南八人山〜石仏山☆大峰の深奥部の好展望の山へ


- GPS
- 05:53
- 距離
- 10.1km
- 登り
- 1,010m
- 下り
- 1,012m
コースタイム
天候 | 1日目;曇り、2日目;晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・高津川の左岸に明瞭な作業道あり、渡渉しながら水線を辿ることも出来るが上流に狭隘なゴルジュあり ・南八人山への登りは説梯子があるが、崩壊中であり、通行は慎重を要する ・石仏山から南東の尾根は登山道はないが尾根は下降しやすい。しかし、尾根の末端は崖なので右手の植林帯を降る必要あり。 詳しくは感想にて |
その他周辺情報 | 湯泉地温泉 http://totsukawa.info/joho/totsukawa_onsen_gou/ 温泉はアルカリ性の硫黄泉で、かなり泉質が良い。 |
写真
感想
大峰山脈の南部、証誠無漏岳から南西に派生する尾根の先に八人山山系なる山々がある。標高1396.9m三角点のある中八人山を中心に南八人山、西八人山があり、さらに中八人山の東に奥八人山、西八人山の北には北八人山と呼ばれる小ピークを合わせて八人山五山を数えるらしい。八人山とは変わった山名であるが、山の所有者が八人いたことに由来するという説がある。最高峰は南八人山で標高1402mあり、このあたりの大峰主脈の山々よりも標高が高く、地図からも存在感のありそうな山塊であることが推しはかられる。
この山域は日帰りは困難なので、テン泊山行を考えたいところであるが、南八人山のあたりは山頂付近は草原が広がり、テン泊に適地が期待できそうだ。問題はアプローチが容易ではないことだ。一般的なのは北側の内原林道から入り、石仏山を経て中八人山に至るルートのようだが、南に流れる大野川沿いの林道から入り、その源流域を周回する山行を考える。
R425から大野に向かう細い道を北上すると、片川(かたごう)と呼ばれる小さな限界集落がある。集落にはせせらぎの里という民宿があるようで。道路沿いには随所にその看板を見かける。
高津川との出合に至ると、車が10台近く停められそうな広い道路余地が設けられてあり、ここに車を停めて出発する。
左岸には明瞭な道が続いているが、川を幾度か渡渉しながら水線に沿って上流へ遡行する。平流が続き、遡行は容易に思われたが、やがて谷幅が狭くなり、ゴルジュが現れると水の中に入らない限り遡行を続けられなくなる。左岸の急斜面を這い上がるとすぐにも明瞭な道に合流することが出来る。ゴルジュを左手にみながら高巻くと、すぐにも古い小屋の跡がある。小屋は完全に崩壊し、永遠に廃棄されない粗大ゴミと化している。
小屋を対岸に渡渉するとモノレールがあり、そのレールに沿って道が続いている。尾根の取り付きはかなりの急登であるが、モノレールを掴みながら尾根を登る。よくぞこんなところにモノレールを通したものだと思わず感心する。
やがてca900mのあたりからモノレールが尾根の西側をトラバースするようになると、道には頻繁に鉄梯子や鉄の網による小橋が現れるが、その多くが崩壊しつつある。あと数年もするとすると完全に通行できなくなるのではないかと思われる箇所がある。
ca1060mで再びモノレールが尾根に乗るようになると、モノレールの周りには馬酔木などの低木が繁茂している。つまりはモノレールが最後に使用されたのはこれらの低木が成長するよりも以前ということだ。ca1150mで尾根が唐突に終われるとモノレールは正面の植林の斜面を左手にトラバースしてゆくが、ここでモノレールを離れて南八人山のピークに至る右手の尾根に乗る。
尾根は急登ではあるが、下生のない自然林の樹林が広がっている。踏み跡らしきものは全くないが、ジグザグと尾根を登る。尾根の上部で斜度が緩やかになると、唐突に樹林が切れて、樹木のない広々とした草原に飛び出す。草原に繁茂しているのはおそらく岩姫蕨であろう、この季節はまだ冬枯れた草によるベージュのカーペットが広がっているばかりだ。
背後を振り返ると重畳と連なる山並みが見える。尾根を登ってゆくと、南八人山の山頂が近づくと風が強く、まばらに生える樹木からは轟々と唸るような風なりの音が聞こえる。山頂から南西に斜面をわずかに降ると、段丘状の平坦地があり、ここにテントを張ることにする。風鳴りの音は相変わらず稜線から聞こえるものの、稜線の強風が嘘のように風が感じられない。正面には南奥駈道の山々を眺める絶好の展望地でもある。
風はないものの、この日は気温が低いようだ。流石にテントの食事をするには寒いので、テントの中で牛ステーキを焼く。ビールのあとはオレンジワインと赤ワインを飲み干すと、早々に眠りにつく。
翌朝、テントを撤収して5時半に出発する。昨日と同様、稜線に乗ると途端に風が冷たいが、中八人山への緩やかな吊尾根を歩き始めるとさほど風は感じられなくなった。尾根には踏み跡が続いている。南八人山のあたりは風の通り道なのだろう。東の空から昇ったばかりの朝陽が周囲の山々の斜面を柑橘色に染めている。
中八人山の山頂は樹林の中の狭いピークであったが、その周辺に南八人山ほどではないにせよ小さな草原が広がっており、西八人山にかけて快適な広い稜線が続いている。北側には釈迦ヶ岳と彼方に八経ヶ岳が大きな山容を広げている。展望の眺めながら草原の広がる東斜面を緩やかに登って西八人山のピークを踏みに行く。
西八人山から石仏山にかけては雰囲気は一転し、細尾根にブナの樹林が続く。尾根を西に進み標高が低くなるにつれて急にブナが少なくなり、コナラや褐色の滑らかな樹肌を見せるヒメシャラが目立つようになる。ところどころで満開の三葉躑躅が鮮やかな赤紫色の花を咲かせている。なだらかで歩きやすい尾根が続くせいもあって順調に距離を稼ぐ。気がつくと石仏山の双耳峰が目の前に迫っている。
石仏山の三角点のあるのは北峰である。小さな鞍部を経て南峰に登りかえすと山頂は朝陽を浴びる三葉躑躅のおかげで華やかな雰囲気だ。出発地点に戻るにはいくつかのルートが考えられるたが、この南峰から南東に伸びる尾根を下降することにする。
尾根は降りには無理のない斜度が続いており、藪もなく、順調に下降することが出来る。ca880mで尾根が平坦になったところで、植林の中へと入ってゆく。驚いたことに尾根の右手から地図にはない林道が上がってきている。この林道を降るという手も考えられたが、植林の尾根を直進することにする。
尾根芯には馬酔木などの低木が繁茂しているが、その間に作業道と思われる薄い踏み跡が続いており、随所のピンクテープも付けられている。順調に末端までこのまま順調に下降できるものと期待したが、尾根の末端が近づき、下に林道が見えてくると、どうやら末端部は崖になっているようだ。手前の左手の植林の斜面をトラバース気味に降って林道に着地することが出来る。
下から尾根の末端を見上げると高さ10mほどの崖が続いており、到底、ここから降りることが出来るようなものではなかった。林道を歩き始めると、その先の小さな谷の右岸から廃林道が合流している。先ほどの植林上部が林道がここに続いているようだ。次にこの石仏山に登ることがあったら、この林道を辿るのが良さそうだ。
最後は出発地点まで林道を歩いて1kmほどの距離だ。出発点が近づくと、渓流釣りの二人の男性が林道を登って来られる。出発地点に戻ると他に二台ほど車が停められていた。八人山にここから登る登山者がいるとも思い難い。
車に乗り込むと湯泉地温泉に向かう。ここの公衆浴場である滝の湯は朝8時半から空いているのが有難い。しかし、この後、思いがけない波乱が待っているのだった。車から降りて脇腹に違和感を覚えて触ってみると、なんと見たこともないような巨大なマダニが皮膚に噛みついているではないか。マダニは皮膚に刺入した差し口をかなり堅固に固定しているので、力づくで除去できるようなものではない。
燃料用のメタノールがあったので、ティッシュに湿らせてマダニの上にあててみるが、一向に効果がない。温泉の受付の女性が噴射式のマダニの忌避剤を貸して下さるが、取り付いてしまったマダニには効果はないようだった。温泉に入ってとれることを期待したが、残念ながら温泉にはそのような効用はなかったようだ。
このまま休み明けに皮膚科を受診するまで、週末の間をマダニと共に過ごすのだろうかとすっかり暗澹たる気分になったが、温泉から上がったところで受付の女性が医者にとってもらったらいいのではと仰る。果たしてどこに病院があるのかと思えば、すぐ近くの十津川の役場の前に診療所があり、土曜日は11時まで診療しているとのこと。
車で移動すると、このような辺鄙な場所にはそぐわないような瀟洒な建物の診療所がある。受付でマダニに噛まれたことを伝えるが、肝心の場所を触ってみるとマダニがいつの間にかいなくなっていた。果たして何が効いたのかわからないが、一件落着である。マダニから解放されたおかげですっかり晴れやかな気分で京都への長い帰路につくことが出来るのであった。
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