蝙蝠岩〜三国塚〜牛塚山☆国境尾根を辿って


- GPS
- 03:52
- 距離
- 9.8km
- 登り
- 400m
- 下り
- 410m
コースタイム
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
三国塚からの江城国境尾根には登山道なし |
写真
感想
三連休の中日となるこの日のみは予定がないのだが、この日だけは天気があまり良くないようだ。とはいえ、数日前は雨の予報だったが、直前では日中は曇りの予報に変わっているのが有難い。
近江、伊賀、山城の国境にまたがる三国塚を考える。この三国塚、山頂近くまで舗装路が通じてはいるものの、さすがにそのような登り方をするつもりはない。この三国塚を訪れるのに参考になるようなレコも見当たらないが、むしろこういう情報の少ない山のルートを考えるというのは創造的な山行ルートを思案する楽しみがある。
まずは下山のルートが先に決まる。複雑な蛇行を繰り返しながら北西に進む近江と山城の国境尾根を可能な限り辿ることにしよう。次は多羅尾から近江と伊賀の国境稜線にたどり着くためのコースだ。国土地理院の1/25,000を眺めていると、多羅尾の上出の集落から南東の谷を通って蝙蝠岩の東側へと至る破線が目に入る。近江百山の本に載っている国土地理院の古い地図でもこの破線が記されており、多羅尾から伊賀へ抜ける峠越えの古道のひとつであったことが予想される。
多羅尾代官の屋敷跡の前の駐車地に車を停めると、すぐ左手の広い谷へと入ってゆく。道はススキの原の奥の植林地に入るとすぐさま細い踏み跡となる。歩く人は滅多にいないのだろう、道は倒木で荒れている。植林の広い谷間を進んでゆくと、谷は二股に分かれる。地図上の破線は右俣の右手の尾根を登ってゆくようだが、そのような踏み跡は見当たらない。植林の作業道を辿って右俣を進むと、まもなく谷の前方に林道のガードレールが見える。驚いたことにこの林道が谷を横断するために谷を完全に埋めてしまったようだ。果たしてこの谷を埋めるのにどれほどの土砂を必要としたことだろうかと思う。
左手の斜面を登り、舗装された林道に出る。ここから先は地図では右手から尾根に登ることになっているが、背丈の高いススキの原が一面に広がっており、道が見当たらない。切り通しの左手から尾根に上がることを試みるが、間伐された杉の木が当たり一面に散らばっており、歩きにくいことこの上ない。なんとか尾根に出ると、尾根上には幅の広い林道が通っているではないか。林道はどうやら先ほどのススキの中を登ってくるようだ。
林道を国境尾根に向かって快適に進むが、やがて林道は右手の斜面へとトラバースしてゆく。林道と分岐して尾根を辿る道は紛れもない掘割の古道だ。古道をたどり国境尾根に出ると再び驚くことになった。なんと尾根上には舗装された林道が現れる。三国塚林道というらしく、平成25年に竣工されたようだ。かなり大規模な林道工事が行われたようだが、最新の国土地理院の地図にも記されていない。この国境尾根では藪漕ぎすら覚悟していたのだが、この舗装道の出現には拍子抜けした感がある。
自然林の尾根上には明瞭な踏み跡があるので、本来の尾根道を辿ってみる。尾根上の小ピークca610mに達すると、展望台の道標がある。広いピークの南側に出てみると、三重側に大きく展望が開けており、東側にはいくつもの風力発電機が立ち並ぶ青山高原が広がっている。右手には特徴的な鋭鋒の大洞山とそのすぐ隣には尼ヶ岳を望む。
尾根を西に向かうとすぐに尾根上のピーク、蝙蝠岩にたどり着く。岩とあるが、蝙蝠岩らしき巨岩は見当たらなかった。このあたりは新たな林道が尾根芯を通るので古い尾根道がほぼ完全に林道に置き換わってしまっている。
蝙蝠岩からは林道は尾根の南側を走るので、再び自然林が続く尾根を辿る。自然林の尾根は快適であり、非常に雰囲気の良い尾根道が続くが、すぐ直下を走る林道がこの尾根の雰囲気を全く違うものにしてしまっている。かつては多くの人がこの尾根を歩いたのだろうが、これだけ整備された林道がすぐ脇を通るようになってしまった状況ではわざわざこの尾根を歩こうという人は滅多に現れないだろう・・・翌日にも歩かれる人がいたようだが。
尾根からは随所に南側に好展望が開ける。眼下に見える月ヶ瀬、島ヶ原の街を挟んで、木津川の対岸には多くのゴルフ場があるようだ。正面に見えるのは国見山、住塚山といった名張の南の山々と思われるが、山の上の方は雲に霞んでいる。雨雲が近づいているのだろう。
小さなアップダウンを繰り返すうちに近江、山城、伊賀の国境の合流地点、三国塚にたどり着く。小さな塚が盛られている。三重県側に下ったところにある三国越の展望台を訪れてみる。
展望台からの眺望は意外にも植林された杉の幼樹が邪魔をする。数年もすると展望はすっかり木々に遮られることであろう。小雨が降ってきたので、雨を凌ぎながら展望台の東屋でランチ休憩をとる。
雨であればとこのまま車道を歩いて多羅尾に下ろうかと後半の行程を諦めかける。しかし、笹の繁茂する斜面の中に薄い踏み跡を見出すと、やはりこの国境尾根を様子が気になる。踏み跡を辿って尾根に上がると、いつしか雨は止んでいた。
尾根は丈の低い笹が一面に繁茂しており、その中に薄い踏み跡が続いている。時折、倒木があるが通行に困難をきたすほどではない。緩やかな起伏と蛇行を繰り返しながら、なだらかに尾根は続いてゆく。自然林の尾根には赤松の樹が多く混じる。単調な景色が続くが、笹色と赤松の褐色や小楢の灰色の樹肌が柔和なコントラストを呈し、風景に飽きを感じさせない。
尾根が南西向きから北西方向に大きく向きを変えるあたりで尾根上には歩きやすい明瞭な道が現れる。地図上では破線で記されている道だろう。右手の斜面には杉の植林地が広がるようになるが、尾根上は自然林が続く。谷の源頭が現れるたびに林道の支線が入り込んでいるのが見える。
再び尾根が大きく北向きに方向を転じるところでは西から登ってくる尾根と合流する。尾根上には国境を示す古い石標が現れる。従是西山城国 従是東近江国とある。かつての山城から伊勢に至る古道だろう。おそらく今となっては滅多に人の目に触れることのない石標ではあろうが、意外にも石標は綺麗で、我々がタイムスリップしたかのような錯覚を抱くのだった。多羅尾側の斜面に目を凝らしてみたが、古道の続きは見当たらず、どうやら古道はそのまま尾根の上を続いていくようだ。
尾根上のピークp643をすぎると、目の前にのシルエット、牛塚山のシルエット近づいてくる。牛塚山のとの間には林道が横切る峠があり、この峠向かって、この国境尾根唯一の急下降と牛塚山への登り返しとなる。
牛塚山は樹林に囲まれた山頂広場があり、その中央に三角点の石標が埋まっている。牛塚山の北斜面から鞍部に下ると自然林の広々とした快適な鞍部が広がる。尾根上には踏み跡が続いているが、尾根上の小ピークp576に達すると、尾根の東側は鉄条網が張り渡された柵で囲まれており、ゴルフ場の敷地のようだ。柵に沿って南東に伸びる支尾根を下る。ところどころで柵と鉄条網が踏み跡の上に倒れており危ないが、ゴルフ場の周囲を整備している気配は全く感じられない。最後は笹の繁茂する斜面を下って、集落の奥の道路に着地すると、あとは道なりに歩いて駐車地にたどり着く。
ところで、この多羅尾の地には山行のついでに訪ねたいところがあった。滝の磨崖仏と呼ばれる多羅尾の磨崖仏群だ。中野の集落から滝川に沿って多羅尾のゴルフ場の方へと下るとすぐに道沿いに磨崖仏が現れる。
今ではゴルフ場とその場内に併設された温泉を目当てに訪れる人がいるばかりではあるが、かつては南山城から多羅尾の東にある御斎峠を通って伊勢に抜ける街道であり、京街道と呼ばれた道らしい。ここは信楽からは三国越を通って奈良に抜ける街道が交差する場所でもあり、交通の要所であったようだ。
磨崖仏は何と言ってもその中心に鎮座する阿弥陀仏のにっこりと微笑んだ表情が印象的だ。丁度、鼻から口元のあたりが剥落してしまっているのだが、かえって大きな口を開けて嗤っているかのような印象を与える。
石には正中二年(一三二五年)、鎌倉後期の年号が彫られているという。何百年もの時を超えて我々に笑いかけてくる石仏はなんとも忘れがたい印象を残すのであった。
※まさか翌日にこのルートをハナさん達が歩かれるとはどうして予想できただろうか
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2181327.html
コメント
この記録に関連する登山ルート
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yamanekoさん、yamaizuさん こんばんは
コースタイムやっぱり早いですね。
それにログもきれいです。私なんてログ乱れまくりです
支尾根に迷いこむ事が何回も
トホホなおばさんです(;´д`)
牛塚山の北側の県境稜線も歩けたんですね。こちらのコース取りのがいいですね。
摩崖仏は知りませんでした。こちらも行ってみたかったです。
それにしてもこんなマイナーなお山をよく似たコースで一日違いで歩くなんて
なんだかyamanekoさんに近づけた感じがして嬉しいです
(実際は全くかけ離れてるんですが
この辺りの県境稜線も繋げられないかなぁ
妄想がとまりません
ハナさん コメント有難うございます。
コースタイムは誤差の範囲内でしょう。
ここは尾根が細かく蛇行しているのと、国境尾根も支尾根もほとんど似たような感じなので、とてもややこしいですよね。牛塚山から北は植林が多くなり、最後はゴルフ場の脇を歩くことになるので、牛塚山から南に比べると尾根の魅力は半減します。ここから先も興味あるところですが、もう少し行くとゴルフ場が県境尾根を跨いでいるので、通れないと思います。
東側も笹ヶ岳まで行きたいところですが、尾根上の林道がどこまで続いているのか、気になりますね。
それにしてもヤマレコでもレコのないこのコース、歩く人他にいるのかな〜
・・・と思っていましたが、翌日にほぼ同じコースどりで歩かれたのがハナさんとは驚きが大きすぎます。
こんばんは。
滋賀、京都、三重にまたがる山域ですか・・?
信楽の多羅尾、感想欄で述べられておられるようにゴルフ場や温泉しか知りません。この辺りのお山を歩こうなどと私なんぞは考えも及びませんでした。参考になります。
11月に百里ヶ岳のおにゅう峠でお逢いした方に、信楽で雲海が素晴らしい場所があると伺いました。この山域辺りから伊賀盆地に発生する雲海を見ての事なのでしょうか?
uriさん コメント有難うございます。
雲海といえばおにゅう峠の方が遥かに有名ですが、確かに伊賀盆地にも発生するようですね。展望台としては東に位置する御斎峠が知られるらしいですが、三国塚から少し東に行ったあたりの尾根には素晴らしい展望地がありました。京都と滋賀の間の県境尾根は意外にも自然林が続いていて、晩秋の時期は紅葉が綺麗かもしれません。
笹の尾根道、気持ち良さそうです。
また山歩きと昔の旅人に思いを寄せながら古道も偲べて一石二鳥って感じですね。
創造的な山行ルートの思案まではまだまだ行きませんが、最近はあまり人の歩いていない国土地理院の破線ルートなどを辿るワクワク感に芽生えています。(笑)
近くだったらyamanekoさんのレコを参考に出来るのに残念です。
場所は違えども、四国の山歩きの参考にさせていただきます。
sea1020さん コメント有難うございます。
ここは歴史を感じさせるというか、山中に忽然と古い道標が現れるとタイムスリップした感覚になります。
>創造的な山行ルートの思案・・・
何をおっしゃいますか、高縄山や東温アルプスにしても他の人とは全く異なる独創的なルートを歩いておられるではないですか!こちらこそ愛媛が遠いのが残念です。
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