蛇谷ヶ峰〜武奈ヶ岳縦走☆深夜の暗闇から聞こえる咆哮


- GPS
- 08:43
- 距離
- 17.8km
- 登り
- 1,575m
- 下り
- 1,513m
コースタイム
- 山行
- 5:20
- 休憩
- 0:10
- 合計
- 5:30
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
折角の連休ではあるが、土曜日の夕方はオンラインでの仕事がある上に、私の職場は非常にブラックなところであり、年に数回、祝日稼働を行うのである。日月と好天が見込まれるので、月曜日は午前中のみ休暇を取得して、泊りがけの山行を考える。午後にはテレワークを行うべく自宅に戻るという制約があるので遠出は難しい。翌朝はすぐに早めに下山出来るところ、ということでイクワタ峠でのテン泊の予定とする。
日曜日は予報通り、朝から晴天が広がっている。近所のスーパーで食材を調達してからR367を北上する。葛川沿いからは彼方に野坂山地の武奈ヶ嶽と三重獄がよく見える。
坊村で水を汲んでから細川に至るとバスの出発時間である10時52分が近い。このバスは細川が始発であり、朽木学校前行きのものだ。おそらく滅多にバスの乗客はいないのだろう、バスの運転手には行き先を繰り返し尋ねられる。
桑野橋からは尾根筋を歩いて蛇谷ヶ峰の西峰に至るルートも考えられるが、カツラの谷ルートを選択する。林道の入口まではおよそ15分程の車道歩きだ。林道の入口にたどり着いたところでススキの穂の揺れる朽木の景色を撮ろうと一眼レフの電源を入れるが液晶モニターには何も映らない。残念ながらこの日はスマホのカメラに頼るほかない。
今回の山行はそれほどの歩行距離ではないだろうと踏んで、MSRの自立型テント、エリクサー3を携行する。最近、愛用しているLocus Gearのワンポールテントに比べると1.5kgほど重いが、この重量の差は意外と肩に重くのしかかる。
カツラの谷に入る、早速にも苔むす谷にはカツラの樹が次々と現れる。細かく株立ちしたカツラの樹を見るたびに教会のパイプオルガンを想起する。折角の美しい谷の光景であるが、一眼レフが使えないのが何とも残念だ。
しかし美しい谷相に見惚れているどころではないのであった。足元からは次々とヒルが這い上がってくる。朝は慌てて出発したせいもあり、ヒル下がりのジョニーを携行してこなかったのは大きな失敗であった。少し歩いては足元を確認するということを繰り返す。わずか十数歩ほど歩いたところで両足の靴には5匹ほどのヒルが取り付いていたこともあった。大小合わせて、何十匹のヒルをはね落としたことだろう。
谷の奥には大きな岩の前に小さな祠がある。祠で折り返して右岸の斜面のトラバース道に入るとようやくヒルの姿を見かけなくなり、ようやく一安心である。まもなく尾根に乗ると、高度が上がるにつれて尾根上にはようやく涼しい風が吹くようになる。
尾根からは碧い湖水を湛える琵琶湖の北湖が目に入る。やがて朽木スキー場からの尾根と合流すると山頂まではあとわずか。眼下に鵜川沿いの色づいた田圃を見ながら山頂への最後の登りを辿る。
山頂に至ると釣瓶岳とその先に武奈ヶ岳が視界に飛び込んでくる。釣瓶岳までは実際には7.5kmほどらしいがかなり遠くに感じられる。山頂には数組のパーティーが休憩しておられる。我々の後からも登山者が登ってこられる。流石に人気の山だ。
山頂を後にいよいよ釣瓶岳への縦走路へと足を踏み入れる。山頂の南のイワヒメワラビの草原からは釣瓶岳の眺望が大きく広がるが、ここからはイクワタ峠に至るまでは樹林が続くので釣瓶岳の眺望とはしばしお別れである。西の方角の北山の山々の上には雲が低く垂れ込めている。雲は西から流れてきているので、天気が悪くなるのが心配だ。
尾根はすぐ西側の谷とほぼ平行に走る。まずは谷におりて、源頭に水を汲みに行く。
自然林の疎林の尾根も快適ではあるが、谷を辿ってみる。源頭から流れ出た細い流れはすぐに伏流となる。谷には踏み跡はないが辿るのに困難はない。やがて滝谷の頭の西側の平坦地に出る。ここで谷は西に向かって大きく曲がることになるので、谷を離脱して縦走路に戻る。縦走路は横谷峠までは植林の尾根が続く。
横谷峠に至るとようやく峠の西側に広々とした自然林が広がる。ここからは、尾根上にもしばらくは快適な自然林が続く。尾根を辿ると男の子を連れたテン泊装備の男性と出遭う。どちらでテン泊をとお伺いすると暗くなったところで適当に・・・とのことであるので、「横谷峠は平坦地が広がっていますが、その先はテン泊適地はここから3kmほどの滝谷頭までないかもしれません。」とおお伝えする。
地蔵峠が近づくと再び植林となり、尾根上には林道が現れるようになると、何となく殺伐とした雰囲気だ。
地蔵峠が近づくと左手の畑集落から上がってくる古道と合流する。峠のすぐ手前から近江高島方面の好展望が開ける。わずかな登りで地蔵山となり、ここからも再び琵琶湖方面の展望があるが、先ほどの地蔵峠からの方が展望が優れる。
すぐに植林は終わり、再び自然林になると、もう一息で本日の目的地イクワタ峠だ。振り返ると樹林の間からは蛇谷ヶ峰が彼方に見えるがその山頂部には雲がかかっている。ということはイクワタ峠も蛇谷ヶ峰とほぼ同じ標高なので、雲がかかっている可能性が高いか。
樹林帯を抜けると本来は好展望が広がる筈ではあるが、尾根はすっかり雲の中となり、残念ながらあたりは見えるのは白いガスばかりだ。
イクワタ峠の周辺ではテントに良さそうなところがいくつかあるが、峠(p923)にテントを張ることにした。テントを張り終えるとアルコール・ストーブで鶏の軟骨と舞茸を温め、早速にもビールで乾杯する。風はそれほど感じなかったが、アルコール・ストープは風にはあまり強くなく、わずかな風にも炎が揺らぐ。ここで一眼レフの電源を入れてみると、先ほどは何度試しても映らなかった液晶モニターがすっかり復活している。
テントの中に入ると三人用ということではあるが、荷物をテントの外に出せば大人四人が寝ることの出来る広さのあるエリクサー3は流石に広々としている。徐々に薄暗くなってゆく薄暮の中で赤ワインを飲みながら、フライバンの上で牛肉を焼く。食後は明日の好天を祈りながら早々に眠りについた。
夜中に目覚めるとテントの上が明るい。時計を確認する11時だった。ガスが薄くなり、月がテントを上から明るく照らし始めたようだ。テントの外を覗くとガスの中からおぼろげに稜線の輪郭が現れたかと思うと、みるみるうちにガスが薄くなり、雲の中から釣瓶岳のシルエットが浮かび上がってゆく。気がつくと稜線のガスは瞬く間に霧散し、雲ひとつない夜空に月が煌々と輝いているのであった。
明るい月明かりのせいで樹木のない稜線はライトがなくても十分に明るい。尾根を少し北に歩いて、見晴らしの良いポイントから近江高島のあたりの夜景の撮影を試みる。露光時間が長すぎたと思い時間を短く設定し直していると、斜面の下の樹林からポキンと枝が折れる音が聞こえた。
鹿か・・・と思ったが、どうも気配が違う。何かが身を潜めているような気配を感じる。もう一度写真を撮ろうをカメラのシャッターを押した途端、樹の下から「ガゥーーーーーッ」と低い咆哮が聞こえる。こちらからは月でてらされた樹の下には暗闇しか見えないが、先方の姿は見えないが、先方はこちらの姿を認識しているのだろう。暗闇の中からは「ガゥーーーーーッ」と立て続けに明らかにこちらを威嚇するような咆哮が再び聞こえる。明らかにこちらに向かって威嚇しているのだろう。
露光中のカメラを掴むと、慌てて月明かりの尾根をテントまで一目散に走って退散する。しばらくすると動物の足音が聞こえたかと思うと、テントのすぐ近くで「クィーーーッ」と甲高い警戒鳴を発する。尾根に見慣れないものがあるので、反応しているのだろう。テントの近くで数分間にわたり、しきりと甲高い鳴き声をあげた後、西の尾根へと下って行った。
次には目が覚めたのは2時頃だった。上空にはすっかり雲が広がっている。折角一眼レフは復活してくれたが、今夜は天の川を写真に収めることは能わないようだ。
翌朝、目が醒めてテントの外に出ると、東の方角には雲が広がっている。東の空では雲の下が茜色に染まってはいるがこの様子ではご来光は難しいだろう。家内は中々、寝袋の名から起き出して来ない。
釣瓶岳に向かって好展望の尾根を登る。この尾根はブナの大樹が目立つが、樹木のない小さな草原が随所にあり、好展望を眺めながら山頂へと登る高揚感を堪能することが出来るのが嬉しい。
金糞岳の左手には雲の名から奥美濃の蕎麦粒岳の鋭鋒が浮かび上がっている。横山岳の彼方には左千方、三周ヶ岳、上谷山といった江美国境から江越国境の山々も見えている。
武奈ヶ岳への尾根に入り、リョウブの樹林の下降を過ぎると、随所でブルーベリーのような特徴的な青い実をつけた樹が目立つ。サワフタギだろう。青い実をつける樹木はこのサワフタギの他にはないらしい。一際鮮やかな赤い実をつけているのはナナカマドだ。武奈ヶ岳から釣瓶岳にかけて、つい10日ほど前にも坊村からの周回で通ったばかりではあるが、わずかな間に急に季節が進んだように思われる。
細川越に至るとヘルメットを被った単独行の男性が休憩しておられる。奥ノ深谷を沢登りで登られ、昨夜は八雲ヶ原でテン泊されたそうだ。八雲ヶ原はテン泊している人がいるだろうと予想してはいたが、何とテントは20張りほどもあったらしい。それほどテントがあったら流石に熊も近づくことはないだろう。
武奈ヶ岳の山頂は我々が到着した時には他には誰もいなかった。山頂からの展望を写真に収めようと一眼レフを取り出すが、早朝は機嫌よく動いていたのだが液晶モニターは再び沈黙したままだ。山頂にはコヤマノ岳の方から次々と人が登ってくる。夏には数多くのブヨやアブが寄ってきたが虫はほとんど姿を消したようだ。山頂で一息つくと、細川尾根の下山の途につく。
コアジサイの繁茂する急下降がひとしきり落ち着いたところで足元をみると、尾根上の薄い踏み跡の上には大きな糞がある。
尾根が広がり、広々とした自然林の疎林が広がるようになるとようやく傾斜がなだらかになる。植林に入ると左手にトラバースする古道に入りたいところなのだが、倒木が集中して、トラバース道への入口がわかりにくい。
この細川尾根は何度も往復している尾根ではあるが、グリーン・シーズンに通るのは久しぶりだ。
今年の冬に武奈ヶ岳の山頂の上で日没を見てからこの尾根を駆け下りたのは今年の数少ない雪が降った後のことだった。その時も気がついたらトラバース道に入り損ねて、急傾斜の尾根を直進してしまっているのだった。
急斜面を慎重に足場を選んでジグザグに下降する。この植林帯もヒルが好発する場所なので、ヒルにも注意をする必要がある。頻繁に足元を確認することになる。
無事、細川の駐車地に戻り、足元を確認するとヒルが脛に吸いつこうとしているところだった。今回の山行では何とかヒルに吸血されることなく済んだと思ったが、それは甘かった。自宅に戻り靴下を脱ぐと、二ヶ所、ヒルに吸血された痕があるのだった。
コメント
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献血 ご苦労様でした
「ガゥーーーーーッ」はヒルより怖そうです
ヤマイズさんは気づかれなかったのでしょうか
花脊から芹生に向かう尾根の途中の送電鉄塔の下で私のデジカメ画面は誤動作します 一回目はカメラの故障かと思いましたがみぞれが降る日に行ったときはバチバチと放電していたのでこれが原因らしいと思いました
送電線の下では電流による磁力が生じるせいかもしれませんね。花背と芹生の間のあの送電線鉄塔の下は展望がいいのでカメラを必ず取り出すところですが、送電線の下で写真を撮るときは要注意ですね。
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