雨の西丹沢〜犬越路で犬と出会う〜


- GPS
- --:--
- 距離
- 12.5km
- 登り
- 1,292m
- 下り
- 1,293m
コースタイム
天候 | 雨。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
http://www.fujikyu.co.jp/syonan/rosen_time/time01_w.html |
コース状況/ 危険箇所等 |
用木沢出会〜犬越路避難小屋:よく整備され、危険個所は特にない。 犬越路避難小屋〜檜洞丸:途中、熊笹のトンネルや 鎖場のある細い尾根あり、慣れていれば問題はないが、雨の日は注意が必要。 檜洞丸〜ゴーラ沢出会〜西丹沢自然教室:ツツジ新道。 危険個所は特にない。ゴーラ沢の渡渉は赤テープあり。岩飛びで。気をつけて。 |
写真
感想
アパートのポストに一枚の葉書きが入っていた。
「神ノ川乗越へ、ゴミ拾いに来てくださーい」
差出人は見なくても分かった。
檜洞丸、青ヶ岳山荘のおかみさん、高城律子さんだ。
一年前に出会い、それから3回会いに行った。丹沢の自然について
いろいろ教わった。
そして、自然と青ヶ岳山荘ボランティア部に参加することになった。
当日はあいにくの雨、でも休みも他にない。とにかく会いに行くだけ
行ってみよう。去年、出会った花、コイワザクラも気になった。
用木沢から犬越路に上がろう。新緑がきれいだった。
エイザンスミレが雨に輝いている。水滴をはじき、胸を張って咲いている。
カメラを取り出し夢中になるが、ピントが合わない。
無理だのに、諦めきれず、四苦八苦する。
本当に花さえなきゃ、俺はもっと早く歩けるのに。
そんなふうに思う。
己にとって花が最大の敵。この魅力に勝てる策はない。
沢に沿って上がり、犬越路に出る。避難小屋から物音がする。
誰かさんが利用中だ。この小屋は本当にきれいだ。いつか、利用したい。
山は霧と雨に景色を隠し、まったく姿を見せてくれない。
ときおり、霧が風に飛ばされ、輪郭が見え隠れする。
雨は本降りになってきた。
久びさの雨の山。
それでも雨の日にしか、見えないもの、感じられないものがある。
景色が見えないことも、それが魅力的だと思う。
晴れていれば、景色に捕らわれる。
見えなければ、捕らわれずに済む。より山と一体化できる。
風に流れる霧の動き、ひとつでもよくみれば面白い。
ようは感じ方、考え方、ひとつで景色は変わる。
鎖場を上がり岩場に近づくと、ほのかに小さな灯りがともっている。
咲いてた。コイワザクラだ。
サクラソウ科の小さな花はこの時期、急峻な岩場に咲く。
優しい色とそこに咲く環境のギャップがまた良い。
岩場に足をかけ、根を壊さないように撮影する。
犬越路はかつて武田信玄が小田原を攻める際に犬に先導させ、
越えたという伝説があるという。
犬好きの俺としては面白い名前の峠だなと前から思っていた。
と、そんなとき、ウソだろ、今、確かに犬の鳴き声が聞こえた。
野犬?ニホンオオカミ?まさか絶滅したはず。
でも確かに聞こえた。
空耳かもな。こんな霧の中を歩くとこんなことがある。
檜洞丸に到着。そのまま山荘のおかみさんに会いに行く。
「こんにちはー、おばちゃーん。きたよー」
「はーーい」
「良く来たね、やっぱ、根性あるね。ヤマレコ見たよ」
正月の時、ヤマレコ名makaioの名を伝え、読んでくださいと伝えておいた。
読んでくれていた。うれしかった。
「どんなこともやります。連絡をください」
そう言ったのも正月の本年度初登山のこと。そして、連絡はきた。
雪が解け、丹沢のごみ大回収作戦がついに始まったのだ。
今では信じがたいが、数十年前まで山にはゴミ箱があった。焼却炉もあった。
燃えないゴミは県の指導により、山に埋められ、捨てられた。
それが山にどんな影響を与えるかなんて、当時、誰も考えもしなかった。
今、青ヶ岳山荘ボランティア部はそのゴミの回収を進めている。
リーダーはおかみさん、高城さんだ。
強制したことはない。皆が自ずと協力してくれるようになった。
というように、丹沢の自然を愛する方は皆、尊く、美しい。
山荘のホームページを見ればそれが分かる。
しかし、この天気。神ノ川乗越は中止。
代わりに、お手製の特性カレーをいただく。
美味い!レトルトのカレーでないことはすぐにわかる。
ルーはブレンドされている、その他にこのコク、なんだ?
聞いても企業秘密といい教えてくれない。
フルーツ、ジュースがついて1000円は納得の値段である。
今回はビールやフルーツの空き缶数個と自分の食べたゴミの回収だけに終わった。
気がつけば、一時間以上経過していた。
雨は弱くなっていた。さて、帰ろう。
そのとき、足元に黒い影が。
一匹の黒い犬がちょこんと座っていた。
おかみさんに一頭の猟犬が迷子になっていたようだと聞いた。
こいつのことだ。
雨でびしょ濡れだが、どこか怪我をしている様子はない。
首輪にはセンサーが付いている。はぐれたのか。
でも、そんなことある?
御主人の元に帰りなと言っても、ついてくる。
カレーの容器の匂いにつれられているような様子もない。
それよりもやっぱり御主人に会いたがっている。
ときおり「キューン」と悲しそうに鳴く。
はぐれた場所で待っていた方がいいと説明しても
言葉が通じない。ついて来ない方がいいい。
急峻な鎖場までついてきたが、そこで立ち往生してしまった。
無理だ。帰りな。ここで別れよう。駆け足で降りた。
情が出る前にさっさと別れたかった。
振り向かずに行こうと思ったがやはり、気になった。
3回目に振り返ったとき、
尻尾を立て、その犬は走り寄ってきた。
どこかでやっぱり期待していた分、思わず感動してしまった。
よし!一緒に帰ろう、ついてこい。
名前もクロとつけた。
言った途端、クロはなんと先へ先へ、何かを思い出したように
歩き始めた。俺を先導している。
これではまるで、伝説そのままではないか。
クロとの下山は楽しかった。ツツジの写真を撮っている間も
クロは伏せをして俺を待っていた。
子供の時犬を飼った。その柴犬が死んで、10年になる。
また、犬を飼うことはないと思っているが、やっぱり今でも犬が好きだ。
ついにクロとゴーラ沢まで下りてきた。
渡渉に迷っていると、クロはこっちだと先導してくれた。
ここまでくればもう、大丈夫だ。
自然教室は今日は休館日だが、明日になれば、また人が来る。
猟友会へ連絡して無事、保護されるだろう。
そんな風に思っていたら、突然、クロが立ち止ってついて来ない。
何をしてるんだと思って声をかける。
一度、こっちを見たクロは、悲しそうに鳴きながら
山の斜面をどんどん登って行き、しまいに見えなくなってしまった。
突然の別れだった。
あれから、クロは無事に猟友会のもとへ保護されたのだろうか。
衰弱していたようにも見えたので心配だ。
ただ、丹沢でまた、忘れられない思い出を与えてくれたクロ。
本当にありがとう。
山を好きな人たちが山の自然を守るためにボランティアに参加するってとても素敵なことだと思います。私も機会があれば参加したいと思いました。
(体力がないからあまり役に立たないですが・・・)
猟犬のクロちゃんのことも気になりました。
このわんちゃんの場合はどうなのか良く分かりませんが、
山ではよく猟犬が捨てられていることもあるそうです。
知り合いでも保護した人が何人もいます。飼い主は分かりません。センターにもよくセッターが収容されています。
軽井沢のペンションのオーナーに聞いた話では、戻ってこれないような犬は役に立たないからもういらないから、そのままにしておくなんていうこともあるそうです。
もっとひどい場合は戻れないように木につないでしまうとか・・・・・・
クロちゃんの飼い主さんはそんな人ではなくて、元のお家にちゃんと帰れるといいですね。
素敵なレポートありがとうございました。
いつだか真冬に用木沢で、狩猟の人達が何人かで山に向かって犬の名前を呼んでいました。
また、登山道で狩猟犬を見かけなかったのか聞かれたことも何回かあります。
今年の場合、狩猟期間は2月15日までですので、それからさまよっているって事は無いとは思いますが、犬がゴーラ沢にたどり着いた時点で用木沢とは様子の違いを感じて登っていったのでは?
飼い主さんは探していますね。
yamaheroです。
丹沢もいよいよ新緑ですね。
クリーンハイクに行かれてたんですね。
雨の中、お疲れ様でした。
私も、かつて奥多摩でゴミ拾いハイキングよくしましたので
昔を思い出してしまいました。
迷い犬の行く末は本当に心配になってしまいますね。
何処で寝て、何を食べているんでしょうね。
思わず、あの高川山の故ビッキーを思い出してしまいました。
はじめまして。
コメントありがとうございます。
yamaneさんは動物達のために
いろいろな活動をされているのですね。
応援してます。
一人でも大切にしてくれる
里親が見つかるといいですね。
クロのこと、本当に心配です。
ただ、GPSセンサーがついていたので、
場所は把握されているはずです。
ときおり、悲しそうに鳴いていたので
励ましながら歩きました。
無事に保護されていることを願ってやみません。
コメントありがとうございます。
自然教室まで連れて来られなかった
ことが悔やまれます。
突然、鳴きはじめて、
山を登っていってしまいました。
その様子は何かに脅えているかのようでもあり、
御主人を探しているようにも見えました。
御主人の元へ保護されているといいのですが。
コメントありがとうございます
クロのことが心配です。
もし、山に捨てられたのだとしたら、
かわいそうでなりません。
無事に飼い主のもとへ保護されていることを
願っています。
高川山のビッキー、
僕も会いました。
その後、しばらくして、このヤマレコで
亡くなったことを知り、
ショックを受けました。
山頂に立つあの姿は忘れられませんね。
でもビッキーはなぜ、一人で、
あそこで暮らしていたのでしょうか。
飼い主はいたのでしょうか。
makasioさんこんにちは。
クロ、なんだか切ないですね。
写真からでもクロの不安な気持ちや、寂しがっている気持が伝わってきます。
どうにか飼い主のもとへ戻れればいいですね。
やはりmakasioさんは文章が上手ですね。
雨の山の表現、とても美しいと思います。
「四阿屋山」のレコでの自生地の野草と雑草の美しさに対する言葉も、とても共感できました。よくぞ言ってくれたと。
過去の話をすいません
なんとなくいいな〜と思っていても、うまく言葉に表わせられないことを、的確に表現してくれてる、と勝手に感じています。
makasioさんの言葉をこっそり我が物顔で使ってしまう日も近いでしょう
その時はごめんなさい。あらかじめ謝っておきます
これからも、自然だけでなく人との繋がりも大事にするmakasioさんのレコを楽しみにしてます!
お体には気を付けて!
makasioさん、こんばんは。
檜洞丸は私も大好きな山ですが、青ケ岳山荘はそんないいとこだったんですね。今度行くときは忘れず行ってみます。
クロかわいいですね。下まで降りて誘導してくれながら、山に戻っていくとは、涙ものでしたね。。。。
makasioさん、始めまして。
僕も4日にクロに似た猟犬に遭遇しました。
明神山を高指山方面へ10、15分くらい?歩いたら、
何か変な泣き声聞こえるなと思ったら吠えながら纏わりついて着ました。
威嚇とかじゃなくて何かを訴えてる感じの鳴き方だったのですが、
終始鳴いていたので少し怖かったです。
momoさんは僕と価値観が似ているのでしょうかね。
とてもうれしいですよ。
私の言葉で良かったらどうぞ、
使ってください。
文章、褒められるとうれしいですよ。
深夜から朝方にかけてお酒を飲みながら、
レコ書くんですが、
言葉が自然と浮かんできます。
大した文章じゃありません。
でも、ありがとうございます。
クロとの突然の別れ。切なかった。
元気で飼い主のところへ戻っていると
いいのですが。
西丹沢、いいですよね。
丹沢は表だけではありません。
裏もいいのです。
青ヶ岳山荘のおかみさんのホームページから
丹沢の自然を学びました。
できることから、何か始めたいと
思いました。
おかみさんも、裏表のないはっきりした人です。
ぜひ、会ってみてください。
カレー、お勧めです。
クロ、心配です。
neji-shikiさんはじめまして。
クロの可能性は大ですね。
だとしたら、あれから数日間、
未だ、丹沢山地をさまよっていることに
なります。
クロとは1時間以上、行動を共にしました。
無事に保護され、飼い主のもとへ戻れること
を祈ってやみません。
登録ありがとうございます
丹沢清掃お疲れ様でしたm(_ _)m
先日でもないですが、神ノ川乗越の水場で補給しようと行ったらごみが凄く、それいらい近寄らなくなったんですが、清掃ボランティアとかあるんですね!
あのゴミはテント泊の連中なんでしょうけど、捨てるくらいなら登らないで欲しいですよね〜・・。
ホント、残していいのは思い出だけ!ですよね
今では、山にゴミを捨てるべからず。
という観念が浸透していますが、
一昔前までは、山にゴミを捨てて何が悪い?
というような感じだったようですね。
この10年で登山者の感覚が変わったと
山小屋のおかみさんは言います。
愛する山なら、
きれいな方がいいに決まっていますよね。
あ〜〜そーゆー時代も有ったんですね〜〜
それを聞いてなんか納得いたしました
結構年季の入った缶や瓶が捨ててあるのもその為ですね
いつも素通りなんで、青ヶ岳山荘もこんど寄ってみようかな〜って思いましたです
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