。ここは豊口山とのコルで、左に600m程の処に豊口山(2,231m)がある。地形図にその名がある以上行かない訳にはいかず、ザックをデポし薄い踏み跡を辿った。中間の稜線に展望地があり主稜線の大沢岳から丸山、木樽山、奥茶臼山に到る稜線を見ることができた。豊口山山頂に達したが展望はなく、3等三角点「豊口山」と古い山頂標識を見て引き返した。
コルに戻り登山道に復帰すると登山道は地形図では稜線を辿っているのだが、現実は概ね北側の斜面をトラバースしている。梯子場で下って来る10数人のグループがもたついているので脇をすり抜けていくと、豊口山コルの手前で追い越したご夫妻にまた追い付き、2回目の追越しとなった。今日は塩見小屋で同宿のようだ。谷間に、か細い水場があり、ペットボトルに消費しただけの水を補給しようと入れ始めるが、満タンにするのに5分も掛かってしまった。さらに登り北への尾根の張り出しのところで塩川からの登山道と合流した。ここまで来ると三伏峠(2,575m)は近い。比較的規模の大きな三伏小屋があり数人の登山者が休憩していた。三伏峠の東側には高山植物の保護地がある。最近鹿が此処まで来るようになり荒されてしまったそうだ。これも温暖化の影響だろうか? 悲しい気分になってしまう。
峠から先は昨年来た道、ひと登りで三伏山(2,615m)に達し360°の展望を楽しみ昼食を取った。山頂には半袖短パン姿の丸顔の女性が真っ赤に日焼けして休んでいた。八ヶ岳の麓、美濃戸口に住んでいるそうで三伏小屋にテントを張り昨日小河内岳、今日塩見岳に往復してもう帰るという。
本谷山(2,658m)の南斜面、三伏沢への旧分岐付近はマルバダケブキの群落があり黄色の花が美しい。ゴゼンタチバナ、ツマトリソウの白い花も元気だった。本谷山は3等三角点「黒川」がある。塩見岳が間近になり、遠くに仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、白峰三山を望むことができた。小黒山へ流れる西尾根を見送り北東の主稜線を進み標高2,512m地点から権右衛門山の南麓をトラバースしながら高度を稼いだ。今日、もう一つの密かな目的は塩見岳の北西に位置するこの権右衛門山に登ることだ。分岐点は塩見小屋の少し手前で大黒橋に下る塩見新道が山頂直下を通っている。塩見新道分岐まで行くと如何にも効率が悪いので、斜面の獣道をショートカットし塩見新道に入った。分岐点にザックをデポし山頂直下に到ったが登路はない。這松と石楠花の密生した藪を漕ぎやっとの思いで山頂に到った。
権右衛門山(2,682m)山頂には山頂標識はなく一寸寂しい。しかし山頂からの360°の展望が得られ素晴らしい。北西から見る塩見岳は初めてだ。至近距離で圧倒的な迫力があった。北岳など南アルプス北部の名峰もどっかと鎮座していた。下山路は無いかと探してみると真南に向いて微かな踏み跡があり辿って行くと全然苦労なく塩見新道に戻ることができた。
分岐に戻るともうひと登りで塩見小屋（標高2,754m）に到着した。1週間前に予約を入れると満室だとキャンセル待ちとなったが、そこは山小屋予約無しでも専用の別棟に泊めてくれた。何が違うのかと言えば、一人当たりのスペースか? 予約棟は40人までしか入れないそうだ。2棟ある飛び込み用は夫々10人程度で広くはないが許容範囲だった。寝具なし夕食付きで6,000円、水場は遠く宿泊者には500mlのペットボトルをサービスしてくれ追加は1本100円取るそうだ。トイレは携帯式で一つは無料でくれた。
早く着いたので時間はたっぷり、ロング缶を飲んで、同宿者との山談義に花を咲かせた。夕食内容は語るに足らず。16:30から30分ごと3回転で行われ、最後に案内された。夕方になると晴れているのだがガスが出だした。西陽を浴びて塩見岳斜面を覆ったガスがスクリーンとなりブロッケン現象出現! 夕方に現れるブロッケンは初めてで「ブロッケン出たよ!」と叫ぶと、小屋で休んでいた人達がゾロゾロ出てきて皆んなワーワー言いながら暫しの幻想に酔いしれた。そして18:47中央アルプス南駒ヶ岳に沈む夕日を見送り寝についた。
2日目(8/4) ：曇り後晴れ後曇り
3:30起床し4:38出発、今日同行程で二軒小屋泊りの鎌ヶ谷市のご夫妻と同時に出発したが、すぐに離れてしまった。周りはガスが立ちこめご来光は望めそうにない。しかし涼しい時間に300mの登りを楽々こなし塩見岳西峰(3,047m)に50分ほどで到着した。2等三角点「塩見山」にタッチし、展望は諦め最高峰の東峰(3,052m)に行くと何と先に来ている人がいた。小屋を3:30に出たそうだ。三脚を立てご来光の準備万端だったが諦めて戻るそうだ。私も諦めて先に進もう。砂礫地にイワベンケイやイワギキョウが露を付けて美しい。北俣岳(2,940m)で主稜線と分かれていよいよ蝙蝠尾根へと入って行った。ガスも薄くなり東の方には富士山の姿がくっきりしてきた。塩見岳からの流れで最初は岩稜が続きP2920からは穏やかな稜線歩きとなった。主稜線の山々もガスが山頂付近に纏わり付く程度になり上空は快晴となった。しかし塩見岳のガスだけは厚かった。
タカネグンナイフロウ、ハクサンイチゲの咲き乱れる稜線を快適に歩きP2845に到った。所々這松が登山道を覆い歩き辛い部分もあるが総じて爽快な稜線だ。森林限界ぎりぎりのP2758まで下ると塩見岳のガスも完全に取れて雄姿を見せてくれた。南アルプスの森林限界は高い。この辺りではP2758と蝙蝠岳の間の最低鞍部約2,710mは僅かに樹林帯に突入する。しかし登り返しになるとすぐに樹林帯は途切れた。蝙蝠岳は大きな山体で、主稜線から見てもその存在感と雄大さは素晴らしい。それだけに登り返しも150mあり息が切れそうだ。
蝙蝠から下ってくる人がいる。偶に人に出会うと嬉しくなり立ち止まって話すと山頂でテントを張ったという。蝙蝠岳(2,865m)は3等三角点「中俣」が置かれ勿論360°の展望が得られた。稜線南方には徳右衛門岳が姿を現した。この先の蝙蝠尾根は長く、大井川西俣越しに見る荒川三山は大きい。白峰南嶺の奥には笊ヶ岳、布引山が控えている。
蝙蝠尾根を南に下り小ピークで振り返り名残の蝙蝠岳を見上げるとその姿はやはり大きい。少しの間、樹林帯となり再び抜け出すと四郎作ノ頭(2,721m)、山頂標識はない。展望が得られるのはここまで、樹林帯に没してしまった。シラビソやツガの枝が覆い被さりしかも倒木も多くなり歩き辛い。二重稜線あるいは三重、四重に重なり、赤ペンキの道標がなければルートファインディングが難しい。展望は一切なく黙々と歩き続けた。登山地図には尾根通しの登山道が描かれていたが実際は東側巻気味に付いているようだ。
軈て登りに転じて陽の射す所に出て来たらそこは、徳右衛門岳(2,599,m)山頂だ。3等三角点「飛瀬」があり傍らには静岡県による立派な指導票が建っていた。ただし徳右衛門岳の山名の記載はなく「←二軒小屋、蝙蝠岳→」を示しているだけだった。三角点の傍に真っ二つに割れた山頂標識が転がっていた。樹林の切れ目からほんの少し展望はあるが、悪沢岳が立ち枯れた木の向うに見えるだけだった。この尾根のコースタイムは非常に甘く、北俣岳から5時間30分になっているがさして急ぎもせず3時間で来ることができた。エスケープルートは無く、一説によると敢えて長時間の表示をして安易な人を寄せ付けないようにしているのではないかという意見もあるようだ。
徳右衛門岳を南に5分ほど下ると、水場への分岐があった。昨年行った人の話によると美味しい水で付近はお花畑だったと言う。是非寄ろうと思っていたが水は十分あり、うまく行けば今日中に伝付峠まで行けると確信しだしてからは時間が惜しくなり心残りながらもパスしてしまった。比較的なだらかに下り続け、傾斜が増してきた頃、突然人工物が現れた。登山地図に「中部電力管理棟」と書かれた所で、山が削られその高度差を長い鉄製階段で降りる。削り取ったお陰で眺めが良く、目の前にマンノー沢の頭が目に入った。この山の向うには千枚岳、悪沢岳へ繋がっている。
登山口に近づきP1637辺りは岩稜帯で細かなアップダウンがあった。東に振って高度を下げると川面が近づき大井川東俣林道に達した。林道歩きで二軒小屋トンネル入口まで来ると先に見える出口はフェンスで閉じられているようだ。登山ルートは右に折れ大井川に架かる吊橋を渡った。揺れ方が激しくおっかない。右岸沿いに歩き悪沢岳からの登山道と合流すると堰堤の上に架かる吊橋で左岸に戻った。橋を渡り静かな広場の高台に上ると二軒小屋があった。2年前泊まった時と同じ佇まいで待っていた。
時刻は11:24、庭先で昼食を食べ、サワギキョウを愛でた。当初の目標はここでテントの予定だったがまだ早過ぎる。やはり伝付峠に進もう。登り返しは600m、一寸覚悟が必要だ。井川神社の前を通り登山道に入った。往年の南アルプスへの往還道だけあって道は広くしっかりしている。ジグザグに登り高度を増し途中眼下に林道を見るが接することはなかった。オオバギボシ、センジュガンピ、ヤマホタルブクロが疲れた体を癒してくれる。実際、疲れてくると写真撮りは休むための口実となってしまう。曲がり角を曲がるといきなり人が出てきた。気難しそうな小父さんで挨拶も返ってこなかった。二軒小屋に泊まるのだろうか。
伝付峠手前に登山地図には水場の印があるが、それらしき所は分からなかった。そして伝付峠への最後の場面では登山道が変わっているようで南に振って小ピークを越えると稜線を走る林道に達した。400m近く林道を歩き南から伝付峠に達した。標識に標高2,020mとあったが地形図を読む限り2,000mはない。5年前にテントを張った場所を懐かしく眺めるが、今日テントを張るなら水場の前の広場がいい。そのまま新倉への道を進み水場へ向かうと随分遠く、記憶はかなりいい加減だったようだ。
時刻は13:35まだ早い。元気も残っているし、明日できるだけ早く帰りたいので先に進むことにした。雲が出だし天気も心配だ。新倉への道は始め白峰南嶺の東斜面を下る急斜面2.2�辧�内河内川に達すると沢沿いの登山道4.6�辧�登山口からバス停までは車道歩き4.4�劼箸いδ甲�場、水を補給したので平らなところがあれば何処でもテントを張ることもできる。
下っていると上半身裸になって喘ぎながら登ってくる男性が一人、相当疲れているようだ。今日は伝付峠で泊まると云う。塩見の山頂で会った二人の他、蝙蝠尾根で1人、伝付登りで1人、下りで1人計3人が今日出会った登山者のすべて。夏山シーズン真っ盛りの南アルプスというのに静かなルートもあるものだ。
水場から30分足らずでヨモギ沢とアザミ沢が合流する地点に達した。橋でアザミ沢を右岸に渡り、合流して内河内川となると左岸へ渡渉した。この後渡渉はなく、橋で2度右岸に渡るが、すぐに戻ってしまうので基本的には左岸に道が付いている。しかし深く急な渓谷で、木製・鉄製の桟道が付けられていた。下流側から順に番号が付けられているが、それと気づいたのは65番からだった。木橋は総じて古く、落石などで壊れたものも多く安心して歩けるのは7割程度か？新しい鉄橋ですら落石により大きく変形しているものもあり、維持が大変な渓谷であることが分かる。5年前落石覆いのような庇が壊れて通過に苦労した箇所があったが、そこは流石に撤去されていた。
堀沢出合には東京電力田代第二発電所見張所なる看板の掲げられた小屋があるが無人だった。テントを張るなら最高の広場ではあるがまだ行ける。内河内川沿いの登山道は長かった。本流の落差を一気に流れ落ちる名もない滝がいくつもあり楽しませてくれた。やがて砂防ダムの工事現場に出くわし登山道が山越えルートに仮設され、迂回を強いられた。北から流れ入る枝沢に下り作業道に達する所が仮登山口となっていた。工事のため5年前より登山口が前進しているようだ。
車道歩きも長い。住む人とてない沿線は林業のための道でもなく。発電所への作業道のようだ。歩き出すとポツポツ落ちてきた。夕立ではなく天気の崩れなのか、ザックカバーを掛け、傘を差して歩くがほんの小雨程度で済んだ。県道に達する直前に新倉の名水が湧き出ている。冷たく美味しい水だ。ペットボトルの水を入れ替えて、ポリタンに1リットル詰めた。県道37号線に出て早川を渡ると小之島トンネルの入口に田代入口バス停がある。
これで明日歩こうとしていたルートは全部歩いてしまい1日早く南アルプス登山が終わってしまった。16:24いい時間に下りることができた。しかしバスは17:09発まで45分待ち。待っていると止んでいた雨が本格的に降り出し、トンネルの中に避難しバスを待った。奈良田から来るバスには地元の人2人と登山者3人の乗客があり、登山者は大門沢を下りて来た人達だった。
身延駅に着くと、汗まみれのまま帰る気にはなれず、駅前の旅館で泊まり、明日青春18切符を使い身延線の始発で鈍行乗継ぎの旅で帰京することにした。青春18切符はJR全線普通列車乗り放題2,300円とお得、因みに鳥倉のバスは2,460円も掛かった。
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