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Yamareco

記録ID: 45897
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
谷川・武尊

武尊山

2001年12月29日(土) 〜 2002年01月01日(火)
 - 拍手
GPS
80:00
距離
28.7km
登り
1,044m
下り
1,709m
アクセス

感想

12/29 快晴 武尊田代へ
 2001年も暮れにさしかかり、何かと忙しかったこの年、焚火でもしながらひとり優雅に振り返ろうと思い、山へと向かった。上毛高原駅からローカルバスに乗り、土出温泉のバス停に降り立つ。尾瀬岩倉スキー場までは一般車の排ガスに苦しみながらスキーを担いで黙々と歩く。ゴンドラに乗車し、スキー場のてっぺんへ(10:30)。シールを着け、すぐ隣の尾根に取り付く。快晴。左に武尊山、右に燧ヶ岳、尾瀬ヶ原、背後には皇海山、日光白根山が見えている。
 針葉樹の密な尾根をシールを利かせて登り切り、西山からの尾根の分岐を確認。そこから武尊田代へ向けてテレマークで滑降。久しぶりのスキーだったので、何度も転倒した。
 武尊田代は大学時代に行き慣れた十勝の山裾のような樹林帯の広がりをイメージしていたが、実際には針葉樹が1本も無く、灌木が密生する平坦な場所だった。上部の尾根筋に針葉樹のコロニーが確認できたので、今宵の天場をそこに決める。磁石で方向を確かめながら延々とラッセルを続ける。反対側に落ち込む崖地形を確認し、一人用のツエルトを張る。正面に武尊山を望みながら予定通りの焚火を愉しめて満足だ。武尊山には次第に傘雲がかかり、明日からの荒天を予感させる。

12/30 曇りのち雪 武尊山アタック
 1時間のラッセルで避難小屋に着いた。避難小屋には3人のパーティが宿泊していた。彼らは悪天の為、この日の行動は取りやめたそうだ。小屋のある場所から緩い傾斜の尾根が続く。スキーで快調に登る。登るにつれ、尾根ははっきりしなくなり、オニギリ型の岩峰の基部に着く。細かい板状節理の発達した溶岩。この基部にスキーをデポし、アイゼンにはき替えて武尊山の西峰を目指す。小雪で視界は利かない。ルートはバリズボの所が多く、苦労したが無事西峰着(11:30)。避難小屋から4時間かかった。天気は弱い地吹雪のまま。視界は相変わらず利かない。
 帰りのスキーは岩塔の基部からやや先まで行ったところまでは快調だったが、後半はアップダウンが続いてあまり快調とは言えない。いきしに木にくくりつけておいた寝袋等のデポを回収し、小屋で珈琲を飲んだ後、再び武尊田代へ滑り戻った。明日は一気に至仏まで行ってしまおう、などと考えて西山をねぐり、奈良俣側への林道へ滑り込む。今宵は林道脇の灌木斜面の中。

12/31 雪 終日ラッセル
 昨晩からしんしんと雪が降り積もった。なんと1m位積もった。ここからスキー場へ引き返す選択肢もあったが、林道沿いに進めば今日中になんとか峠を越えて下山も可能であろうと考えた。しかし甘い見通しであった。そもそもテレマークスキーはいつも使っていた山スキーのビンディングと比べ、踵の上がりが悪く、深雪のラッセル、特に重たい雪のラッセルにはまるで不向きだった。荷物を背負っての深いラッセルは、足腰にはなはだ堪えた。いったん空身でラッセルし、トレースをつけ引き返して荷物を背負い、また登り返すという一人ビーコンを延々と繰り返した。時間は進むが距離は一向に稼げない。2km位しかない林道に半日費やして愕然となった。この時点で本日最終下山日の帰着時間が大幅に遅れることを自覚した。日暮れ近くなり、ようやく峠に着く。ヘッドランプのバッテリーも尽きてしまった。身体も疲れていたので、峠にあった建設省の観測施設の軒下に潜り込みビバーク。非常食のサラミをかじりながら温かい珈琲をすする。幸いなことに燃料の予備と砂糖が余分にあった。シュラフに潜り込み、夜中ふと目覚めてラヂヲをつける。紅白のトリの真っ最中だった。流れる除夜の鐘をききながら再びうつらうつらする。新年を祝う花火の音が雪崩の音のように遠くから響いてきた。

1/1 快晴 帰還
 3時頃、寒さで目が覚めると外は煌々と月が照っていた。急いで支度を整え、3時半に出発。片品側は奈良俣側と比べて積雪量が少ない。荷物を背負っていてもラッセルが可能となった。深雪をかき分けるようにしてナメ沢、井戸沢の合流点付近に滑り込む。スノーブリッジを使って渡渉。これで一安心といったところだ。あとは長い林道のラッセルが待っている。津奈木橋に5時半着。林道のラッセルは脛下程度。林道上で2002年の初日を拝んだ。波乱の幕開けだ。
 イシゴネ沢を過ぎたあたりで、突如静寂を破るヘリの爆音を聞く。嫌な予感。稜線付近で私の名前を呼びながら旋回している。そうだ、空中に吊り上げられるより前に下山を急ごう。猛ダッシュ。しかしながらしばらく行ったところでヘリから発見されたようだ。仕方なくヘリに向かって手を振った。身振り手振りで一人でも下山が可能なことを伝えたつもりだったが、戸倉の林道ゲート1km手前で警官2名に保護された。余力は十分にあったが警察の立場では捜索願が出された以上聴収、保護しないわけにはいかないらしい。スノーモービルに乗せられてゲート着(9:30)。さらに沼田警察署までパトカーで移送。沼田警察署ではいはらとこくらが待機していた。簡単な事情聴収の後、3人で帰途につく。

 周りの素早い対応に驚いた。AACHばばあ氏じじい氏いはらこくらしゃなり君それに高校山岳部の大谷氏半沢氏佐藤氏国府田氏沼田警察署の方々、最後に心配をかけた家族に感謝。

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