クワウンナイ川〜トムラウシ山〜トムラウシ温泉


- GPS
- 54:55
- 距離
- 33.7km
- 登り
- 2,009m
- 下り
- 1,943m
天候 | 8/24 曇り、 8/25 曇りのち雨、 8/26 雷雨のち曇り |
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アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
飛行機
|
その他周辺情報 | ・トムラウシ温泉新得町営国民宿舎東大雪荘 |
写真
感想
何年か前に、椎名誠の「赤眼評論」をパラパラとめくった。そのなかの「トムラウシ温泉」という文が目をひいた。ハエがあちこちうれしそうにとび回っている食堂、ナマヌルイ鹿肉にナマヌルイビール、空中をけたたましく舞う羽アリ、トムラウシといういかにも北海道らしい名前と「秘境」という名に騙されたアホな旅……。ぜひ一度行ってみたいと思っていたことが今回実現できた。せっかくの機会なので、トムラウシ温泉(日本百名湯)・トムラウシ山(日本百名山)・クワウンナイ川(日本百名谷)と”百”の三本立てにした。
8月24日(曇り)
旭川からタクシーで、天人峡温泉のすぐ手前の天人橋にはいる。そこからポンクワウンナイ川に向かうジャリ道を歩いて20分ほどでポンクワウンナイ川出合に着く。靴をはき替え遡行を始める。しばらく行くと函がある。右岸を巻きながら進む。そのあと、また河原が明るく開け、徒渉を頻繁に繰り返す。沢幅が広がったところを、大きなフキの葉が覆っているのが、いかにも北海道らしい。ときどき柱状節理の岩が現れる。遡行を始めて3時間近く経って右岸の前方にある岩峰が気になり出す。ちょうど14時ごろこの岩峰の真西を通過する。そのあと、流れが2すじになったりして、1:25,000地形図が「旭岳」から「トムラウシ山」に変わる。地形図上の・783あたりで 16時になったので気象通報を聞き、天気図を記入する。相変わらず徒渉を頻繁に繰り返しながら、左岸を大きく1度高巻くと幅の広い薄茶色の小滝がありその向こうにはじめて高い山の稜線らしきものが望めた。そのあと、もう1度左岸を高巻き、両岸によさそうな幕営地をいくつも見過ごしながら、18時近く・876 の少し下流のところにツエルトを張る。
8月25日(曇りのち雨)
北海道というと激しい虫の襲来を連想してしまう。かつて、おびただしいほどの蚊にたかられながら、北海道特産種のジョウザンシジミやヒメウスバシロチョウを採集した小樽の石山。あるいは、絶えず10匹以上のアブを体に付けながらコヒオドシを追いかけた摩周湖。今度も……と覚悟していたが、思っていたより虫が少なかった。話によると、お盆を過ぎると急に減るらしい。でも、「よかった、よかった」というのは甘かった。朝、起きてみると顔の左半分がブヨブヨにふくらんでしまっている。ブヨのせいだろうか。痛みやかゆみはほとんどないので、あまり気にはならない。
6時半に出発。数回の徒渉と巻きで、カウン沢出合(二俣)に着く。沢が左にカーブしてしばらく行くと、このクワウンナイ川で初めて滝らしい滝がある。約8mの魚止ノ滝である。魚止めが本当かどうかはわからないが、ここまでけっこう魚の姿を見たが、この先見ることはなかった。この魚止ノ滝を右岸から巻いて、落口に出ると、そこから先が滑になっている。ここから「滝ノ瀬十三丁」と呼ばれる滑床が始まる。少し行くと、10m程の滝があって右岸を巻く。足首くらいの水が、一枚岩の沢床全体を流れ、カーブするたびに少しずつ違った表情を見せ本当に美しい。水の中のコケに対してもフリクションがよく効く。1時間近く経ったところで、沢が左に折れる。そこへ黄金ケ原から落ちこむ沢が、右手から滝となって流れこんでいる。このあたりから滑の傾斜も増してくるようだ。沢の中央が、細長い溝状になって、水が勢いよく流れている。滑滝は、容易に越えられた。やがて、いつのまにか美しく長かった「滝ノ瀬十三丁」が終わって再び河原歩きとなる。20分程して「ハングの滝」が現れる。水の音もまだまだ元気だ。はじめ、左岸を巻こうとしたが、岩場の所がきびしいので、戻り右岸を巻く。しばらく河原歩きをすると二股ノ滝に着く。両股とも滝になっている。その中央の尾根につけられた踏み跡をたどり少し行って、左股(本流)に降りる。ここまで来るとさすがに水量が減り、徒渉する場所を選ばなくて済むほど小さい流れになった。しかし左右にカーブした後、まだまだとばかり広く水を落とす階段状の滝が出てきた。それを越えると、いよいよ源頭らしくなる。振り返ると左右の山腹に湿原が見おろせ、景色が雄大になってくるが、雨が降り出した。雪渓や高山植物も多く、なかなかいいところだがガスで見通しがきかない。あまり傾斜もないつめでやがて縦走路に出た。日本庭園と呼ばれるあたりだ。北に向い天沼のへりを通って1時間程でヒサゴ沼分岐に着く。化雲岳をまわって行こうと考えていたが、雷鳴が聞こえたのでそのままヒサゴ沼に下りていく。この道はほとんど雪渓の上になっている。ヒサゴ沼の幕営地で山に入って初めて人の姿を見た。テントは4張。激しくなった雨の中、避難小屋に入る。中の人数は30人程だろうか。1人マット1枚分ぐらいの広さで一夜を過ごす。
8月26日(雷雨のち曇り)
雨もやんでいて化雲岳のほうも見えている。”これはいいな、いまのうちに”と思ったが、歩き出して30分もしないうちに雨が降り出し、なんと朝から雷も鳴ってくれている。昨日の道を戻りさらにトムラウシ山の登りにかかると、雨と風はさらに激しくなった。山頂に1パーティーいたので、握手している写真を撮ってもらってすぐにトムラウシ温泉の方へ向かって下り始めた。十勝岳へ続く縦走路と分かれるあたりからトムラウシ公園までは、草原・お花畑の中に奇岩が乱立しきれいな所だ。尾根を越えると前トム平。雨が弱くなって、ナキウサギが岩場から出てきて「ピーッ、キーッ」と鳴いている。ヒサゴ沼あたりから前トム平までこの声をずいぶん聞いた。ここから本格的な下りになる。雨は降ったり止んだり。カムイサンケナイ川沿いの登山道は、沢が増水していてまるで沢下りのようである。沢から離れしばらく行くと、左手に前トムラウシ山が望める。カムイ天上からは、やや急に下った後、ゆるやかに下るようになる。道が広くなり、青空も出てくる。ゆっくり下って行くとやがて林道に出る。そのまま横切って少し行くと待望のトムラウシ温泉・新得町営国民宿舎東大雪荘に着いた。東大雪荘は、期待に反し本に書かれて改善の努力をしたのか実に快適な所だった。よく冷えた生ビール 500円は、軽くジョッキで3杯いってしまった。鹿肉の陶板焼 800円もちゃんと目の前で、火をつけてくれる。部屋には、網戸も入っていて、ユートムラウシ川の音を聞きながらよく眠った。
8月27日(曇り)
トムラウシ温泉から出るバスは1日1本、14:10発 拓殖バスがあるだけである。朝8時頃、お湯を入れに来たトラックが乗せてくれるというが、やはり昼過ぎのこのバスに乗るというのが、トムラウシ温泉の味わいであろう。だらだらと時を過ごしていると、あっという間に昼過ぎになってしまった。バスに乗ったのは、自分たちのほかに2人。やはり、東大雪荘に泊まった人たちである。新得までの1時間半、ほかに誰も乗ってこなかった。運転手さんの話では、お盆前の最盛期でもいっぱいになることはないという。「十勝支庁からです。」と言って、"山火事注意"と書かれたしゃもじを配ってくれた。地図で見ていて、ゆるやかな山間を十勝川に沿って、ニペソツ、ペンケベツ、パンケベツといった部落を通って行くのを楽しみにしていたが、ほとんど寝てしまった。新得駅から列車で上富良野へまわり、4軒ほどあった駅前旅館を覗き比べて、いせや旅館というところを選んで素泊まりをする。
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