武奈ヶ岳〜釣瓶岳(細川尾根〜八幡谷右岸尾根)☆霧氷と暴風雪の雪稜に

- GPS
- 04:06
- 距離
- 7.6km
- 登り
- 1,075m
- 下り
- 1,083m
コースタイム
| 天候 | 曇りのち吹雪 |
|---|---|
| 過去天気図(気象庁) | 2022年02月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
| コース状況/ 危険箇所等 |
・登りと下りの尾根はいずれも普段はトレースの期待できないバリエーション・ルートです前日のトレースはツボ足で歩いていたようでしたが降雪後はワカンかスノーシューが必要と思います。 ・武奈ヶ岳〜釣瓶岳の稜線は雪が深く、また風もきついので今回のように天候によってはかなり過酷な状況になる可能性あり |
写真
感想
前日の午後から降り続いた雨は朝にはようやくあがったようだが、比叡山には山麓まで雲に覆われている。日本の南岸を通過する温帯低気圧による湿った空気は広い範囲で雨をもたらしているようだが、北の方では寒気とぶつかり雪になっている筈だ。この日は北の方では天気が悪い予報となっているが、低気圧が通過した後の雲の切れ目を狙って北に向かうことにした。
市内からR367に入り敦賀街道を北上すると、大原に差し掛かると真っ白に積雪した権現山が雲の下から見えている。花折トンネルを過ぎると伊賀谷もすっかり雪化粧を纏い白銀の山肌を見せる。
八丁平か武奈ヶ岳か迷ったが武奈ヶ岳に向かうことにした。坊村の市民センターの駐車場には普段よりは明らかに少ないが、それでも十数台の車が停められて、出発の準備をしておられる登山者を目にする。
釣瓶岳に周回するつもりなので坊村を通り過ぎて細川休憩舎に車を停める。既に一台の小豆色の軽自動車が停められていた。八幡谷の入口から見上げると谷の上の方では真っ白になった細川尾根が見える。
雪の上に付けられた真新しい足跡を追って、八幡谷の右岸の林道を歩いてしまうが、細川尾根に取り付くには谷の入口から左岸に渡って林道を進むのが一般的だ。谷にはいくつもの小さな橋が架けられているので、対岸に渡る。
左岸にはいくつもの立派な石垣が現れるが、おそらくはかつての住居のものだろう。送電線下の伐採地に至ると広々とした雪原となっている。早速にもスノーシューを履いて雪原を進むとすぐに植林の登山口にたどり着く。
植林の中に入ると急に積雪は少なくなる。登山道には下山のトレースがある。登山靴のソールの跡が明瞭なので、前日のものであることが明らかだ。
植林帯の上部には倒木の集中地帯があるのだが、ピンク・テープがつけられており、上手く倒木地帯を避けるように誘導してくれる。このピンク・テープはおそらくyoutoushaさんがつけたものだろう。毎度ながら、登山道の整備に頭が下がる思いだ。
植林帯を過ぎて自然林に入ると当然ながら一気に積雪が増える。登るに連れて前日からの降雪によると思われる積雪が増える。驚いたことにどこまで登っても前日のトレースはツボ足のままであり、ワカンやスノーシューのトレースは見られない。
まもなくあたりは着雪したばかりの雪による一面の白銀の樹林の中へと入ってゆく。尾根が急登になるとヒップソリの跡が現れる。ヒップソリで滑るには坊村からの一般登山道よりもこの細川尾根の方が斜度もあって好都合だろう。しかし、ヒップソリで滑らない場所は下山とはいえどもラッセルがかなり大変だったのではないかと思われる。トレースのお陰もあってこちらはかなり快足で登ることが出来る。
尾根の上部が近づくと、昨日からの降雪と風のせいだろう、トレースは急に不明瞭になる。尾根上部で樹林を抜け出す手前でそれまではアウターなしで登ってきたのだが、アウターを着込んで強風に備える。尾根の左手には樹間から真っ白に雪化粧を施された釣瓶岳への吊尾根が見える。
樹林帯を抜け出すと予想通り、風の勢いが急に強くなる。雲の中に入ったのだろう、あたりはすっかり霧に包まれ、期待していた釣瓶岳への尾根の眺望が閉ざされる。尾根に疎らに生える霧氷の樹々の間を進むうちに一瞬、雲が上がり、白銀の斜面とその先に純白の西南稜が姿を現す。尾根から見下ろす右手の貫井谷も真っ白だ。
絶景を期待して霧氷の樹々の間を歩みを早めて尾根を辿る。しかし山頂が近づくと待っていたのは猛烈は暴風雪だった。ホワイト・アウト状態に近い。斜面の傾斜のみが山頂への方向を示してくれるのみだ。
山頂に到達した時は一人の男性が山頂を離れて10mほど先を去ってゆくところだった。こちらも山頂での長居は無用だ。霧氷で文字の見えない山名標を写真に収めると釣瓶岳への吊尾根に入る。それまでグローブはモンベルのウインド・ストッパー一枚で通していたので、上にもう一枚、防寒のグローブを重ねる。
相変わらず吹雪の中ではあるが、武奈ヶ岳の北陵は幅10m以上の広々とした雪稜となっていた。尾根の左側にはびっしりと霧氷を纏ったブナの樹々がプロムナードのように立ち並ぶ様は壮観なのだが、ゆっくりと立ち止まって眺めている余裕はない。尾根の先にある濃い霧に向かって雪稜を下降してゆく。風が冷たいせいか、グローブを二枚嵌めていても指先が次第に悴み始めた。
細川越が近づくと雲が上がったのだろう、右手に広谷の景色が広がった。白銀の樹木が広がる広谷はこういう日ならではの美しさを見せてくれる。
立ち止まっては脇に手を入れて指先を温めるが悴んだ指先がなかなか元に戻らない。このような悪天が見込まれて場合にはカイロを温めておくべきであったが、いまさらカイロの封を開けてもどうにもならないだろう。
釣瓶岳の手前ca1040mの小ピークに登り返す。ようやく風雪が少しましになる。背後を振り返ると武奈ヶ岳から辿ってきた尾根がみるみるうちに姿を現してゆく。ようやく指先の感覚も戻ってきた。
釣瓶岳への登りでは明るい日差しが差してくる。釣瓶岳の山頂にたどり着くと山頂に立ち並ぶ杉の樹々はモンスターのように大きな雪の塊を纏っている。杉の樹々の間に入ると先ほどまでの風雪が嘘のように風が感じられなくなる。
釣瓶岳の山頂から伸びる北尾根にも日差しが当たって雪稜が輝き始める風雪が止んでいるなら北尾根を下降してイクワタ峠に向かうのも悪くないと思ったが、そんな私の思惑を嘲るかのように、その直後、小雪が舞い始めたかと思うと再び吹雪が始まった。
再び釣瓶岳から引き返すとca1040mに登り返して、ピークの南端から八幡谷右岸の尾根を下降する。登りの細川尾根と同様、尾根を下降し始めると急速に風の勢いが弱まる。自然林の立ち並ぶ尾根は程よい積雪のせいもあって快足で下降することが出来る。
尾根の後半は植林帯の急下降となる。今回のコースは三年前の1月に次男と共に、二年前の正月にはuriuriさんと逆コースで周回したのだった。いずれの時も尾根の下部はほとんど雪がなかったことを思い出すが、今回は最後まで雪が繋がっており歩きやすい。最後の植林の急下降は当時小学生であった次男はそれなりに大変だったと思うがよく健気に歩いたものだと思う。
細川に戻ると集落にある蕎麦屋の「和美庵」に立ち寄り、冷えた体を温めながら土日祝日限定の十割そばを頂く。坊村の駐車場の裏手にある水神社に水を汲むために立ち寄ると、数名のパーティーが武奈ヶ岳から下山したところのようだった。西南稜の往復もおそらくは暴風雪に曝されて過酷な登山となったのではないだろうか。
京都に戻ると市内でも雪が待っていた。後から天気図を見返すとこの日は完全に天気を読み誤ったことに気がつく。南岸低気圧で天気を読んだが、同時に日本海沖で発達する低気圧のせいで、急速に冬型の気圧配置が強まるのだった。しかし天気の読みを誤ったせいで一瞬ではあったが美しい雪景色に出逢えたので怪我の功名と考えることにしよう。夜になると京都の自宅の周りでも積雪して瞬く間に一面の銀世界が広がった。
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山猫












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