ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 6797305
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
大峰山脈

大峯南奥駈道(逆峯:前鬼〜熊野本宮大社)

2024年05月13日(月) 〜 2024年05月17日(金)
 - 拍手
GPS
104:00
距離
59.4km
登り
4,793m
下り
5,036m

コースタイム

1日目
山行
2:42
休憩
0:01
合計
2:43
18:11
107
19:58
19:58
20
20:18
20:19
35
20:54
2日目
山行
10:44
休憩
1:05
合計
11:49
5:57
121
7:58
8:03
79
9:22
9:27
13
9:40
9:46
42
10:28
10:28
6
10:34
10:34
19
10:53
10:57
63
12:00
12:16
25
12:41
12:41
27
13:08
13:16
32
13:48
13:48
8
13:56
13:59
23
14:22
14:23
29
14:52
14:52
26
15:18
15:18
44
16:02
16:05
31
16:36
16:39
11
16:50
17:01
20
17:21
17:21
25
17:46
3日目
山行
12:41
休憩
1:44
合計
14:25
4:12
13
4:25
4:32
50
5:22
5:22
18
5:40
5:41
37
6:18
6:18
48
7:06
7:14
93
8:47
8:48
2
8:50
9:04
24
9:28
9:28
17
9:45
10:00
3
10:03
10:03
140
12:23
12:39
34
13:13
13:14
73
14:27
14:50
13
15:03
15:08
14
15:22
15:29
0
15:29
15:30
8
15:38
15:38
3
15:41
15:41
10
15:51
15:52
16
16:08
16:09
3
16:12
16:13
10
16:23
16:23
45
17:08
17:09
5
17:14
17:14
45
17:59
18:00
3
18:03
18:03
31
18:37
宿泊地
4日目
山行
13:00
休憩
0:00
合計
13:00
4:30
60
21世紀の森 南奥駆登山口
5:30
5:30
30
古屋の辻
6:00
6:00
143
蜘蛛ノ口
8:23
8:23
77
9:40
9:40
10
玉置山
9:50
9:50
10
宝冠の森分岐
10:00
10:00
60
玉置神社
11:00
11:00
120
玉置辻
13:00
13:00
40
太平多山分岐
13:40
13:40
60
大森山
14:40
14:40
50
篠尾辻
15:30
15:30
20
五大尊岳 北峰
15:50
15:50
100
五大尊岳 南峰
17:30
六道ノ辻
5日目
山行
6:59
休憩
0:16
合計
7:15
6:00
40
六道ノ辻
6:40
6:40
70
大黒天神岳
7:50
7:50
0
山在峠
7:25
7:25
60
8:25
8:28
62
9:30
9:30
32
吹越峠
10:02
10:05
5
10:10
10:10
60
高山分岐
11:10
11:10
20
備崎
11:30
11:30
50
熊野川
12:20
12:30
20
大斎原
12:50
熊野本宮大社
過去天気図(気象庁) 2024年05月の天気図
アクセス
越部の大淀バスセンターからR169ゆうゆうバスで下北山村の前鬼口に向かう。
2024年05月13日 15:55撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/13 15:55
越部の大淀バスセンターからR169ゆうゆうバスで下北山村の前鬼口に向かう。
下北山村の地域公共交通パスポートを利用させてもらった。これを利用すると越部から1000円で前鬼口まで来ることができる。(お礼に下北山村には、ふるさと納税をさせていただいた。)
2024年05月13日 15:40撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/13 15:40
下北山村の地域公共交通パスポートを利用させてもらった。これを利用すると越部から1000円で前鬼口まで来ることができる。(お礼に下北山村には、ふるさと納税をさせていただいた。)
6時過ぎ、前鬼口に到着。
2024年05月13日 18:05撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/13 18:05
6時過ぎ、前鬼口に到着。
2023年の12月に、ここから先の下北山村方面の路肩で土砂崩れがあり、現在も通行止め。
2024年05月13日 18:05撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/13 18:05
2023年の12月に、ここから先の下北山村方面の路肩で土砂崩れがあり、現在も通行止め。
広い草地のテント場
2024年05月14日 05:46撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 5:46
広い草地のテント場
小仲坊の宿所
2024年05月14日 05:46撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 5:46
小仲坊の宿所
月曜日の夜だったため宿泊者は私一人。
2024年05月14日 05:56撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 5:56
月曜日の夜だったため宿泊者は私一人。
宿所前の御堂
2024年05月14日 05:47撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 5:47
宿所前の御堂
きれいで清潔なトイレ
2024年05月14日 05:47撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 5:47
きれいで清潔なトイレ
水場は御堂脇の母屋の前
2024年05月14日 05:47撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 5:47
水場は御堂脇の母屋の前
役小角が従えていたという前鬼・後鬼の夫婦鬼の子孫によって、ここには明治の半ばまで五つの宿坊が営まれていたという。
2024年05月14日 06:01撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 6:01
役小角が従えていたという前鬼・後鬼の夫婦鬼の子孫によって、ここには明治の半ばまで五つの宿坊が営まれていたという。
今は石垣しかないが、よく整備されていて往時の隆盛が偲ばれる。
2024年05月14日 06:03撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 6:03
今は石垣しかないが、よく整備されていて往時の隆盛が偲ばれる。
太古の辻へと続く853段の始まり。
2024年05月14日 07:09撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 7:09
太古の辻へと続く853段の始まり。
第三十三靡 二つ岩。昔の行者はこの岩にも登ったのだろうか。
2024年05月14日 08:00撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 8:00
第三十三靡 二つ岩。昔の行者はこの岩にも登ったのだろうか。
太古の辻。ここが南奥駈道の出発点。
2024年05月14日 09:39撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 9:39
太古の辻。ここが南奥駈道の出発点。
蘇莫岳。奥駈道にはこうした地味なピークが幾つもある。
2024年05月14日 10:24撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 10:24
蘇莫岳。奥駈道にはこうした地味なピークが幾つもある。
天狗の稽古場と呼ばれる広い草地。
2024年05月14日 13:47撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 13:47
天狗の稽古場と呼ばれる広い草地。
ミズナラの古木が印象的。
2024年05月14日 14:13撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 14:13
ミズナラの古木が印象的。
第二十五靡 般若岳。
2024年05月14日 14:28撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 14:28
第二十五靡 般若岳。
第二十四靡 涅槃岳。
2024年05月14日 16:02撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 16:02
第二十四靡 涅槃岳。
ヒメシャラの純林はめずらしい。
2024年05月14日 16:05撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 16:05
ヒメシャラの純林はめずらしい。
本日の宿、持経ノ宿に到着。元気があれば水場の近くにテントを張ろうと思っていたが、そんな気力はなく小屋に泊まる。
2024年05月14日 18:34撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/14 18:34
本日の宿、持経ノ宿に到着。元気があれば水場の近くにテントを張ろうと思っていたが、そんな気力はなく小屋に泊まる。
持経千年桧も見たかったが、この時間では暗闇の中。
2024年05月15日 04:31撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/15 4:31
持経千年桧も見たかったが、この時間では暗闇の中。
平治宿に到着。この日は小雨が降ったりやんだりで、一日中雲の中。
2024年05月15日 05:40撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/15 5:40
平治宿に到着。この日は小雨が降ったりやんだりで、一日中雲の中。
怒田宿跡に到着。ここもテント適地だが、これより手前にもテントが張れそうな場所があった。
2024年05月15日 08:47撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/15 8:47
怒田宿跡に到着。ここもテント適地だが、これより手前にもテントが張れそうな場所があった。
行仙宿小屋。写真だと大きさが分からないが、かなり大きな小屋。
2024年05月15日 09:57撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/15 9:57
行仙宿小屋。写真だと大きさが分からないが、かなり大きな小屋。
笠取山の「雷礎」の祠。昔、西行法師が修行のためにこの山に登ったところ、あまりに深い森で寂しさに耐え切れず、笠を捨てて逃げ帰ったと伝えられていることが、この山名の由来だとされる。この一帯は「千年斧入ラズノ森」とも呼ばれていたそうだ。
2024年05月15日 12:24撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/15 12:24
笠取山の「雷礎」の祠。昔、西行法師が修行のためにこの山に登ったところ、あまりに深い森で寂しさに耐え切れず、笠を捨てて逃げ帰ったと伝えられていることが、この山名の由来だとされる。この一帯は「千年斧入ラズノ森」とも呼ばれていたそうだ。
槍ヶ岳の鎖場の始まり。木の根が滑りそうで怖い。
2024年05月15日 14:15撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/15 14:15
槍ヶ岳の鎖場の始まり。木の根が滑りそうで怖い。
地蔵岳山頂。
2024年05月15日 14:29撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/15 14:29
地蔵岳山頂。
山頂のお地蔵様。
2024年05月15日 14:29撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/15 14:29
山頂のお地蔵様。
有名な?10メートルの垂直降下の鎖場。
2024年05月15日 14:43撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/15 14:43
有名な?10メートルの垂直降下の鎖場。
21世紀の森入口の東屋。ここより100メートル手前にも東屋がある。入口近くは時々車も通るので、テントを張る場合は、入り口近くではない方がよいと思う。
2024年05月16日 04:51撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 4:51
21世紀の森入口の東屋。ここより100メートル手前にも東屋がある。入口近くは時々車も通るので、テントを張る場合は、入り口近くではない方がよいと思う。
入口近くの水場は水量豊富。
2024年05月16日 04:52撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 4:52
入口近くの水場は水量豊富。
花折塚。
2024年05月16日 08:30撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 8:30
花折塚。
玉置神社近くの世界遺産の石碑。
2024年05月16日 09:07撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 9:07
玉置神社近くの世界遺産の石碑。
天皇山方面の山脈を臨む。
2024年05月16日 09:09撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 9:09
天皇山方面の山脈を臨む。
玉置山頂上。
2024年05月16日 09:40撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 9:40
玉置山頂上。
玉置山頂上のお地蔵様。
2024年05月16日 09:40撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 9:40
玉置山頂上のお地蔵様。
境内の磐座。
2024年05月16日 09:49撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 9:49
境内の磐座。
玉石社の御神木。御神体は林床の白い玉石。
2024年05月16日 09:51撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 9:51
玉石社の御神木。御神体は林床の白い玉石。
三柱神社の社殿
2024年05月16日 10:01撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 10:01
三柱神社の社殿
玉置神社の本殿
2024年05月16日 10:04撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 10:04
玉置神社の本殿
遥かに熊野川を臨む。
2024年05月16日 17:03撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 17:03
遥かに熊野川を臨む。
第六靡 金剛多和(六道ノ辻)
2024年05月16日 17:36撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 17:36
第六靡 金剛多和(六道ノ辻)
水場の案内板が壊れていて、目に入らなかった。
2024年05月16日 18:13撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 18:13
水場の案内板が壊れていて、目に入らなかった。
水場へは、この標識が目印。ここから沢に下りて行く。
2024年05月16日 18:13撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/16 18:13
水場へは、この標識が目印。ここから沢に下りて行く。
いよいよ熊野川が眼下に。
2024年05月17日 09:35撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 9:35
いよいよ熊野川が眼下に。
七越の峯頂上。延命地蔵と西行法師の歌碑。
2024年05月17日 10:01撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 10:01
七越の峯頂上。延命地蔵と西行法師の歌碑。
「たちのぼる 月のあたりに雲消えて 光かさぬる七越のみね」とある。
2024年05月17日 10:01撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 10:01
「たちのぼる 月のあたりに雲消えて 光かさぬる七越のみね」とある。
いよいよ自作のPPロープ草鞋を履いて、熊野川を渡渉する。この草鞋、重さも125gしかないので超軽量。
2024年05月17日 11:51撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 11:51
いよいよ自作のPPロープ草鞋を履いて、熊野川を渡渉する。この草鞋、重さも125gしかないので超軽量。
念願の「濡藁沓(ぬれわらくつ)の入堂」。
2024年05月17日 11:45撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 11:45
念願の「濡藁沓(ぬれわらくつ)の入堂」。
大斎原
2024年05月17日 12:22撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 12:22
大斎原
旧社地の説明
2024年05月17日 12:22撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 12:22
旧社地の説明
中四社・下四社をまつる石造の小祠
2024年05月17日 12:23撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 12:23
中四社・下四社をまつる石造の小祠
一遍上人真筆による「南無阿弥陀仏」名号碑
2024年05月17日 12:24撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 12:24
一遍上人真筆による「南無阿弥陀仏」名号碑
一遍上人の時宗では熊野を聖地としていた。
2024年05月17日 12:24撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 12:24
一遍上人の時宗では熊野を聖地としていた。
旧社地の参道
2024年05月17日 12:27撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 12:27
旧社地の参道
大鳥居
2024年05月17日 12:32撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 12:32
大鳥居
熊野本宮大社の参道
2024年05月17日 12:40撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 12:40
熊野本宮大社の参道
本殿へと至る158段の石段
2024年05月17日 12:42撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 12:42
本殿へと至る158段の石段
本宮大社の神門
2024年05月17日 12:47撮影 by  OPPO Reno9 A, OPPO
5/17 12:47
本宮大社の神門

感想

昨年の北奥駈道に引き続き、今年は南奥駈道を歩いて、念願の「濡藁沓(ぬれわらくつ)の入堂」を果たした。

【1日目】
1日目は、R169ゆうゆうバスで越部駅から前鬼口まで移動し、小仲坊で前泊した。昨年の12月に前鬼口から下北山方面に向かう道路で土砂崩れがあり、しばらくバスは、上北山の西原までで止まっていたが、4月から前鬼口まで運行されることになり、南奥駈の起点である小仲坊まで行きやすくなった。ただし行きやすくなったと言っても、平日のバスは前鬼口に夕方6時に到着で、小仲坊までは夜道を3時間歩かなければならなかった。途中から日が落ちて、雨上がりの霧の立ちこめた真っ暗な林道を、ひたすら歩いて小仲坊に向った。

小仲坊には、前日に電話で宿泊の予約をしておいた。この宿坊は土日にしか坊主がいないため、私の行った月曜日は無人で、宿泊者も私一人だった。広い宿所でゆっくり休むことができた。

小仲坊の水場は初めてだと分かりにくい。昨年、北奥駈を歩いて小仲坊に下りて来たときには水場が分からず、近くを流れる川で水を汲んだ。小仲坊の水場は、宿所の正面から石段を少し上がると、左手に御堂があり、そのまま進むと正面にある。小仲坊の水場は沢の水ではなく、石清水をパイプで引いていると思われるので、川の水より安心して使えると思う。

翌朝は林間の道が迷いやすいので明るくなってからの出発とし、眠りについた。

【2日目】
2日目は6時の出発となったが、30分早くてもよかったかもしれない。この日の宿泊地としていた持経の宿に着いたのが5時50分なので、30分早ければ、最後の歩きで焦らずにすんだと思う。

2日目は、小仲坊から太古の辻までの登りで早くもバテてしまった。歳のせいにはしたくないが、体力低下を痛感する。

標準コースタイムの1.3倍くらいで歩いているのだが、これでも私としては必死に歩いているので、景色を見ている余裕がなく、途中の印象がほとんどない。疲れ切って持経の宿に着いたのは日没の直前だった。

持経の宿には、先客が5人ほどいた。テントの方が気兼ねなく休めるので、当初はテント泊を予定していたが、疲れでとてもテントを張る気力がなく、この日は小屋泊まりにした。

小屋には汲み置きの水があり、非常に助かった。持経の宿の水場はアクセスも容易で、水量も豊富とのことだったので、この日は持経の小屋泊りと決めていたのだが、いかに水場が遠くないと言っても、日没も過ぎて疲れ切った身には、汲み置きの水は本当にありがたかった。

小屋は、おそらく連休中に使用したストーブの余熱がわずかに残っているようで、暖かかった。唯一残念だったのは期待していたスマホの充電が、USBコネクタの故障で利用できなかったことだ。あまりにも多くの人が使用するため、コネクタにガタがきてしまっているようだった。

先客の5人は翌日、玉置神社まで行くということで、7時には就寝していた。一人は12時頃、他の4人は3時頃出発して行った。私も2時には起床したが、真っ暗な中を長時間歩く勇気はないので、4時に出発した。

【3日目】
3日目は、朝から小雨模様で、一日中雲の中にいるような感じだった。鎖場の難所でよく知られた槍ヶ岳と地蔵岳にやって来た時には、雨こそ降ってはいなかったが滑りやすい危険な状態だった。細心の注意をはらいながら幾つかの鎖場を通過した。

3日目は21世紀の森でテントを張ることに決めていた。古屋の辻から登山道を外れて21世紀の森の入口に向かってみると、入口手前と入口脇に水場があった。ここは正式名称が「21世紀の森・紀伊半島森林植物公園」と言い、公園の施設自体は17時に閉園し、トイレは施設の方にしかないので、閉園してしまうとトイレは利用できない。施設の敷地外に東屋が2棟あり、おそらく奥駈道の山行者は、皆この東屋あたりにテントを張っているのだと思う。ただし施設のゲート近くの東屋は、舗装道路に面した場所にあり、時々車も通るので、あまり大々的にテント泊をしていると、いつかは禁止されてしまう可能性もあるのではないかと感じた。水を汲んだら100メートルほど林道を戻り、施設から離れた方の東屋辺りにテントを張るようにした方がよいかもしれない。夕方から一時雨が強く降ったが、雨は夜半には上がったようだった。

【4日目】
21世紀の森から奥駈道に復帰するためには、林道と山道を登り返さなければならない。途中、林道から山道に入るところを見逃してしまい、少し無駄に林道を歩いてしまった。持経の宿でスマホの充電ができなかったので、残りのバッテリー量に不安があったため、この日からヤマレコの記録は使用しないことにした。この時もヤマレコを使っていれば、もう少し早く道間違いに気づいていたと思うが、疲れているため僅かな間違えでも大変な回り道をしてしまったように感じて、気持ちが萎えてしまいそうになった。

玉置神社には国之常立神・伊弉諾尊・伊弉冊尊・天照大神・神日本磐余彦命の五神が祀られている本殿の他に、出雲大社の御分霊が祀られている出雲大社玉置教会や磐座などもあり、余裕があれば半日でも時間をかけてゆっくり見てまわりたいところだった。この神社には宿坊もあるようだが、2カ月前に申し込まなければならず、少なくとも前鬼から入山しなければ宿泊は許可されないとのことなので、ここだけに参籠して、玉置神社の霊性に触れることが許されていないのは、とても残念に感じた。

水場は玉置山の山頂から下りてくると本殿手前の社務所の脇にあり、水量は豊富だった。近くにトイレもある。売店のある駐車場は、本社に来てしまうと遠くなるので、売店に行きたい場合は、山頂から案内板に従って先に行った方がよいかもしれない。奥駈道の手ぬぐいが売られているという売店にも行ってみたかったが、往復40分ほどの回り道をする余裕はなかったので、私は売店には行かなかった。

この日の泊りは六道ノ辻(金剛多和)に決めていたので、玉置神社の後は大森山に向かった。疲れた体に大森山の長い登りもつらかったが、それ以上に大森山の下りと、次に続く五大尊岳の下りの足場が悪く、疲労がたまった足腰には実にこたえた。その上六道ノ辻に着いてみると、最も重要な水場の場所が分からず心底難儀した。

奥駈道の道案内では本当にお世話になった新宮山彦ぐるーぷさんの水場案内図では、熊野大社に向かって歩くと、水場は六道ノ辻を過ぎてから左側にあると記されている。しかし何度その近辺を行き来しても、水場への道が見当たらないのである。運よく携帯の電波が通じたので、1週間前に奥駈道を歩いた息子に電話してみると、水場は熊野本宮に向かって左側ではなく、右側だと言うではないか。息子の言う通りに探してみると、道の右側にはっきりとした山道が伸びており、壊れた水場の案内板も見つかった。水場は左側だとばかり思っていたので、日没後の暗くなりかけた時間帯で壊れた案内板が目に入らず、水場へと通じる山道に目が向かなかったのである。六道ノ辻に他のテント泊者がいれば、水場の場所を教えてもらったり、一緒に探したりできて、これほど難儀することもなかったのかも知れないが、この水場探しには本当に苦労した。水場は石清水ではなく、かなり水量のある沢だった。

六道ノ辻ではもう一つ難儀したことがあった。夕食の後に寝支度をしていると、テントの壁にヒルが這っているではないか。ぞっとしてよく見ると、ヒルはテントの外側ではなく、確かに内側を這っているのである。ムレスの手袋でつまんでテントから放り出し、念のためテント内を点検してみると、さらに二匹のヒルが見つかった。その上ズボンを脱いでみると、左足の脹脛がヒルに噛まれて血だらけだった。ずいぶん探してみたが、脹脛に吸い付いたヒルは見つからなかった。ヒルはズボンの上から吸い付いたらしく、この日は一日中スパッツを着けて歩いていたので、ヒルに噛まれたのは、テントを張ってからスパッツを外した後に違いない。どこでヒルを付けて来たのかはっきりとは分からないが、思い当たるのは、水場を探して30分ほどバックパックを地面に置いていたので、その間に汗臭いバックパックにヒルが寄って来たのか、水場で水を汲んでいる間に、スパッツにでもヒルを付けてきてしまったのか、おそらくそのどちらかだろうと思われた。夜寝ている間にさらにヒルに吸い付かれてはかなわないので、できる限りテント内を点検したが他のヒルは見当たらなかった。それでもバックパックのポケットにでも張り付いて隠れていたらかなわないので、気休め程度だがビニール袋にバックパックを入れ、しっかり口を結んで寝ることにした。翌朝目を覚まして、体中を点検をしてみたが、幸いなことに、寝ている間にヒルに吸い付かれたところは見当たらなかった。これで思ったのは、私は天候によって、靴をビニール袋に入れてテント内に置くのだが、テント内に置く時には、ヒルが着いていないかよく点検してから靴はテントに入れないと、ヒルをテントに入れてしまうこともあるのではないかということだった。もちろんテントの外に置いていた場合は、夜中にヒルが靴に着いていないか、よく点検してから履かなければならないのはもちろんだ。

【5日目】
5日目は、前夜のヒル事件で就寝の時間が遅れてしまい、早起きできなかったので、予定より1時間出発が遅れてしまった。それでも11時までには熊野川に到着できるはずなので、それほどあせらず歩き始めることができた。さすがに奥駈道は一般の登山ルートではなく、山岳修行の道なので、大黒天岳、吹越山、七越峰と、最後まで容赦なく小峰を越える道が続いて行く。そして11時、ついに熊野川に到着した。昨年から2年越しで歩いてきた私の大峯奥駈道の山行は、この熊野川を手製のPPロープ草鞋を履いて渡渉することが最大の目的だったので、河原に出た時は期待で胸が高鳴った。渡渉できそうなところを探してみると、大斎原に面した場所よりも若干備崎橋に近いところが、白波が立って水深が比較的浅そうに見えたので、そこを渡ることにした。初めて使うPPロープ草鞋の威力は予想を超えて素晴らしく、足裏の痛さも、苔で滑ることもなく、それなりの水流に押し流されないように気をつけて進んで、難なく対岸に渡りきることができた。その昔、草鞋を濡らしてこの川を渡り熊野本宮に詣でることを「濡藁沓の入堂」と言ったとのことだが、文字通り草鞋を履いて熊野川を渡渉できたことが、私には何にも増して嬉しかった。その後、大斎原と現在の本宮大社にお参りをし、バスに乗って帰途についた。

【備忘録】
水なしのバックパックの総重量:9.9kg
9kgに抑えたかったが、計画段階では食糧などを減らすことが出来ず。どうしても9kgにすることができなかった。しかし最終的には、連日の疲れで食欲がなくなり、行動食も夕食も準備した量を消化することができなかったので、実際には食糧は400gほどは減らせたと思う。

自作PPロープ草鞋:125g
モンベルのソックオンサンダルが340gなので、比較にならないほど超軽量。今回の山旅で最も良かったもの。

行動食の反省:
カロリーを考えて、ブラックサンダーやエネもちなどをメインの行動食として持参したが、疲れているとブラックサンダーのようなチョコレート味は食べる気がせず、実際には持参した量の半分も食べられなかった。どうせ食べられないのなら、カロリーなど考えず、柿の種やせんべいのような塩味のものを持って行ったなら、もう少し快適だったかもしれない。

ガスの使用量:45g
朝も夕も400ml程度のお湯を沸かすだけの食事だったので、OD缶の110タイプを持参した。念のためエスビットのミリタリー3個とチタンの五徳も持参したが全く必要なかった。それでも固形燃料のセットは75gなので、これを減らしても大した軽量化にはならないだろう。

着替え:
着替えはモンベルのウイックロン ZEOの長袖を着ているものの他2枚と、下着を2枚、渡渉用に下着を兼ねた軽量の短パン1枚、ワークマンで調達した軽量トラベルパンツを1枚、靴下2足を持参した。そのほか手ぬぐいを3枚持ち、マイクロファイバーのタオル1枚も持った。私の用途では多くも少なくもなかったと思う。

シュラフ:
昨年調達したCUMULUSのX-LITE 200を今回初めて本格的に使用した。軽量さも保温性も申し分なかった。ただしジッパーの噛みこみがあり使いにくかった。ナンガから噛みこみ防止の後付けパーツが出されているようなので、さっそくネットで注文した。もう一つこのシュラフは、デフォルトだと足先までジッパーで開けることができず、暑くて足を出したいときに不便だった。カスタムで足先までジッパーで開くタイプを注文するべきだった。

バッテリー問題:
しばらく前にiPhone8からandroidスマホに換えたためか、ヤマレコを使っているとバッテリーの消費が思っていた以上に多く、持参した10000mAhのモバイルバッテリーでは不十分だった。そのため、4日目からはヤマレコの記録はあきらめ、写真を優先して、ヤマレコは道に迷った時にだけ使用することにした。これ以上重いモバイルバッテリーは持ち歩きたくないので、今後もバッテリーが持ちそうではない時には、ヤマレコの常時使用はあきらめることにする。

軽量化の課題:
最終的に食べられなかったマカロニやブラックサンダーが半分ほど残ってしまったので、これらを見直せば、300gから400gは軽量化できるかも知れない。私の場合、今後4日以上縦走することはないと思うので、これ以上の軽量化をそれほど考える必要はないかもしれないが、行動食は永遠の課題なので、次回の山行では別のものを試してみることにしたい。

お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:114人

コメント

まだコメントはありません
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する

この記録に関連する登山ルート

無雪期ピークハント/縦走 大峰山脈 [日帰り]
吉野 本宮
利用交通機関:
技術レベル
3/5
体力レベル
5/5

この記録で登った山/行った場所

関連する山の用語

この記録は登山者向けのシステム ヤマレコ の記録です。
どなたでも、記録を簡単に残して整理できます。ぜひご利用ください!
詳しくはこちら