伊勢山上☆スリル満点の行場めぐり


- GPS
- 02:38
- 距離
- 4.7km
- 登り
- 344m
- 下り
- 349m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
岩屋本堂からのオーバーハングの壁を伝って岩屋の上に出るコースはかなり危険 神聖な行場なので、くれぐれも安易に岩を傷つけてはならないことを留意する必要あり |
写真
感想
名古屋で午前中に大きな仕事があったのだが、仕事の後で松阪のあたりで短い山行をと知人のgooさんに相談したところ、いくつかの候補を頂いたうちの一つがこの伊勢山上である。その名前からして、伊勢の近くかと思いきや、松阪の山奥の飯福田町にある真言宗の寺院、飯福田寺の別称であり、伊勢からはかなり離れている。寺の裏山は修験道の行場となっており、スリルに富んだ岩場歩きをすることになる。この伊勢山上をご紹介頂いたgooさんが、直々に行場をご案内して下さるというので、名古屋の仕事が終わるとその足で伊勢中川に向かう。
伊勢中川から飯福田寺にむかうと、山に入るにつれ新緑がなんとも美しい。若緑、黄緑、薄緑、萌黄色、鶯色、萌黄色、萌木色、若草色、黄浅緑・・・緑に関する様々な色の名称を並べたところで、色とりどりの新緑のパッチワークを表現することは出来ないのだが、低山の新緑が最も美しい季節なのだろう。あと一週間もすると、瞬く間に新緑は山の上へと駆け上がってゆくことになる。
立派な山門の脇には何台もの車が停められている。この辺鄙な山奥の寺に多くの先客が訪れていることに驚かざるを得ない。飯福田川沿いに参道を歩いていくと、折しも7~8人のパーティーが下山してきたところである。いずれの方々もヘルメットを被り、腰からはカラビナをいくつもぶら下げて、完全な岩登りの装備である。もちろん、岩登りは想定してはいない。まだ仕事明けのビジネス・シューズに仕事用のワイシャツにネクタイという出で立ちだったので、まずは住職のご厚意で庫裏の右手のコモリ堂で着替えさせて頂く。
寺の本尊は苔むした階段の上で、若緑色のイロハカエデの新緑に包まれた薬師堂に祀られる薬師様である。薬師堂の左手の斜面を登ると最初の岩場、油こぼしの急斜面が現われる。斜度はかなり急峻ではあるが、ホールドが多いので登りやすい。
油こぼしを登り詰めると、断崖に沿って行者堂のある鐘掛へと下ってゆく。鉄の手すりがついているので安心して下ることが出来るが、手すりがなければ相当に度胸が必要なところであったかもしれない。
行者堂へ辿り着くと、右手の壁面からいくつもの不自然な突起が突き出しているかと思えば、いくつもの小さな穴も穿たれている。この岩の内部は巨大な砂岩をくり抜いて作ったもののように思われるのだが、岩から突き出た突起や穴は上へと登るための足がかりのようだ。果たして、オーバーハングの壁面をこれらの足がかりと穴をホールドにしてトラバースして、岩の側面に出る。今度は垂直の壁に上から垂れ下がる鎖を頼りに登ってゆく。壁にはわずかに足を載せるための窪みが作られている。ここの通過が行場の中でも核心といえるだろう。岩の上の出ると役行者の像が歓迎してくれる。
岩の上からは当然ながら、絶海が広がる。いくつかの鋭鋒がつらなる矢頭山、その左手に円錐形の髯山、そして正面には後山とgooさんが教えて下さる。そして我々の到着を祝うファンファーレのように狭い谷間にいくつもの法螺貝の音が響き渡る。
前半の最後は抱きつき岩である。文字通り、岩に抱きつくような形で岩を越えると難所は過ぎたようだ。わずかに登って尾根に乗ると、杉の植林地の中の歩きやすい道となる。小天井の小さな金剛童子、大天井の大日如来の石仏が杉林に厳かな雰囲気を与える。
谷を周回して尾根を下ってゆくと先の方から女性の黄色い声が聞こえる。先へ進むと、岩の上で寛いでおられる若い美男美女のカップルがおられた。後ろから我々が来る気配を察して、先に行ってもらおうと待機してくれていたらしい。
先に進ませてもらうが、女の子が下るのに足場をみておいてあげましょうと、gooさんが彼氏に替わって女の子が降りるのに下から指示を出す。
岩場を通過した後で後ろを振り返ると、二人で手をつなぎながら蟻の戸渡りを通過してくるのが見える。女の子が握る彼の手に力が入っているのは無理もない。今にも彼氏にしがみつきそうな勢いだ。このような場所に連れて来たらそのような状況になるのは間違いない。
不動の棚に来ると小さな不動明王の石仏がある。Gooさんに促されて不動の棚の岩の下へと出る。どうやら今度はこの岩を下から攀じ登るらしい。砂岩に穿たれた穴を足がかりにして岩壁を登ると、その先に穿たれた大きな穴には首のない石仏が祀られているのであった。印相からすると定印の阿弥陀仏のように思われる。この石仏を拝むために難易度の高い岩壁を登るのが修行のようだ。南無阿弥陀仏。
我々が不動の棚に寄り道している間に先に行かれた先ほどのカップルに再び追いつく。「昔はこの岩には鎖はありませんでしたよね」とgooさんに話しかけられている。どうやら男の子の方は幼少の頃からこの場所は何度も来たことがある馴染みの場所のようだ。勿論、女の子は初めてだろう。
飛石の岩の上に家内と共に登って、gooさんに写真を撮ってもらっているところに再びカップルが登場する。写真を撮ってあげましょうと若いカップルのスマホをgooさんが預かり、若い二人は飛石の上に登るが女の子は怖がってなかなか立ち上がらない。期待通り、すかさずGooさんの罵声が飛ぶが、女の子は家内の「彼氏の手を繋いだら大丈夫」という声に反応して、彼の手を握りしめてゆっくりと立ち上がる。そこでスマホのシャッター・ボタンを押したgooさんの指にも力が入りすぎたのだろう。長押しのせいで連写する。
飛石からの下りは後半のハイライトだろう。我々が降りたあと、再びgooさんは女の子が無事に降りるのを確認して、カップルとお別れする。この行場から戻ると住職に無事の帰還を報告するのが一種のルールらしい。
飯福田寺を後にすると飯福田川の対岸の裏行場へと向かう。川沿いの山桜は散りはじめであるが、まだかなり花が残っている。裏行場の最初の岩場はやはり油こぼしである。岩場の上から垂れた鎖に頼って一気に上まで登る。尾根を緩やかに辿ると尾根上に巨岩が出現する。獅子ヶ岩と呼ばれる巨岩らしい。
獅子ヶ岩を後にすると尾根から谷筋を下る。踏み固められた行者道を下ると目の前を小さな動物が転がるように下っていき、傍らの樹を攀じ登る。樹の陰から小さな顔を覗かせる。もう一匹、今度は大きな動物が別の樹からこちらにじっと顔を向けている。最初は栗鼠かと思ったが、可愛らしい姿をしてはいるものの明らかに栗鼠よりは険しい顔立ちの動物である。すぐには思い出せなかったが、どうやらムササビに思える。
谷沿いに歩き、桜が満開の廃屋へと出ると再び川を渡り、飯福田寺へと戻る。Gooさんの車に乗り越み寺を後にすると、後山の山麓を越えて、R166に入り粥見のスーパー、ミセスマートで会計をする段になって気がついた。何と、財布がない。どうやら着替えごと飯福田寺のコモリ堂に置き忘れてきてしまったらしい。Gooさんに再び40分程の運転をお願いする羽目になるのであった。
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