丹沢表尾根―主稜
- GPS
- 29:20
- 距離
- 24.4km
- 登り
- 2,493m
- 下り
- 2,247m
コースタイム
■4日=丹沢山6:30→不動ノ峰7:10→棚沢の頭7:20→7:37鬼ヶ岩7:40→7:55蛭ヶ岳8:10→ミカゲ沢ノ頭8:45→9:12臼ヶ岳9:16→9:35神ノ川乗越9:40→金山谷乗越10:10→10:55青ヶ岳山荘11:50→11:57檜洞丸12:00→ツツジ新道分岐12:08→12:45展望台13:00→13:30ゴーラ沢出合13:40→14:20西丹沢自然教室
天候 | 3日晴れ後曇り 4日晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2010年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
バス:西丹沢自然教室→新松田=東海道線方面と道路混雑時は谷峨駅から御殿場線利用が便利 |
コース状況/ 危険箇所等 |
紅葉の休日、ヤビツ峠行バスは臨時便が出ても大行列必至。時間に余裕を。 蛭ヶ岳〜檜洞丸の主稜は人影少なく、登山道の整備もレベルダウンする。蛭ヶ岳西側の急斜面や金山谷乗越は整備されてさほど危険はないが、階段が壊れていたりする区間もあった。 特に臼ヶ岳の西は丸い尾根で踏み跡が不明瞭になる。ここは檜洞丸の頂を目印に、視界不良なら磁石で真西を目指して鹿柵を左に見ながら歩く。ところどころ溝状にえぐれた所が登山道だった様子。たまに古いテープが幹に巻かれているが目立たない。 青ヶ岳山荘は当日は施錠されておらず、上がって休ませてもらった。 檜洞丸からのツツジ新道は、上部は立派な階段と木道で整備されているが、中腹以下は急勾配で逆コースは大変そう。ゴーラ沢出合の渡渉は、まず南へゴーラ沢を渡り、東沢と合流した沢をすぐ下流の堰堤の手前で西に渡る。 ★温泉:山北町の町営温泉は「水曜定休、祝日の場合翌木曜定休」だが、その場合は中川バス停南の「うぐいすの里 丹沢荘」(県内広域水道企業団宿泊研修所)がお勧め。15時以降入浴可で780円。露天風呂などはないが、れっきとした温泉で施設も大変清潔。 |
写真
感想
考えが甘かった。文化の日の朝に秦野駅に降り立つと、ヤビツ峠行きバス停には目を疑う長蛇の列ができていた。駅の階段下に末尾のある行列は広場の端まで行ってUターンした後、やっとバス停前の先頭に至る。長さ70〜80m、ざっと250人はいるだろうか。予定の8時18分発ヤビツ峠行きに乗るどころではなく、早々に諦めて35分発蓑毛行きの短い列に付いた。待つ間に臨時便2台を加えた3台のバスが超満員でヤビツ峠に向かったが、同じ電車の人たちはまだ列に残っていた。
蓑毛にも十数人のハイカーが降り立った。9時過ぎ、トイレに寄って舗装路の坂道を歩き始める。後続バスを待った方がヤビツ峠着は早かっただろうが、今日はいつもの日帰りではないので時間に余裕がある。プラス1時間の行程も、比較的楽なこの区間なら問題はない。
蓑庵の前で大山への道を分け、植林の中をゆっくりペースで辿る。初めの15分はウオーミングアップを兼ねる算段だ。舗装路が尽きて沢を渡り、山道に入ったあたりで調子が出てきた。明日もあるのだからと自制しつつも、何人かを抜いて行く。急勾配はわずかで大半はなだらかに標高を稼ぐ道。やがてバイクの爆音が聞こえ、擁壁が見えると道が二手に分かれてヤビツ峠に着く。右はヤビツ山荘までわずかに登るが、左右どちらでもヤビツ峠まで50mだ。
峠の駐車場は車であふれかえり、そこへ満員のバスがまた到着したが、表尾根へ向かう人影はほとんどない。いまひとつパッとしない紅葉を眺めつつ、富士見山荘前を曲がって二ノ塔への長い登りに就いた。やはり11月にしては暑い。いつもより3キロほど重いリュックの負担が少し心配になる。
ようやく視界が開けると、背後に大山がどっしりそびえていた。山頂のトイレはさぞかし超満員だろうな、などと余計なことを考える。表尾根も元気な子連れ家族などがいて結構な賑わいではある。秋深い時期にも道端にはリンドウやアザミなどの花が多く、目で楽しむうち約1時間の登りで二ノ塔に着いた。
西の方を見ると、あいにく雲がかかって富士山など遠方の眺望は期待できそうにない。まあ、今回は「明日があるさ」と気を取り直して進発する。15分足らずで三ノ塔着。腹が減ったので小屋の前で昼食とした。時おり日が陰って風が吹き、そうなると少々寒い。上昇気流があるのか、上空のパラグライダーが高く昇っていく。家族に連絡しようとしたが、二ノ塔も三ノ塔もau携帯は圏外だった。
さて、まだ先は長い。烏尾山へ向けて急降下し、山肌の色づきをチェックしながら登り返す。低いピークなのに山頂広場ではau携帯のアンテナが立った。行者ヶ岳で1200mまで高度を取り戻し、ガレ場を立派な階段で越えて小広い空き地に至れば書策小屋跡。さらにひと登りで新大日に着いた。ここまで来れば稜線漫歩の気分で歩ける。ピークらしからぬ木ノ又大日を通過し、最後にあと百mを稼げば塔ノ岳。「もうじきだ。夕飯はカレーだ」と楽しそうに語らう女性3人組を追い抜く。尊仏山荘に泊まるのだろう。
2時半近いが山頂はまだ結構な人出で、食事をしているグループもいる。雲が増えてきて少々寒い。帰り支度を急ぐ人々を尻目に腰を上げ、人影少ない主脈縦走路に足を踏み入れた。日高との鞍部は崩壊が補修され、歩きやすくなっている。右を見れば遠く町の建物が午後の日に輝き、雲に陰る大山のシルエットと好対照を成す。植生保護の木道が混じる道の脇には、時おり鮮やかに紅葉した木が現れた。
静かな稜線歩きを楽しんでいると、植生保護の作業員、続いてTシャツに半ズボンの強力さんに出会った。こうした人たちのおかげで山を楽しめるのだと思うと頭が下がる。竜ヶ馬場前のベンチで同じみやま山荘に泊まる夫婦を抜き、無事1日目の行程を終了した。
指定された2階A8のスペースに荷物を置き、食事まで土間でカップ酒を一杯やる。西丹沢から逆コースを辿ってきた藤沢市の男性と山談義を楽しんだ。今45歳の彼は38歳で上司に誘われ山を始めたそうだが、既に百名山を制覇し、二百名山を狙っているとか。奥さんも山好きで夫婦で登ることもあるらしい。話のついでに明日のコースの注意点を聞いてみる。ガレ場、鎖場、ゴーラ沢渡渉のいずれも問題なく、ただ臼ヶ岳西斜面の踏み跡が不明瞭なことくらいとのこと。
植生保全工事の若い作業員が泊まっており、食事は2部制だった。食堂の登山客は10人で、ほかに自炊の山ガールが1人いる。寝る前に戸外へ出てみた。雲はあまりないようだが星は少ない。東の窓から下界の夜景が見えたくらいで、空は街の灯を受けて思ったより明るいらしい。8時半で発発が止まり、宿の明かりは石油ランプだけとなった。
※ ※ ※ ※
4日は5時半起床、6時に朝食、6時半には出発した。空は高曇りで天気が好転する兆しはある。結構な急斜面で丹沢山から下り、不動ノ峰へ。東風が強くて少し寒いが、ふと見ると上空の黒雲が薄くなって富士山が姿をのぞかせた。棚沢ノ頭から鬼ヶ岩にかけての平らな稜線を行くうちに、出たり隠れたりを繰り返しながら徐々に山体をはっきり見せ始める。鬼ヶ岩からは富士の膝下に伸びる主稜の峰々が一望できた。
蛭ヶ岳山頂の直前で小屋を早立ちした年配の男性に追いついた。70歳見当だが、去年の春に山を始めてもう主脈縦走に挑むという体力に脱帽する。その丹沢最高峰は頂上部のみ雲がかかって視界が利かず、早々に先へ向かった。地図には西斜面は急で危険とあるが、鎖などの整備が良いためさほど難しく感じない。ただ、道沿いにイバラが多く気を遣う。
ミカゲ沢ノ頭を越えていく付近は紅葉の色づきも鮮やかで、遠く輝く雲海に浮かぶような塔ノ岳も美しく、ついついカメラのシャッターを押してしまう。そして、藤沢の男性が注意してくれた臼ヶ岳西斜面。しばらくは何事もなかったが、鹿柵が現れたあたりで登山道が忽然と消えた。地図では丸く広い尾根のはずだが、ただののっぺりした斜面に見える。目を凝らして足跡を探し、登山道跡らしき溝を辿った。幸い視界は良好で目印の檜洞丸が良く見える。やがて少し傷んだ階段が現れ、いつしかしっかりした踏み跡が復活した。
着いた所は主稜の最低鞍部、1260mの神ノ川乗越。水場のマークがあるので50mほど南に下ってみたが、水流はまだかなり下らしかった。一休みして起伏を律儀にトレースする尾根道を登り降りすれば、桟道と階段が手厚い金山谷乗越。北に東海自然歩道の袖平山の尾根が見え、遥か向こうには特徴ある山容の奥多摩・大岳山も望める。
さあ、後は檜洞丸まで登るのみ。朝食から5時間以上たち、腹が鳴り始めた頃合に山頂直下の青ヶ山荘が見えた。賑やかな男性7〜8人のパーティーがまさに出発するところで、小屋の戸が少し開いている。無人なので気が引けたが、結局、上がらせてもらった。薬缶を置いた囲炉裏の炭は新品だったが、中の湯はまだ温かい。少々拝借してマグラーメンとリゾットを調理した。
貴重な水が節約できて大変助かった。実は、丹沢山のみやま山荘は北アの山小屋と異なり、宿泊客でも飲料水はタダではなく、500ccで300円のペットボトルの水を買うことになる。残った水の量を勘違いして1本しか買わなかったので、薬缶の湯がなければ少し厳しくなるところだった。
一人ゆっくり食事を楽しみ、裏の新しそうな公衆トイレに人声がしたのを塩に小屋を辞す。間もなく着いた山頂からはくっきりと富士の姿が拝めた。右の方には冠雪した南アルプスも見える。人気の山とみえて平日でも三々五々と登山者が姿を見せた。
下山ルートは立派な木道で始まった。そのまま石棚山稜との分岐の先まで、しっかりした木の階段が伸びていく。正面の富士を楽しみながら快調に下って行ったが、やがて階段が姿を消し、傾斜も増して時に岩場のような箇所も現れた。危険というほどではないが、登るのはきつそうだ。腿の筋肉が疲れ始めたころ、標高1080m付近にある展望台に着いた。
休憩して富士山に別れを告げ、一本道をひたすら下ると沢の音が聞こえてくる。河原に降りる階段が見えたらゴーラ沢出合だ。北の堰堤から東沢が流れ下り、東からのゴーラ沢と合流している。東沢の向こうに道が見えないので焦ったが、合流点の下流側、次の堰堤近くの対岸に指導標が見えてホッとした。
西丹沢自然教室への道は途中、本道と沢沿いの新道に分かれる。どちらでもいいのだろうが、事前の情報がなかったので本道の方を採った。登山口付近で沢の中の道が崩れていたが、それ以外は快適だった。
ぶらぶら舗装道路を5分ほど行けば西丹沢自然教室バス停。あとは温泉に入ろうという算段なのだが、あいにく山北町営施設は休み。携帯が通じないので、調べておいた中川温泉の某旅館へ公衆電話を掛けたところ、「お湯入れてないからダメ。町営があるから、そちらに行きなさいよ」と冷たくあしらわれた。町営中川温泉「ぶなの湯」の定休日が変わったとは思えず、面倒そうな口調からして、確認もせず町営へ行けと追い払っただけなのだろう。町ホームページの中川温泉旅館紹介で、時間を問わず日帰り入浴可とされている宿ゆえ電話したのだが、あきれ果てるしかない。
荷物を置いたベンチに戻ると、気さくな富士急湘南バスの運転手さんが声を掛けてきた。風呂に入りたいが、かくいう次第だと話すと、気の毒がって「丹沢荘なら入れてくれると思うよ」と教えてくれた。三セクのような団体の施設らしい。「バスをまん前に止めてあげるから聞いてきなよ。ダメなら待っててあげるから」。先の旅館とは正反対の温かな言葉に甘え、バスが止まるや坂の下の丹沢荘へ走った。OKと聞くや駆け戻って荷物を取り、運転手さんに鄭重にお礼を言ってバスを降りた。
正確には「神奈川県広域水道企業団宿泊研修所」というらしいこの施設、いきなり絨毯敷で登山靴では気後れするのが玉に瑕だが、お風呂は本物の温泉(加温)だった。露天風呂などの趣向はないが、汗を流すには新しくて清潔であるだけで御の字だ。
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