今年の目標、穂高岳を歩く!ご褒美は紅葉の涸沢カール!【動画】(重太郎新道-前穂高岳-吊尾根-奥穂高岳-涸沢岳)
- GPS
- 32:00
- 距離
- 29.1km
- 登り
- 2,289m
- 下り
- 2,285m
コースタイム
- 山行
- 8:30
- 休憩
- 1:35
- 合計
- 10:05
- 山行
- 6:27
- 休憩
- 2:13
- 合計
- 8:40
天候 | 9/21(月)晴れのち曇り 9/22(火)大快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2015年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス 自家用車
往路9/21:沢渡バスターミナル4:40発→上高地5:10着(朝一発のバス) 復路9/22:上高地より沢渡バスターミナル行きは10〜20分間隔の運行(というHPでの表記であったが、実際は長蛇の列で不規則発着。) |
コース状況/ 危険箇所等 |
◆重太郎新道…急な登り。 ◆紀美子平⇔前穂高岳…下から見上げてみた印象よりも実際に登り出すと、すれ違えない個所や注意して歩く箇所が数か所あり、思ったよりは時間がかかった。 ◆吊尾根…小さいアップダウンを経て全体的には登って標高をじわじわ上げていく。足場はあるが岳沢側は切れ落ちているので注意して歩くが、最後の方で集中力が切れそうになった。自分の足元の注意よりも、すれ違いの時の方が緊張した。(すれ違う人が足元のバランスを崩した際に、腕を掴まれそうになったため。) ◆ザイテングラード…事前の情報からのイメージほど危険に思う所はなかった。ただやはり普通に歩いていても石が転がりやすく、落石には要注意。 ※上記は個人的備忘録として記載 |
写真
装備
備考 | ・グリベルスモールサラマンダーのヘルメットはコンパクトで軽い。・GPSは電池が無くなったり壊れたら終わり。やはり紙の地図も合わせて必携でしょう。 |
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感想
今年の目標、穂高岳。昨年9月に槍ヶ岳を降りてきて上高地から穂高岳を見上げた時から、次はここと決めていた。時間をかけてコースを検証。やはり重太郎新道を歩きたい、吊尾根を歩いてみたいと思った。コースを調べている時に、一旦はその情報から涸沢から奥穂高岳のピストンにしようかとも思ったが、実際に歩いた複数の人の話を聞き、岳沢からの周回に決定。当初は岳沢小屋と穂高岳山荘泊で2泊3日の予定だったが、直前で1泊2日に変更。自分への気合も割増しで入る。
もうかなり気温が下がり、昨年の今頃は雪まで舞ったこの時期だ。防寒着を含む冬山装備はもちろんのこと、岳沢を過ぎると山小屋もないため飲料水はいつもより多めに持って出発。体を冷やさないよう温かい飲み物を持って行ったのは良かった。
個人的感想になるが、気にしていた急登の重太郎新道は意外と難なく終わり、あまり気に留めていなかった前穂高岳の往復は長く感じた。紀美子平から見上げた先が山頂と思いきや、山肌を何回か方角を変えてトラバース、それに加えて狭い場所でのすれ違い待ちの時間。下りが得意な私だが、こういう岩の下りは別物だ。すれ違いざまにバランスを崩した人に、腕を掴まれそうになったときは、何とも言えない気持ちになった。自分の行動を注意しているだけでは足らないのか。
吊尾根は小さいアップダウンを繰り返しながら、じわじわとしっかり高度を上げていく。事前情報通り足元はあるが、先ほどのこともありすれ違いに緊張する。前穂高からガスがかかって景色もなく、集中力と体力が落ちてくる。山登りで初めてザックを放り投げガレ場の上に座り込んだ。どうやっても自分の気持ちが立て治らない。
そこからどうやってまた歩き出したのか、終盤の長めの岩場をクサリで登りながら大きくため息。自分の中の葛藤がはち切れそうになったとき、ふと目の前に一つの標識。「あ、もう南陵ノ頭だったんだ…」と、思わず独り言。ちょうどガスが切れてジャンダルムは見えるし、奥穂高岳も目の前。ガラッと気分も変り、コロッと笑顔。奥穂高岳で沢山写真を撮って足取り軽く、穂高岳山荘に到着。
予想通りの激混みで、フロントも列に並ぶ。山荘の人に「後ろにまだ人はいましたか?」と聞かれたが、山荘スタッフも何時まで登山客が入ってくるのか予想しづらいようだった。布団1枚に2人という張り紙には反して、私が割り当てられた女性の相部屋(布団6枚)には先客が1名。私の後に3名到着。え?合計5名ってことは…。仲良く5枚の布団を引き、山の話や写真の話などをして就寝。ぐっすり朝まで眠った。
翌日は快晴。涸沢岳から朝日を拝む。雲海に浮かぶ富士山、モルゲンの穂高岳にジャンダルム。北穂高岳から険しい大キレットを覗き込み、その尾根の先に昨年登った槍ヶ岳。槍ヶ岳の後ろには先日縦走した立山連峰。双耳峰の鹿島槍ヶ岳方面なども景色をよく目に焼き付ける。笠ヶ岳もえらいくカッコいいではないか。360度をくまなく見尽くした。
山荘に戻り身支度を済ませるとザイテングラード経由で涸沢へ。例年になく早く色づいた赤いナナカマドや黄色い草紅葉の景色は、予想外のご褒美だった。雑誌で眺め憧れていた涸沢の紅葉が見られるなんて、何て素晴らしいのだろう。しかも雲ひとつない晩夏の青空と鮮やかな赤の紅葉のコントラストが、私の目に眩しすぎるくらいだ。
1泊2日の前穂-奥穂高岳縦走。短い日程の割には河童橋が見えたとき、つい昨日渡った橋には思えず不思議な感覚に陥る。初日がもっと天気であればまた違う感想だったかもしれないが、それでも色々な制約のあるなかで計画をし、体力作りをしながら挑んだこの山行は、今までの山歴の中でも一番多くの事を学んだ良い体験となった。2日目は雲一つない鮮やかな青空に憧れの紅葉の涸沢を眺め、今年一番の達成感と感動のゴールだ。ありがとう、穂高岳。
歩いた!やった!バンザイ!!
※追記
「吊り尾根にて」
吊り尾根で追い越していったパーティーのガイドに、「岩をしっかり掴みたいなら、その手袋をとって素手で掴むんだよ。」と言われた。ちょうど疲れてきて思うようにペースは上がらず、いつものように上手くいかない自分にイライラしていたところで、いつもは素直に人の話を聞く私も悔しさみたいな複雑な気持ちも込み上げ、そのアドバイスも有り難く思う一方、黙って聞いてるのがやっとだった。そのガイドは私がいっこうに返事をしないので、「よっぽど寒くて手が冷たいと言うのでなければ、岩は素手で掴んだ方が、感覚が良く手に伝わって登りやすいんだよ。」とも説明してくれた。やっとどうにか気持ちを収め、下を向いたまま無言で手袋を外した。ちょうどそのガイドが後ろに振り返った3回目の時だったが、そうして私が手袋を外す動作を確認すると、もう何事もなかったかのように前を見据え歩き出し、その後を黙って歩く団体はあっという間にいなくなった。全員無表情で、そのへんのツアー客とは全く雰囲気も違うパーティーだった。誰一人追い越し際に私に視線を投げる者はなく、余計なお喋りをする者は居なかった。情報入手や計画を入念に行い、トレーニングでいつも以上に脚を山用に作り、この日はどんなに疲れていも山荘までたどり着けるだけの自信も余力もあったけれども、これだけ長く続く岩稜地帯の経験は足りなかった。でもどんな人でも「初めてを通り越してやっと経験を得る」ものだ。ただ私はこの特徴ある外見のせいで、簡単な気持ちで来てしまった登山客のようには思われたくはなかったんだ。
「穂高岳山荘での談笑」
ガスで展望のない吊り尾根が面白くなかっただけに、山荘内での人との出会いは楽しかった。食堂で夕食が始まり、やっとくつろいだ時間帯。見回すと皆、会話もなく黙々とほうばっている。隣の男性に、今日はどこから歩いてきたのか話しかけてみた。これまた意外なことに英語で返事が帰ってきた。韓国人だと言っている。ここから久し振りの英会話スタート。まあ政治の話をされたら適当に返事して違う話題に逃げようなんて思ったが、やはりそこは山の上。ひたすら楽しい山談義だった。その人が今日は槍ヶ岳からここへ到着した経緯を含め、これが初めての日本の山登りで、しかも連休とは知らないで来たらしく、山小屋の混雑ぶりにはビックリしたのだとか。日本の山の情報はどうやって得てきたのかを聞いてみたところ、ネットで英語で書いてあるサイトを読んだり、日本語は話せないが漢字はだいたいの意味がわかるらしく、そうして調べてきたのだとか。ただこの日程が日本の祝日を含み連休となって激込みすることは分からなかったらしく、ちょっと気の毒に思った。とても体が大きく体力のありそうな人だったが、上高地-蝶ヶ岳-常念岳-大天井岳-槍ヶ岳-穂高岳山荘の行程で今日はもうへとへとなんだとか。山の上での英会話は初体験だった。
2階の女性の相部屋に戻ると、また面白い出会いがあった。なんと私の隣に布団を敷いた女性は、利尻岳だけを専門に撮る写真家、本田晶子さんであった。アラームを設定しようと思ったら携帯の調子が悪いからちょっとみてほしいと声をかけられたのがきっかけ。結局、私が朝起きてもまだその人が寝ていたら私が起こしてあげるからという事になり一件落着。なのに会話が終わって横になったとたんその人がムクッと起きて、「ねえ、利尻行ったことある?」なんて話し出した。「利尻〜?行ったことない。」「私が撮った写真集が下の談話室に置いてあるの。来年のヤマケイのカレンダーにも掲載されるのよ。」へ〜ビックリ。東京に帰ってきて調べてみたらその人が個展を開いたこともあることを知った。山岳カメラマンなんですか?と聞くと、最後まで「ううん。違うの。」と答えていた。でもやっぱり立派な写真家ではないか。自分の力をひけらかし威張りがちな男性とは違って、何て謙虚な女性なんだろう。本当に賢くて能力のある人はきっとこうなんだ。またいつかどこかでお会いしたい。
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