キリン峠東の草付から鳥越峠


- GPS
- 04:51
- 距離
- 4.8km
- 登り
- 596m
- 下り
- 596m
コースタイム
天候 | 快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2025年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
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コース状況/ 危険箇所等 |
登りのルート、ザレを登り続けないこと。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
靴
ザック
昼ご飯
飲料
レジャーシート
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
GPS
ファーストエイドキット
保険証
携帯
時計
サングラス
カメラ
シュリンゲ
ヘルメット
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感想
梅雨はあっけなく終わって夏本番。夏山シーズンというが、西日本には高い山はなくてどこも暑い。花も乏しい。唯一と言っていい例外、それは大山だ。西日本ではここしかない、というアルペンムード漂う大山。お花畑のある大山。ちょっと遠いが、行かずにはいられない。前日のてんくらで予想天気も好転して「A」となったとあれば、選択肢は他にない。ふもとまで行って山頂部が綺麗に晴れ渡っているなら、槍ヶ峰、三ノ峰、あわよくば剣ヶ峰を目指そう。
ほぼ一年ぶりの蒜山ICを降り、鍵掛峠に向かって車を走らせる。と、道の脇に看板が立っている。鍵掛峠から枡水高原まで、雪崩被害の復旧のために通行止めと書かれているのだ。「えっ」ここまできてそれはないぜ、だが、とにかく鍵掛峠まで行ってみよう。鍵掛峠からの大山主峰群はいつ見ても壮観である。それはいいのだが、峠のすぐ下にはがっちりとゲート封鎖がなされており、ちょっと先まで入れるかも、という甘い期待は完全に打ち砕かれた。ここから三ノ沢まで歩くという選択肢もある。が、その「おまけ」付きでガンガン照りの三ノ沢作業道登りを想像すると、気力が萎える。そこで一計を案ずる。わずかに戻った木谷口から文殊越に出て、例のガレ場からキリン峠東の草付を目指せば、車道歩きなしで主稜線に立ち、お花畑を楽しめるな。そこでこのお得なプランで楽しむことに変更だ。
実はこれまで、文鳥水から文殊越に出ていたので、木谷口からは初めてである。行ってみると木谷口のほうがずっと道がよく、水汲みの必要がなければ木谷口から登ったほうが楽なのだった。周囲はブナやサワグルミの大木が並び立つ温帯広葉樹林で、日本の森林の原風景ともいうべき潤い溢れる環境である。東北在住時代を思い出しながら、その美しい自然に身を任せる。
しばし樹林の中を歩き、見覚えのある文殊越の下の「交差点」に出た。ここには道標が立ち、その標柱の背後のロープをまたいで窪地を登っていく。足元にはサンショウバラがたくさん生えているが、咲いているものはほとんどない。こんなに暑くても、まだ花暦は梅雨時のままなのだろうか。
次第に周囲は明かるなってガレ場が徐々に近づいているのを感じさせる。ドロノキが目立つようになって綿毛の房からなる花穂もほとんどが落下している。見上げるとカバノキ科の小灌木の切れ間から主稜線がにょきっと顔を出している。そのせりあがる岩峰が真っ青な空を背景に登山者を威圧する。この眺めがいつも想起させるのは、上高地岳沢からの穂高連峰の勇姿だ。北アルプスに最後に行ってからもう40年も経つのか、と半ばあきれるが、お手軽にこんなアルペン気分を味わえる大山は有難い存在である。
ガレに出たら、なるべく早くその左岸に移り、ブッシュの中の踏み跡を拾うことだ。初めてここに来た時、何も知らずに石屑雪崩の起こるガレを登り続けた。一歩進んで二歩ずり落ちる、という難業を続けてかなり上部まで来た時、稜線からブッシュの中を降りてくるパーティーを見て、そこにルートがあることを知ったのだった。
そろそろお花畑となるところまで来ているが、花がない。シモツケはもう花が古くなっているものも多いし、ダイセンクワガタは房のてっぺんに2−3輪が残るだけになっているのに、オオバギボウシやクガイソウはやっと蕾が伸びあがっている状態なのだった。コオニユリやキュウシュウコゴメグサもまだ咲いていない。ちょっと早かったか、と少しがっかりだが、この好天のもと、素晴らしい眺めを味わえるのだからそれで十分と気を持ち直して草付きを登る。右手には烏ヶ山の奇峰がせりあがっている。あの断崖の上の山頂に立ったなんて、そうして眺めていると信じられない気分だ。
kinuasaが左の崩壊尾根の上に人影を発見し、あんなところを登るなんてと驚いている。それは文鳥水尾根だろう。今日のコースの途中から分かれてキリン峠に直接登りつくことのできる尾根だが、リスキーなルートと聞く。
稜線が近づくと強風に煽られるようになってきた。南海上の台風の影響だろうか。バランスを崩さないように慎重を期す。オオバギボウシも開花した房が目に付くようになってきた。主稜線に出たところには、かろうじて腰を下ろせる場所があり、今日もここで昼飯だ。西に稜線を見上げると、キリン沢の源頭によって削りとられた尾根の切れ目がすぐそこにある。北側には、キリン沢の崩壊斜面、その向こう側遠くには矢筈が山と甲ヶ山が落ち着き払って座している。見かけはおとなしいが、これらも一癖ある岩山であった。そして真正面、稜線の先には烏ヶ山がせりあがっている。
強風の中、今いる場所もセキュアとは言えないので、昼食を終えたらすぐ出発だ。主峰群の眺めのよい稜線の道を鳥越峠へと進む。意外にも、1405m峰への稜線では開花が進んでいて、登りでは出会わなかったイヨフウロがまず登場。そして、ひそかに期待していたミヤマオダマキを、asakinuが気づかず通過した後にkinuasaが発見するという、よくあるパターンが今回も再現された。
間もなくお花畑が終わって灌木帯に入ると、地を這う灌木の幹をまたぎながら左右から伸び出た枝を縫って進むようになる。こんな山道も東北なら標準レベルなので、ヘンに懐かしくもある。ところどころで木々の隙間から主稜のピークが雄々しくのぞまれる。その眺めも進むにつれて変化し、先ほどまでは見えていなかった槍ヶ峰の鋭いとんがりが姿を現わした。昨夏にはあの切り立ったピークの直下をトラバースして三ノ峰に行ったのだな、と妙な気持になる。
林の中をふらふらとアサギマダラが舞うのを見てさらに進み、鳥越峠に到着。ここまでに出会ったのは単独行の男性と女性の計2名だったが、ここで駒鳥小屋方向から女性2名のパーティーがやってきて情報交換する。
鳥越峠からは傾斜の緩い森の中の道を淡々と木谷口へと向かう。林下にはサンカヨウが各所で実をつけていて、ちょっとした群落となっている。5月ごろ、花を見にこようか。駐車場に着くと、うだるような暑さだ。例によって蒜山IC前の道の駅で、スイカとトウモロコシを買うという次なるミッションを果たすべく車に乗り込む我々であった。
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