記録ID: 21142
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アルパインクライミング
妙高・戸隠・雨飾
戸隠山P1稜
1993年03月21日(日) 〜
1993年03月22日(月)


- GPS
- 32:00
- 距離
- 11.4km
- 登り
- 1,108m
- 下り
- 1,108m
コースタイム
3月21日 長野駅(5:00)→上楠(6:30)→C1標高1600(12:00)
3月22日 C1(6:00)→無念の峰(10:30)→最後の壁引き返し(12:00)→C1(16:00)→上楠(19:00)
3月22日 C1(6:00)→無念の峰(10:30)→最後の壁引き返し(12:00)→C1(16:00)→上楠(19:00)
天候 | 晴れ |
---|---|
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
夜行列車でやってきた名取さんと2人で、雪の戸隠連峰P1に向かう。本州では、こんなに素晴らしい山なのに、冬はあまり登山者がいないようだ。我々にとってはもうけものだ。しかも長野から1時間で行ける。朝の青い山脈の眺めを堪能して、上楠から入山。夏道を歩き沢を渡って右岸の天狗の原台地へあがる。心配せずに登れよと言わんばかりのさんさんたる好天、良く絞まった雪質。雪稜登攀にはこれ以上無い素晴らしいコンディションだ。しかも高気圧は2、3日は続きそう。今日のところは無理をせず、尾根が雪壁に吸い込まれる直前の、タンネの生えた細い尾根上にツエルトを張って焚火。のどかな春の午後を過ごす。酒は日のあるうちに飲んでしまった。 翌朝も満天の星空。鬼無里村にちらほら光る灯かりを見ていると、ボナッティーのアイガー北壁ビバークからのグリンデルヴァルトの灯かりが見えたくだりを思いだしたりする。もっともここはタンネが生えていていくぶんのどかだ。支度をして出発。熊の遊び場と呼ばれる雪壁帯をノーザイルで通過。多少潜るが雪は安定していてなだれの心配はなさそうだ。ぴかぴかに磨いだアックスが氷によくきまる。痩せたカンバのはり付いた小さなルンゼからアンザイレンする。つるべで2ピッチ、後また傾斜が弛まり、ノーザイルで長かった壁を抜ける。抜けた上は雪稜で大きなキノコ雪のついた行き止まり。その先は3メートルほどのギャップで行く手は寸断されている。ここがいわゆる無念の峰か。猿回しよろしく落ちる覚悟でキノコに乗ってギャップを下る。幸い雪は安定していた。降りて登り帰すとすぐ蟻の刃渡り。10メートルほどの細い橋をひょろひょろと渡る。もう高度には慣れた。利尻の南稜のときのようだ。その先の7メートルほどのギャップは名取さんがトップでルンゼ状を登って太いカンバに乗り、その上の厚さ2メートルほどのキノコ雪を突き破って登る。このハング気味のところが怖かった。 これを抜けて遂にでたのが15メートルほどの雪の壁。丸木橋のように細くなった雪稜がその壁に直角に突っ込んで、そこで消えてしまう。両側は目もくらむ絶壁だ。無念ながらここに取り付く勇気は無い。取り付いてもあそこらへんで身動きできなくなるのは目に見えている。敗北の気持ち、これさえ抜ければ稜線は、山頂はすぐそこだと分かっていた。残念だが仕方が無い。我々は見のほどを知っている。やるだけのことはやった。両隣の本院岳ダイレクト尾根、P3稜のヒマラヤ襞をみながら、なんとも変な満足感にタバコをふかし、撤退する。この頃になると午後の日差しに雪庇が落ちるのか仏沢や西岳本谷の沢底や岩壁の上をなだれが滝のように滑り落ちていく。100メートル近くの落差の空中を流れ沢底に叩きつけられるP3下のなだれは特に凄い音をたてる。瓦屋根が一気に滑り落ちたような音だ。下りも楽では無かった。アプザイレンの繰り返しで両腕の筋肉はぐったりとつかれてしまい、下りのスキーを履くころにはくたびれてしまって、転びまくって降りた。天気は最後まで穏やかだった。逆光の戸隠連山は太陽を飲み込み、やがて見えなくなった。沢底に降りてうまい水を飲み、日がくれた林道をスキーで飛ばして帰る。戸隠の稜線にはなかなか立たせてもらえない。 |
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