壇山☆豊島に瀬戸内芸術祭と猫を訪ねて


- GPS
- 00:58
- 距離
- 3.3km
- 登り
- 90m
- 下り
- 91m
コースタイム
- 山行
- 0:49
- 休憩
- 0:09
- 合計
- 0:58
過去天気図(気象庁) | 2022年08月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
夕方の船で宇野港から豊島(てしま)の家浦港に到着する。夕食は金栄丸(きよまる)食堂という古民家の食堂を予約していたのだが、少し時間があるので、港の周辺を散策する。小豆島は別として、瀬戸内海の離島は港から離れると急に人の気配が感じられなくなるのだが、この豊島も例外ではない。
古い民家が立ち並ぶ通りを西に向かうと、家も疎になる。小さな漁船が係留されている小さな入江を回り込んで、防波堤に向かう。近隣の家に住んでいるのは人ではなくて猫ではないかと思うほどに猫が多く現れる。こちらが近づくと逃げて行く警戒心の強い猫もいるが、全く動じない猫が多い。
一匹のキジトラの猫が近づいてくる。どうやらこの猫だけは非常に人懐こく、体を足元に擦り付けてくる。驚くほど我が家の猫に顔つきが似ている。写真を撮ろうとレンズを向けるとすぐにこちらよくよく見ると猫の耳に小さな傷痕があるのは去勢手術を受けた印だ。その場を去るとなんとも寂しそうな顔でこちらをじっと見つめていた。
夜半に雷鳴の音で目が醒める。まもなく屋根を叩く驟雨の音が始まる。時折の雷光が部屋を明るくさせるかと思うと、雷鳴までの間隔が短く、音も大きくなっていくようだ。やがて空が白み始めると雨の音が弱まり、雷鳴もおさまったところで再び眠りついた。
朝になってもまだ小雨は降り続いている。レンタカーを扱う島のガソリン・スタンドに電話するとレンタカーは空きがあるというので借りに行くが、宿を出るとすぐにも雨は上がる。
豊島は島のほぼ中央部に壇山と呼ばれる山がある。電波塔を戴くその山頂部は辛うじて雲の下のようだ。島のアート関連施設はそのほとんどが開くのは10時からなのでまずは壇山を訪れることにする。
家浦から唐櫃の方に向かうと、すぐに壇山に向かう道が右手に分岐し、壇山の登山口の標識がある。道は舗装されたなだらかな坂が続いており、電動自転車でも登れないことはないだろうが、雨上がりの蒸し暑い空気の中を自転車で登るのは大変だっただろう。
ベンチが置いてある展望台があり、直島と宇野の方面の展望が大きく広がるが、宇野がある児島半島の山には雲がかっている。
舗装路の終点で道幅が広がっているので車を道路余地に停めて出発する。未舗装の林道を進むと山頂への道が左手に分岐する。道は再び綺麗に舗装されていた。すぐに山頂の電波塔が視界に入るが、濃い霧のせいでそのシルエットは霞んでいる。
しかし我々が山頂に到着すると、カーテンを引いたかのように急に広がる。山頂の電波塔の脇には展望台が設けられていた。展望台からは眼下に唐櫃の棚田と豊島美術館が目に入る。美術館といっても半ば地面に埋もれた白く、大きな穴の空いたドームが見えるだけなのだが、それはまるで何かの生物の卵のように見える。海の先では小豆島の山々が重苦しそうに雲を纏っている。折しも山の東側にかかる雲の間から光が差し、あたりを淡い黄金色に輝かせる。
山頂から下るとまだ時間に余裕がありそうなので、広い山頂台地の南側にある岡崎展望台を訪ねることにする。先ほどの林道に戻り、東に進むと再びあたりには霧が立ちこめるようになる。唐櫃から登ってくる道と合流すると再び舗装された道路となる。なだらかな道を歩いて山頂台地の南縁を辿ると、四阿のある広場に出る。案内板の類はないが岡崎展望台広場のようだ。
雲の間から、海の向こうに朝陽を浴びて明るく輝く高松の市街が見える。その左手には辛うじて雲の下から屋島が広いテーブル状の山頂を見せている。雲の間から眼下に見える小さな港のある集落は甲生(こうう)のようだ。
岡崎展望台からは道を北に辿って、先ほど分岐点まで周回することにするが、林道はすぐに荒れた道に変わる。倒木がないのは良いが、道の両側から生い茂る笹が藪化しており、おまけにオニグモの巣が頻繁に現れる。
小さな谷に出たところで突然。道がなくなる。地図では先ほどの分岐から伸びる実線の道と合流する筈なのだが小さな溜池があるもののその周りに道らしきものは見当たらない。溜池の北側には廃屋が見えるので、廃屋を目指して藪をかき分けて進む。廃屋にたどり着いても一向に道は現れないので、藪こぎが続く。問題は藪の中に頻繁に悪意のある棘の植物が出現することだ。
ようやく道路に出て藪漕ぎから解放されたのは廃屋の東側に出たところだった。廃屋の雰囲気からするとここが放棄されてからそう長い時間は経っていないように思われるが、人が住まなくなると周囲が藪化するまではそれほどの時間は必要としないのだろう。
壇山の山頂部はすっかり雲に覆われているようだ。再び霧の立ち込める林道を歩いて出発点に戻る。車に戻ると道路を降って豊島美術館を目指す。家浦から唐櫃に向かう道路は多くの人が自転車を漕いでいた。豊島を周回する道路は驚くほどアップダウンが激しい。島のレンタサイクルは全て電動自転車のようだが、それでもかなりの運動を強いられるのではないかと思う。
美術館を訪れた後は駆け足ではあったが、折角借りたレンタカーを駆使して豊島のアート作品を一通りめぐる。とりわけ印象的であったのは島の東岸の浜にある「心臓音のアーカイブ」の作者クリスチャン・ポルタンスキーによる「ささやきの森」と、甲生の集落の廃屋を利用した冨安由真氏の「かげたちのみる夢」だった。
ささやきの森は集落から林道を1kmほど登ったところにあるので、訪れるのがそれなりに大変だろうが、非常に人工的であるものが実に自然であり、なおかつ幻想的な光景であった。小泉八雲の小説「和解」に着想を得たという冨安氏の作品はこれまた自然に現実と非現実の間を体験することの出来るものだ。しかも古い廃屋という舞台があってこその作品であり、まさにここを訪れないと鑑賞することの出来ないという意味で、こうした芸術祭ならでは作品といえるだろう。
午後は犬島に渡る予定だったので、レンタカーを返却して家浦港に戻ると船の出港時間まであと10分を切っていた。しかし、波止場には肝心の船が見当たらない。なんと航路の乗務員がコロナに感染したために犬島と直島に渡るための航路が一昨日から全便運休となっていたのだ。仕方がないので港の近くの食堂「豊島鮮魚」でビールと共にランチを摂る。
宇野に戻るフェリーまでの間に豊島横尾館を訪れると急速に晴れ空が広がっていき、急に暑さが感じられるようになった。
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