毛勝山(200名山)〜ノー・トレースの谷を激闘15時間〜


- GPS
- 32:00
- 距離
- 24.3km
- 登り
- 2,232m
- 下り
- 2,228m
コースタイム
富士宮市NJ氏宅07:45=13:30片貝川車止め13:55-15:45片貝山荘<泊>
(実働時間 クルマ止め(1:50)片貝山荘)
■4/29
02:45起床 片貝山荘04:07-04:10小屋前デブリ[アイゼン装着]04:20-05:43板菱上部[Junjapaアイゼン外れ]05:53-06:35二又(大明神沢出合)06:45-07:45三又上07:55-08:45標高1710m地点08:55-09:50標高1920m地点10:05-10:55標高2085m地点11:05-12:35ボーサマのコル12:50-13:05毛勝山頂上13:10-13:20ボーサマのコル13:35-14:50標高1500m地点15:00-15:50板菱下[NJ氏顔洗う]-16:35堰堤脇[アイゼン外す]16:45-17:05片貝山荘[荷物PickUp]17:30-18:55駐車場
(実働時間 片貝山荘(2:08)二又(5:10)ボーサマノコル(0:15)毛勝山(0:10)ボーサマノコル(1:15)1500m地点(0:50)板菱下(0:55)片貝山荘(1:25)クルマ止め)
天候 | 4/28(日) 晴れ 4/29(月) 曇り〜晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
[復路]片貝川クルマ止め=富山市(泊)=安房トンネル=松本IC=中央高速=瑞穂IC=富士宮市(NJ氏DropDown)=東名高速=吉田IC=吉田町 |
コース状況/ 危険箇所等 |
■コース状況 ■魚津IC〜片貝川通行止め(駐車スペース) ・片貝川沿いのよい舗装道路が続く。 ・最終集落を過ぎ、さらに片貝第二発電所をすぎた片貝川と柏尾谷の合流点の500mほど上流の標高340m地点付近で通行止めとなっている。路肩にクルマを停める。駐車スペースは30台ほどはあるだろう。 ■駐車スペース〜片貝第四発電所 ・ゆるやかな坂道の舗装道路が続く ・いったん右岸にわたりまた左岸にわたり返し、第四発電所からの水をためる貯水池を左にみるとやがて南又谷の支流を橋で渡る。 ・その上に南又谷・426mの林道分岐だがそれを示すものは何もない。 ・南又谷の道はどこまでかは確認できていないが分岐地点では良好な道。 ■片貝第四発電所〜片貝山荘 ・東又谷の道は、片貝第四発電所からは未舗装の道路となる。 ・ところどころ山側からの岩の崩落が起きていたり、山側からのナダレでデブリがあったりで、道がふさがれている。そのたびにその裾を回り込んだり、上を乗り越えたりする必要がある。特にアイゼンなどは不要。 ・いったん左岸から右岸にわたり返し、そのまま尾根を回り込むと片貝山荘が対岸に見えてくる。 ・片貝山荘までもいくつかの地点でナダレのデブリや崩落がある。 ■片貝山荘 ・片貝山荘はもともと発電所の寮(東又寮)だったところを魚津市教育委員会が開放しているもの。 ・特にカギなどはなく自由に入れるが、規則にしたがって事前に予約はしていった。(他に泊り客はなかった) ・基本的に無人の避難小屋と考えればよいが、ブレーカーをONにすれば電気がつく。電気ゴタツも1つあり、2階で暖かく過ごさせてもらった。毛勝山へのベースとして重要な存在。水はすぐ下を沢が流れているが、手が届かない。上下流のどこかで沢に下れないことはなさそうだが、持参していった。 ・申し込みはこちらから。 http://www.city.uozu.toyama.jp/download/svDLAplDtl.aspx?servno=11 ■片貝山荘〜大明神沢出合(1250m・通称二又) ・片貝山荘からも林道は続くが山側からのデブリが激しくなり、早朝でクラストしていたため、片貝山荘の先からアイゼンを装着した。(滑落すると沢まで落ちてしまうため注意) ・地形図上の・713の手前で僧ヶ岳への登山口がある。登山口には毛勝谷で遭難した人たちのプレートがある。合掌。 ・東又谷をわたる橋を通り、いよいよ阿部木谷に入って行く。このこのあたりから雪が優勢となる。 ・毛勝山北西尾根の指導標は特にないが、橋をわたってすぐのあたりから登り始めるようで、いくつかのフミアトはあった。尾根は見上げるほどの急登である。 ・標高800mあたりから全面雪となるので先行者のフミアトに従う。 ・いくつかの堰堤を右に見ながらゆるやかに登り、宗次郎谷をすぎたところで小さな堰堤上で対岸に渡る。 ・ところどころデブリがあり、それを乗り越えたりしながら沢を詰める。 ・板菱(標高1030m地点)で沢は右に直角に曲がる。フミアトは左岸についている。 ・いよいよ両岸はせまって険阻になりその間を大きな白いクーロワールになった沢が上に続いている。 ・板菱で右に直角に曲がった沢が左にゆるやかに曲線を描くと白い台地状の大明神沢出合。すばらしい谷が二手に分かれて稜線まで突き上げている。 ・左側の毛勝谷は左手(右岸)の尾根からナダレのデブリがいくるも認められるが右手の尾根(毛勝谷と大明神沢の間を落ちてきている尾根)からはデブリがなく、まさにこれから落ちてくるということを予感させたのでデブリの上、またはデブリの縁を沿うようにして登り右側からのナダレに備えつつ登った。 ■大明神沢出合〜三又(1500m地点) ・大明神沢からは一段と急になる。 ・大明神沢出合からはスキーのシュプール以外トレースがなくアイゼンにワカンジキを付けた。ワカンがないとツボ足では膝くらいまで潜りとても進めない。 ・ナダレの恐怖におびえながら三又まで来るとこれからたどる沢筋がコルに向かって急激にせりあがっている。 ・ワカンを付けていても膝から腿までもぐり100m進むのにも時間がかかる。 ■三又〜ボーサマ谷出合(2060m地点) ・すぐそこにコルが見えるような錯覚におちいり気がせくが、実は非常に時間がかかった。 ・毛勝山頂上直下から落ちてきているルンゼに登りそこから登るべきボーサマ谷に向かってトラバース気味に進んだが、ワカンはトラバースには不向きであり、直登するべきだった。 ■ボーサマ谷出合(2060m)〜毛勝主峰・毛勝南峰鞍部 ・最後は非常な急登であり、滑落は許されない。 ・10歩登っては休むということを繰り返す。 ・脚も疲れてくるころなので、より注意が必要。。 ・鞍部にあがると、裏劔、鹿島槍、五龍などの大展望が広がっている。 ■鞍部⇔主峰 ・短い距離だが稜線漫歩。 ・頂上には北西尾根からのトレースがあった。 ■鞍部〜三又 ・鞍部から下の谷が見えないほど急な下り。安全のためワカンジキを取りアイゼンで下る。 ・登ってきたトレースを忠実にたどるが、一部氷化しているところは緊張を強いられロープが欲しいと感じた。 ・しかし、一歩一歩、慎重に下れば、あとは登りでラッセルに苦労した分、潜るので、ゆっくり下ればよい。緊張は最初の100mほど。(雪の状態にもよる) ■三又〜片貝山荘 ・日帰りの場合、午後遅い通過となる。くれぐれも緩んだナダレに注意。 ・登りで苦労した分、また登りで遭遇しなかったという経験だけで、下りはナダレへの注意が散漫になりがち。 ■歩数 4/28 12400歩 4/29 43300歩 計55700歩 |
写真
1時までにコルに着かなければ、もう帰れなくなる。撤退しかない。
感想
■山行記録
毛勝山。劒北方の遠い山。手が届かない深山。そんなイメージが付きまとっていた。いつかはと思いながら、機会は巡ってこなかった。数年前のH2O氏との計画も天候で諦めた。
今年は雪が多いが天気も期待できるし、GWゆえ予備日も持てる。
「いつやるか?・・・♫イマでしょー!」と東進ハイスクールの教えのとおり揚々決行することにした。
立案段階では「テントを稜線に持ち上げよう」と夢のような話からスタートしたが、最終的には片貝山荘に前泊。毛勝谷を遡上し三山縦走後、南又谷を下降し片貝山荘にもどる日帰り周回プランとした。
□4/28 駐車スペース〜片貝第四発電所〜片貝山荘
魚津ICを降りて片貝川沿いの道を行くと第二発電所をすぎたあたりで突然、通行止。多くの車が停っている。皆さん毛勝山に登山しているんだぁ。安心する気持ちと片貝山荘は混んでいるんだろうなーという複雑な気持ち。しかし、これは全くの間違いなことを、あとで知る。
歩く舗装道路は杉や桧の葉が散乱してまだまだシーズン初めの観がある。上から降りてくる人たちは主に釣人か山菜採り。毛勝からの下山者には出会わない。
南又谷分岐に着くと山菜を盛りだくさん持っている人たちに出会う。
「何の山菜ですか?」
「こりゃ、こごみだよ」と、ちと訛りが強めのおじさん。
山菜はこごみ・ゼンマイ・フキノトウあたりが相場のようだ。
「クマはいますかね?」
「この上の片貝山荘あたりでさっき見たっちゅうハナシを聞いたよ」
「ホ、ホントですか〜?」
「ま、ほんの近くでなければ大丈夫じゃねぇか?」とオジサン。
「小熊を連れているとあぶないけどね」と奥さん。
シリアスなハナシを簡単にするな! 小熊を連れていたらどうするっ!と心の中でツブやく。
「ここから山荘までは1時間20分くれぇかなー。それにしても寒いぞぉ、上は・・・」とたたみかけてくる。
「ま、わかって来てますから(苦笑)」
今度はスキーヤーが降りてきた。
「今年は雪が多くて大変だね」と彼。
「頂上まで行きましたか?」
「いや、二又までしか。雪崩が落ちてきてやばいと判断して降りてきた--」
急に不安になる。
「他に登山者いませんでした?」
「自分の前にひとりいったくらい。あとは誰もいません」
あれだけ多かった車の主はどこにいったのか?と不安になる。
今度は夫婦二人連れが降りてきた。
「いや、われわれは僧ヶ岳に行ってきたから、毛勝はわからねぇなぁ」
「日帰りで周回してくるのは相当厳しいと思うね。輪かんは要らないだろうね」
結局、日帰りの周回が難しいことは正しかったが、逆に輪かんはバッチリ必要な事を後で知る。
片貝山荘に着いた。
宿泊者はわれわれだけだった。電気が来ていてコタツもあって快適。沢音を聞きながら一夜の夢を結ぶことができそうだった。すぐに一人の登山者が降りてきた。さきほどのスキーヤーが言っていた人かも知れない。
「いやぁ、今年は雪が多いや。膝からモモまで潜るんで一人じゃ無理と判断して二又で戻ってきた。おまけに回りは雪崩が落ちてくるし。今日は魚津に帰って酒のんで寝るよ。また来ればいいんだから。二又から上はトレースがないよ。」
そうこうしていると石川からという若者がひとり戻ってきた。彼は毛勝谷ではなく、東又谷本流に行っていたらしかったが、やはり引き返してきたそうだ。
片貝山荘でワイン片手に明日の行動について話す。
「テントを稜線に上げるなんてとんでもなかったですね」とワタシ。
「周回登山は無理だろうな」とNJ氏。
「ザイルは置いていきましょう」とワタシ。
実は一部急な雪壁があるとの資料があったのでNJ氏が持ってきていた。
「それにしてもこんなに入山者が少ないとは」
「トレースがないとはね」
「行くしかないとは思うけど、ちょっとタイミングが早すぎたかネ」とNJ氏。
「でも静岡から来て不戦敗もないでしょ」
「いつ行くか?」と畳みかけると
「♪イマでしょー!」(笑)
□4/29 片貝山荘〜阿部木谷遡行〜毛勝山〜[往路を戻る]〜片貝山荘〜クルマ止め
暖かく眠れた。2:45に起床。掃除をして4時過ぎに出た。まだ暗い。小屋前ですぐにデブリ。ガリガリで滑ったら沢まで一直線だ。アイゼンを付ける。僧ヶ岳の登山口を見ると橋をわたり毛勝谷へと入っていく。だんだんと雪が優勢になってきて、右岸から左岸にわたるところから雪が連続するようになる。空が白んできた。まだトレースが続きそれに従って黙々と歩く。板菱を過ぎると両岸が迫ってきていよいよ谷にはいるという感じがある。
歩いていたら突然アイゼンが外れた。どうもグリベルのアイゼン、調子が悪い。ジョイントの部分が外れてしまうのだ。部品がなくなって外れたと勘違いし、戻って探しに行ったが見当たらない。よく見たらジョイントが外れただけで部品がなくなったわけではなかった。どうも緩んだ状態では、出べその金具部分のみが押されると外れてしまうようだった。きっちり締め上げると問題なさそうだったので、再スタート。一瞬は、もう帰るしかないと思ったので良かった。
逆S字を描くといよいよ回りの壁は高まる。上部にはべっとりと雪がついている。やがて広場のような大明神沢の出合。ほっと落ち着けるところだ。ここからコルまで谷は急速にせりあがっている。さすが劔北方稜線。一級の山々だ。
ここからトレースはなくなり輪かんをつける。それでもふくらはぎからモモまで沈む。先が思いやられる。谷は広いが、主に左の西北尾根からの雪崩の跡が痛々しい。ルンゼというルンゼにデブリがある。右からの尾根からは何も雪崩がなく、これからさもありなんという感触がすごくイヤらしい。先をいくNJ氏に谷の芯でなく左のデブリ沿いを行こうと提案する。
三又。二又からは遠かった。コルはすぐそばに見えている。なんだあと30分くらいで着くんじゃないか。そんな感じすらする。しかし、斜度はどんどん増し雪は深く足は自由が効かなくなってくる。牛よりも遅い歩み。雪崩が来ても逃げるのはほとんど不可能だ。後でNJ氏が言った。「どちらが先に帰ろうと云いだすかガマン比べだったなぁ」(笑)
そして直登ルンゼを横切りボーサマ谷の入口に。左沿いを登る。わかんをつけているのでついつい歩きにくいトラバースを嫌い、直登方向に行ってしまう。そのたびにルートを右に修正する。十数歩か登っては急な雪面に突っ伏してハーハー。そんなことを繰り返してはジリジリ迫っていく。
出発して8時間半後の12:35。ようやくのことでボーサマのコルに到着した。果たしてそこには劔や後立山連峰の壮大な展望が広がっていた!! すばらすぃー! これだよ! これっ! しかしコルに上がった直後はしばらくは青息吐息で横たわってた。展望は逃げはしない(笑)。
毛勝山の頂上までは稜線漫歩。ウキウキしてくる。そしてノッペリした可愛い頂上へ。とうとう頂上まできた。そこには西北尾根から何日か前に来たであろうふみ跡。正直驚いた。
コルに戻ってきた。さぁ毛勝谷を下るぞと見るが、先が落ち込んでいて見えない。ありゃー、こんな急なところを登ってきたのか、と改めて驚く。
輪かんを外し、アイゼンで下ることにした。下り始めるとコル直下の一部氷化したところは緊張を強いられ一歩一歩カッティングして下る。一瞬、ザイルを置いてきたことを悔やんだくらい急な下りだ。NJ氏が先に行こうと言ってくれ先行してもらう。しかし危険な部分は長くは続かず、それを過ぎると軟雪になり登りに苦労した分、滑落の心配はほぼなくなる。
そこからは、雪崩が起きないことを願いつつ尻セードを交えながらテクテク下った。片貝山荘でデポした荷物をまとめるが誰もいない。明日も登山者はいなさそうだ。夕暮れの駐車場にはわれわれのクルマ一台がポツリ。あれだけいたクルマは一体どこに行ってしまったんだろ? 何か取り残された気分がした。重い荷物をよいしょと下ろすとNJ氏と固い握手をしたのだった。
後日NJ氏からメールをもらった。
『今回は下山してもしばらくは達成感よりも安堵感の方が強く、自分の現在の実力以上の山行だったと強く感じています。しかし一方で昔どこかでなくしてきたものを探しだせたような感じがしています・・・』
■感想
朝4時に出て、駐車場に戻ってきたのが夜7時。15時間。
前日に下山してきた人たちは口々に、今年は雪が多い、トレースもなく途中で引き返してきた、とてもじゃないが、登頂は無理だと云った。しかし二人で交代しながら行けるだけ行こう。偵察になってもいい。なだれは不気味だが落ちきっていると信じよう。時間との勝負だった。急斜面のラッセルの厳しさ…。目の前に見えているコルに着かないもどかしさ。力が出せない情けなさ。
いまはただただ無事に登頂できた喜びにひたっています…。
コメント
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ずいぶん早い時期に毛勝を登られたのですね〜。しかも猫又谷からでなく難しい毛勝谷から。お疲れさまでした。
私も稜線に出る直前は10歩あるいて休むほどきつかったのでお気持ちはよくわかります。稜線でへばって大の字になったのも同じです。
剱の最高の展望台ですよね。天気もよく写真も素晴らしいです。ちなみに私はGWはすべて出勤しました(泣)。代休でどこかにいければよいのですが...
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