金糞岳(浄水場から反時計回り)連状口手前でクマに襲われる


- GPS
- 02:48
- 距離
- 5.9km
- 登り
- 751m
- 下り
- 44m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
白谷口(追分)を過ぎてから倒木が所々ある。 登山道が塹壕のようにえぐれているところもあり、そこに落葉が堆積していて歩きにくいところもある。浄水場から連状口駐車場までは、みんなの足跡の濃さからみても利用者は少ないようだ。 |
写真
感想
登山道を歩いていると、行きよいよくこちらに向かって走ってくる何かに気づき、次の瞬間クマだとわかったが、地面に伏せる間もなく襲われました。何かに気づいてから襲われるまで、2,3秒だったと思います。
日頃から”クマに出会った時の行動”を頭に入れていて、”間近で出くわしたら、ザックを首のところまで持ち上げ、脚を広げで地面に伏せる”ということでしたが、全く行動がとれませんでした。やれたことは顔をめがけて飛びついてきたので、防御的に腕を自分の顔付近に持ち上げた、それだけでした。その持ち上げた腕(手首)にまずは噛みつかれたようです。
襲われている間も地面に伏せようとしましたが、噛んで振り回されたのでしょうか、できませんでした。相手は何度か噛み直しを行い、腕、肩、頭部に何カ所も大きな傷負いました。噛まれている間ゴリゴリ音が聞こえ、早くどこかへ行ってくれ!と願ったのが記憶に残っています。
襲ってきたクマは成獣、襲われている時間は10秒から20秒ぐらいだったと思います。
クマが去ったと気づいた時は、自分は落葉が積もった登山道にうつ伏せになっていたので、上半身を起こし座り込んだ状態で、スマホを取り出し110番しました。血だらけの手でスマホはなかなか操作できず、何度も拭きながら操作しました。アンテナ4本中3本立っていたので問題なく繋がりました。それでも繋がった時は、本当によかったぁ〜と思いました。
どの山に向かっている?、どこに車を置いた?、今いるところから空は見えるか?、怪我の具合は?、今どこ?、GPSの位置はわかる?、クマは今どこにいる?、体長は?、小熊はいるか?、バッテリーは十分か?、などいろいろ質問され、一つ一つ落ち着いて頭を働かせて必死で回答しました。
位置についてはスマホのGPS位置を読み上げましたが、読み上げた数値では位置が特定できないのか10回ぐらい何度も聞かれました。なのでいつも携帯しているGarminのGPSの位置情報を伝えたら、一発で受け取ってくれました。なぜなスマホの位置情報ではダメだったのか調査できていません。
警察の質問が一通り終えた後、”消防に連絡を取ってあるから直接消防にも連絡してくれ”と依頼されたので、119番しましたが、管轄外に繋がったようでそこからまた説明し直し、管轄の消防署に繋げてもらい、位置情報やその他の状況を説明しました。
警察や消防に連絡している途中、クマがまた戻ってきました。この時はものすごい恐怖でした。また襲われる!電話をしながらクマがまた来た!と叫びました。しかし、3,4mほど近づいてすぐに立ち去って行きました。
ようやく警察や消防への電話が終り、そのうちヘリコプターの音が聞こえ始めましたが、上を見上げても木々に覆われていて空は見えません。
電話が終わって自分の状況を確認すると、血はべっとりTシャツやズボンに付いていたけど、噴き出していたりしたたり落ちたりしていないことがわかり、また下半身はダメージを受けていないことがわかったので、気持ちもだいぶ落ち着きました。ストックを拾い上げ、200m先の連状口までゆっくり歩きました。歩くことによってダメージが広がるのではないかと心配もしました。
歩き始めるとすぐに周りの樹木が少なくなり空も見え、助かるんだという気持ちが出てきました。
GPSのログを確認するとクマに襲われてから歩き始めたのは27分後でした。
歩き始めると救急車やパトカーのサイレンが聞こえだしました。
また、歩きながらまたクマが襲ってくるかもしてないという恐怖があり、笛を吹きながら連状口に向かいました。
歩き始めて6分ほどで連状口に着き石の上に座っていると、サイレンの音がだんだん近づいてきて、7分ほどで救急車1台とパトカー3台が到着しました。
助かった〜と思いました。もう感謝しかありません。と同時に、いろいろな人に本当に迷惑を掛けたなと思いました。警察の方、消防の方全部で10人以上いたと思います。
警察の方は自分と救急隊員にことわりを入れ質問や傷口などの写真を撮っていました。写真は、特に左頬上部(左目尻下)がかまれて肉がえぐれているのが自分でもわかり、そこを何枚も撮っていたようです。
救急車に乗せられ、パトカーに先導されながら病院へ向かいました。
救急車の中で傷の確認とその応急処置をしてもらいながら、救急隊員の方が傷の状況を見て判断されたと思いますが、ドクターヘリを呼べと指示があり、河川敷でドクターヘリに乗せられ長浜赤十字病院へ搬送されました。
9時40分ぐらいに病院に着き、まず行ったCT撮影で左目尻下が骨折していることがわかりました。
10時から傷口の洗浄と縫合が行われ、終わった時は12時を回っていました。
左目尻下の骨折自然治癒(?)とのことで、特段の手当はありませんでした。
自分の事故のためにお休みのところ駆けつけてくださった先生や関わってくださったスタップの方々には感謝しかありません。このことを思うと涙が出ます。
縫合が終わってから警察の方が事情聴取に来られたので、できる限りの対応をしました。
入院して初めの4日間は緊急病棟で1日3度の点滴を行い、4日後の血液検査で体内の炎症を示す数値(CRP値)が下がったので点滴を終了し、一般病棟に移り7日目に抜糸をして、8日目に退院しました。
自家用車の回収は事故2日目に親戚の家族で行ってもらいました。
◆登山当時のクマに対する対策について
カウベルタイプではないクマよけ鈴を1つザックに付けていました。高い音で遠くまで響くタイプだと思いますが、結果的に効果はなかったようです。
笛をもっていましたが、熊に襲われるまで使っていませんでした。登りながら時折笛を吹いていたらこんな目に遭わなかったかも・・・と思ったりもします。
◆クマに出くわした時のことについて
”何かがこちらに走って向かってくる”と気づいたのは、20mぐらい前方です。
クマの走る速さは時速50mとも言われていますが、控えめに計算して時速40kmで30m先から走ってきたら2.7秒後には襲われます。なすすべはありません。
いかに出くわさないようにするかが肝心です。
実際あっという間でした。クマだと認識した時に”地面に伏せないと”と思ったことが精一杯で、とれた行動は防御のために腕を上げたことだけでした。”怖い!”という思う時間もありませんでした。
◆運が良かったこと
◇電話が通じた。docomoと契約していますが、後にいまココの軌跡を確認すると、10分ごとのログの内半数以上は電波が届かない状態でした。襲われたところで電話が通じて助かりました。
◇噛まれたところは急所を外れていました。目の付近、頸動脈の付近で終わりました。また顔面も顔面神経麻痺となる神経は傷ついていませんでした。先生も奇跡的だと言っていました。
◇クマの爪による傷は最小限ですみました。爪による傷は複数箇所ありましたが、どれも噛まれたところの傷に比べるとかすり傷のようなものでした。爪により顔の肉が剥ぎ取られる事故も少なくないようです。
そのほかにも運が良かったことがたくさんあります。運が良かったことだらけです。
今回の事故で多くの人に心配や迷惑をかけ、また多くの人に助けてられました。関わっていただいた人一人一人に頭を下げてお礼を言いたい気持ちです。
今回の事故は今までの人生においてとても大きな傷跡となりました。この出来事をどう反省して今後どうどう生かしていくか。このことがとても大切だと思います。答えは出ないかもしれませんが、考え続けていかなければと思います。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/otsu/20250607/2060018441.html#:~:text=%EF%BC%97%E6%97%A5%E5%8D%88%E5%89%8D%EF%BC%98%E6%99%82,%E3%81%AB%E9%81%8B%E3%81%B0%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
https://www.youtube.com/watch?v=LdGKZt7XyoU
https://news.yahoo.co.jp/articles/a7a9cba4cb9dca286abdba78f9241d5f43e1b282
https://www.asahi.com/articles/AST671BZNT67PLZB002M.html
誰にでも起こる状況で、恐ろしさがひしひしと伝わってきました。私ならこんなに冷静に対処できなかったと思います。
貴重な体験のレポートありがとうございました。
1日も早いご回復を祈っております。
どうぞお大事に。
怪我のことお気遣いしてくださりありがとうございます。
ゆっくりですが回復してきております。いまあまりいろいろなことを考えず、じっくりその回復を待っている状況です。
ありがとうございます。
まずはご無事で何よりです。息が詰まるような思いで読まさせていただきました。
読み返すと、zaikunさんの冷静な対応に驚きます。スマホの他にGPSもお持ちの入念さに始まる一つ一つが、最悪の事態を防いだのでしょう。私だったら、運命に負けていたところです。拾った命ではなく、zaikunさんの場合、生き延びるべくして生き残った命だと思います。
まずはゆっくり癒やしてください。
思いのこもった「いいね」を押させていただきます。
そうなんです。これもクマに合わない対策を適当にやっていたことが大きな要因だと思っています。
”またどこかに連れて行ってください。”と言えるようひたすら回復に努めています。
ありがとうございます。
この状況下、冷静な対応に驚きました。
運がよかったこともありますが、その運を引き寄せたのはzaikunさんの”力”だと思います。
熊鈴の効果は私は以前から懐疑的でしたが、やっぱりでしたか。
私も10年ほど前に北海道のニペソツ山で鈴を鳴らしながら歩いていたのも関わらず、至近距離でヒグマに会いました。
大事に至らなかったのですがほんとに恐怖でした。
今回のzaikunnさんの恐怖は筆舌に尽くせないほどのものだったと思います。
今はゆっくり治療に専念してください。
※返信は不要です。
いまは回復に努め、前を向いて歩いて行こうと思います。
ありがとうございます。
それにしても熊には滅多に遭われないzaikunさんに20メートル以上離れた地点から人間を襲いに来る極めて危険な熊の個体に遭遇されるとは驚きでした。私自体は最近10年間で子熊だけでも5頭は見ましたが(今年は子熊まだ1頭)熊に襲われた事は有りません!そのうち襲いに来られるかも知れませんが。
zaikunさん、お大事にされて下さい!
KENZI0103さんの山行きは、常々クマがでそうなところが多いなと思っていました。やはりそんなに遭遇しているんですね。驚きました。襲われた者が言う台詞ではないと思いますが、くれぐれも遭遇しないよう笛を吹くなど十分な対策をして登山を楽しんでくださいね。
ありがとうございます。
しばらくレコが上がっていなかったので、どうされたのかなと思っていましたが、大変な目に遭われていたのですね😢
いきなりの熊の襲撃、その恐怖は筆舌に尽くしがたいものと推察いたします。その後の冷静沈着な対応が大事に至らなかったものとリスペクトです。
どうかしっかり養生なさってください。
熊鈴の効果、私も?です。7年程前、羅臼岳で熊鈴2個を鳴らしていましたが、ヒグマ母子と睨み合いになりました。
怪我の心配をしていただきありがとうございます。
ヒグマか〜!怖くて想像したくありません。とにかく無事で良かったですね。
滋賀県のこの辺りには普通にクマがいることは知っていました。
私も高島トレイルやっている時に、遭遇しましたが、その時は向こうがびっくりして逃げていきました。
なんで襲ってくるの? 基本的にはクマは臆病な動物だから、人を襲うことは滅多にないと言われているのに😫
金糞山でクマに襲われたニュースは見ましたが、まさかzaikunさんだったとは。 とにかく今は養生してください😔
おそらくクマ鈴の音も聞こえず、突然自分の姿を至近距離で見て驚いて襲ってきたような気がします。そう思うと、大きな音の出る笛を頻繁に吹きながら登るとクマに遭遇するリスクが軽減されるのではと、改めて思います。
5月に高島トレイルの一部を歩いた時、naoeさんのクマ遭遇のレコが記憶にあったので笛を吹きながら登りました。ああだこうだと考えたくはありませんが、とにかくサンキューです。
傷口は昨日ですべて包帯などが取れました。まだかまれた手首が痛みますが、これは治ったと思って無理をして再び痛めのもあります。(>_<)
ゆっくりですが治ってきております。ありがとうございます。
こんにちは。
大変な思いをされたと思いますが、ご無事で何よりです。
実は6日に中央アルプスの山に登った際、初めて熊を見ました。大木の裏にいて向こうが先にこちらに気づいて藪へ逃げていきました。距離は10メートル以内だったと思います。コメントを読み、自分は運が良かったんだと思いました。時間の問題でいつか遭遇すると思っていたので、鈴を2つとクマスプレーを装備していましたが、あの距離で襲われていたら何も抵抗出来ず、さらに登りの急斜面でしたので命が無かったかもと振り返っています。なのでより一層zaikunさんのコメントが鮮明に伝わってきます。
その日、滑落したけど足に軽傷を負っただけで何とか下山している人と遭遇したりと、健康な体あっての登山だなとつくづく思う1日でした。
いつも優しいzaikunさんにまたお会いできる日を楽しみにしています。今は焦らずゆっくり過ごして下さい。本当にご無事で良かった。
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