三遍目の三瓶山☆望外の霧氷の頂へ


- GPS
- 05:46
- 距離
- 10.3km
- 登り
- 1,005m
- 下り
- 985m
コースタイム
- 山行
- 4:56
- 休憩
- 0:47
- 合計
- 5:43
天候 | 曇りのち晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
女三瓶山〜男三瓶山の間は積雪時は滑落の危険性のあるトラバース箇所あり、安易にここを辿ることはお薦めできない(詳細は感想にて) ※以下のにっしーさんのレコもご参照を |
写真
感想
三瓶山は出雲と石見の国境に位置し、東の大山と並んで古くから信仰の対象の山だったらしい。古くは佐比賣(さひめ)山と呼ばれ、出雲の国造りに際して日本海の対岸から土地を寄せるための縄をこの山に杭を打って固定したという伝説が出雲風土記に記されているとのことだ。三瓶山という山名はこの佐比賣山に由来することはいうまでもない。
前日に大万木山から山麓にある三瓶温泉に移動する。女夫松(めおとまつ)登山口のすぐ近くにある国民宿舎のさんべ荘が泊まりたかったのだが、なぜかこの日は全く予約をとることが出来ず、近くのさひめの荘に泊まることにした。なんと翌日から藤井聡太王将と羽生善治九段の王将戦がここで行われるためのようだ。さんべ荘の近くを通りがかると二人の名前が記された幟が多く立てられている。
三瓶山は三遍目だ。最初は五年前の風薫る5月、二回目は丁度、コロナ禍が始まる前、三年前のほぼ同じ時期だった。前回の山行時にもこの時期にしては非常に雪が少なかったのだが、それにも増して山麓から見上げる今回の三瓶山には雪がないように思える。
当初、女夫松から三瓶山のピークを周回することを考えていたが、男三瓶山の南斜面の急下降を避けるの周回コースが短くなることを考えて西の原からアプローチすることにする。早朝に起き出して宿の外に出るとチラホラと雪が降り始めた。西の原の登山口にから歩き始めると男三瓶山と子三瓶山のシルエットが東雲の空を背景に朧げに浮かび上がる。
山麓の草原地帯を緩やかに登り、男三瓶山への登山道と分岐を過ぎると扇谷へと入ってゆく。谷には水が全く流れていない。山全体が火山岩で出来ているせいもあるかもしれないが、この谷は侵食によって出来たものではなく、二つの溶岩ドームの形成に伴って出来た谷だからだろう。谷を緩やかに登るうちに雪は降り止んで、空が明るくなってくる。
男三瓶山と子三瓶山の鞍部にたどり着くと男三瓶山、女三瓶山はすっかり雲に覆われている。まずは赤雁山の笹原の爽快な稜線を辿って子三瓶山に向かう。子三瓶山も丁度、雲の下端なのだろう。山頂にたどり着くと周囲の景色がガスに霞む。山頂の上はかなりの強風だ。早々に風越に向かって下降することにする。
子三瓶山からの下降は普段はさほど難しいことはないのだろうが、うっすらと薄雪が積もった状態では岩が滑りやすいので、足場を選びながら慎重に下降する。降っていくうちに女三瓶山が雲の中から姿を見せる。相変わらず男三瓶山はすっかり雲の中ではあるが、先ほどから雲は明らかに上昇傾向のようだ。室ノ内を横断している間に男三瓶山にかかる雲も取れてくれることを期待したいところだ。
無事、風越に室ノ内と呼ばれる古い火口に降ると、先ほどの子三瓶山の山頂における強風が嘘のように風がない。同時に途端に積雪が現れる。ほとんど使用する可能性はないかと思われたが、折角携行してきたスノーシューをここで装着する。そういえば前回の山行においてもこの室ノ内だけは役に立ったことを思い出す。雪の下は笹原が広がっている箇所が多いのでスノーシューがなければ大きく踏み抜く可能性が高いだろう。
鳥地獄と呼ばれる雪原に出る。ここは二酸化炭素の濃度が高く、そのために鳥が落ちることがあるというが、そのために登山者が遭難したという話は聞かない。雪原の中には多くの低木が生えているが、悉く柏の樹だ。葉が褐色に変色したまま落葉してないものが多い。
室内池はほとんど凍っていた。この池は訪れるたびに神秘的な雰囲気が感じられるところであり、池面が凍っていても特異な雰囲気がある。静かな池のほとりでコーヒーと行動食で一息つく。
室内池を過ぎると室ノ内の北側は高木の自然林が広がる。九十九折りに東側斜面を登って鞍部に到着する。鞍部からは正面に子三瓶山が見える。家内は「プリンをひっくり返したようだ」というが確かにそのような形状に見える。
女三瓶山にかけては南斜面のせいか全く雪がない。整備された石畳の道を九十九折りに登り、山頂に到達すると他のピークが一気に視界に飛び込む。男三瓶山の先ほどまで雲に覆われていたあたりは霧氷がびっしりとついている。雲がかかっていた早朝からのわずか数時間の間にこれだけの霧氷が発達したのだろうか。
山頂にはわずかに雲がかかっていたが、眺めているうちに急速に雲が上がり山頂が姿を見せる。これから山頂にかけてあの霧氷の尾根を辿るのかと思うと快哉を叫びたくなる。山頂の南東にはスキー場を擁する山は琴引山と、その左手に昨日登った大万木山が見えている。
女三瓶山から男三瓶山にかけての尾根は最初に訪れた2018年の直前に鳥取県西部の地震で登山道の損傷が生じ通行止めになっていたが、3年前の4月に通行止めが解除される。それは前回訪れた直後のことだった。今回こそ、この女三瓶山から男三瓶山にかけての吊尾根を歩きたいものだと思っていた。
小さな鞍部を過ぎると尾根はすぐにも好展望のパノラマが広がるようになる。霧氷の樹林に入ると、まもなく急峻な登りが現れる。犬戻しと呼ばれるところだろう。登るにつれて周囲の霧氷はますます発達してゆく。山頂が近づくにつれて足元の雪が急に増える。雪の上には数日前のものと思われるツボ足のトレースが残っている。雪は十分に締まっているが、むしろクラストしているところがあり、急斜面では慎重に足場を確認しながら登る。
核心部は山頂部直下のトラバースだろう。スノーシューを履くことなく通過するが、ツボ足でもここはチェーンスパイクやアイゼンがあった方がいいだろう。あるいは藪を漕いで尾根芯を進む方が良かったのかもしれない。トラバースを終了すると途端に広々とした山頂台地の一角に飛び出した。
山頂は高木が一切見当たらないのは荒天時の風衝のためだろうか。すぐにも瀟洒な避難小屋が目に入る。山頂には数名の登山者がいる。山頂には数名の若者達のパーティーがおられ、記念撮影を頼まれるので、我々も写真を撮って頂いた。
山頂台地の南の端を訪れるとここからも他のピークが一望のもとだ。子三瓶山や孫三瓶山は笹原の広がる斜面とわずかに残る雪のコントラストが美しい。左に目を向けると日本海の長い直線的な海岸線が目に入る。
下山は眼下に西の原の広い牧草地、正面には大江高山をはじめとする石見銀山の周辺の山並を眺めながら樹木のない草原の尾根をダイナミックに下降してゆく。正面の空にはますます青空が広がってゆくのだった。
西の原の駐車場には数多くの車が停められているのが目に入る。足元の登山道には一人分の踏み跡しか見当たらない。落葉松の樹林を九十九折りに下るようになると、二組の登山者とすれ違う。男女の一組にはすれ違い様に「山の上には雪がありますか?」と聞かれるので「山頂部に少し」とお答えすると「大分、雪が融けたんやなぁー」と仰って登っていかれた。
西の原に降りて再び三瓶山を見上げると山の上の方には霧氷はほとんど見当たらなくなっていた。駐車場に戻ると「シャトルバス乗り場」との案内がある。どうやらここに駐車されている人のほとんどは王将戦の大盤解説会場を訪れるのが目的のようだ。そういえば、前回の登山でここから登った時には駐車場にはほとんど車がなかったことを思い出す。
雪は少なかったものの好展望に加えて望外の霧氷を堪能することが出来た山行であった。容易には再訪できないところではあるが、機会があれば何遍でも訪れたい山だが、次回はあの避難小屋に泊まってみたいものだと思う。下山後、200名山の一つであることを知るのだった。
三瓶山は田中陽気氏のグレートトラバースで知ったのですが、あの樹木のない嫋やかな尾根の起伏は妖艶な女性のうなじのようで歩いてみたくなったのです
そんな時に山猫さんのレコに触発されて登ったのは3年前、都市では丁度コロナが流行り始めていたころでした。今でも鮮烈に覚えています。
藤井壮太の王将戦があって宿が満室とのこと、私の時はコロナを避けての行楽客で国民宿舎もさひめ野も満室で車中泊しました。
当時は島根県西部地震の影響で女三瓶から男三瓶稜線は通行禁止でした。今回は霧氷のおまけつきですか。風もない静かな室ノ内は鳥地獄ではなく妙に落ち着ける処でした。今回は池は凍結、雪があって神秘的で違う趣があったのでしょうね。
男三瓶への急登は息絶え絶えで難儀しましたがその分、孫・子・女ピークからの眺望は爽快でした。三瓶山と裾野に広がる西・東・北の原の広大な草原地帯、もっと歩いてみたい‥忘れかけていたことを思い出しました。
三瓶山はピークをつなぐたおやかなな稜線もさることながらブナ林の広がる男三瓶山、樹木のない子三瓶山、疎林の広がる孫三瓶山とそれぞれのピークに個性があって面白いですね。女三瓶山〜男三瓶山の稜線は白眉と云えるかもしれません。私もここはまた違う季節にでも訪れてみたいものだと思います。都合が合えばお供いたしますよ
私も20年前の3月上旬に初めて積雪期の縦走をし、ちょっと驚きました。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4876628.html
その時は写真を撮っていなかったので、山猫さんの32・33枚目の写真が貴重でした。
コメントならびに貴重なレコのご紹介有難うございます。
レコで記されている詳細な地図に吃驚しました。確かに地図のLのあたりですね。
積雪期はここはかなりの難度になると思いますので、私もそのことをもう少し強調して、安易にこのコースに入らないように注意を促すべきだと思いました。
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